東京都《水道料金》無償化「基本料金のみ、下水道は対象外」期間や対象者、軽減額ほか注意ポイントをFP解説
猛暑に備え東京都が「水道料金の基本料金の無償化」を発表した。この特別措置により、水道料金はどのくらい負担が軽減されるのだろうか。負担軽減額や対象者などについて、ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続
今夏の「東京都の水道料金の基本料金の無償化」の目的は?
東京都は物価高騰の影響が続く中、今夏の猛暑においてエアコン等の利用を控えないよう、今夏に限った臨時的な特別措置として、小口径の水道メーターを利用しているかたを対象に「4か月分の水道料金の基本料金を無償化する」措置を実施しました。
これは、光熱水費の負担を軽減し、エアコンの利用を促進することで熱中症の予防を図るためです。
いくら負担が軽減されるの?「1か月当たり860円~1,460円減」
水道の基本料金は、水道メーターの口径(呼び径)の大きさによって決まります。一般家庭でよく使われている口径は「13mm」「20mm」「25mm」の3種類で、1か月あたりの基本料金はそれぞれ「860円」「1,170円」「1,460円」となっています。
水道料金は、この基本料金に加え、実際に使用した水の量に応じた「従量料金」が発生します。今回の措置では、このうち「基本料金」のみが無償となり、「従量料金」は従来通り利用者負担になりますので留意する必要があるでしょう。
無償期間は4か月間で、たとえば13mmの口径を利用の場合、基本料金の4カ月分にあたる3,440円が無償になります。なお、今回の無償化は水道の基本料金のみが対象であり、下水道料金の基本料金は含まれていません。
呼び径(メーター口径)/基本料金/対象期間/合計
13mm/860円/4か月/3,440円(税込3,784円)
20mm/1,170円/4か月/4,680円(税込5,148円)
25mm/1,460円/4か月/5,840円(税込6,424円)
いつから対象になるの?
たとえば、7月に検針がある家庭では、6・7月分と8・9月分の基本料金が対象となります。一方、8月に検針がある家庭では、7・8月分と9・10月分の基本料金が対象となります。
このように、適用される4か月間は自宅の検針月によって異なりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
手続きは不要
今回の臨時的な特別措置では、2025年7月1日時点で小口径(13mm・20mm・25mm)の給水契約があるご家庭には、自動的に対象となり、申込みの手続きは不要です。
東京都内に住んでいると誰でも対象になるの?
今夏の水道の基本料金の無償化は、東京都水道局の給水区域内に住んでおり、東京都水道局と契約しているかたが対象です。
一方、給水区域外の地域もあり、以下の13市町村(例:武蔵野市、昭島市、羽村市、檜原村、島しょ地域など)は対象外になります。これらの地域に住んでいるかたは、お住いの市町村に確認しましょう。
なお、一例として武蔵野市は、「水道料金の基本料金を4か月間無償化」する対応が取られています。
※参照/水道局「水道料金の基本料金を無償とします」
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/tetsuduki/ryokin/mushou#section03
※参照/武蔵野市「今夏、4か月間 水道料金の基本料金を無償化します」
https://www.city.musashino.lg.jp/kurashi_tetsuzuki/jogesuido/suido/riyo_okyakusama/1051195.html
高齢者の家計は「光熱・水道」費が平均消費支出の1割弱を占める
令和5年「家計の概要」によると、65才以上の夫婦のみの無職世帯において、月平均消費支出は250,959円。そのうち「光熱・水道」費は22,422円で、消費支出に占める割合は8.9%です。
これは「その他の消費支出」を除くと、「食料」(29.1%)、「交通・通信」(12.2%)、「教養娯楽」(9.8%)に次ぐ割合となっています。
一方、65才以上の単身無職世帯では、月平均消費支出は145,430円であり、「光熱・水道」費は14,436円(割合:9.9%)を占めます。こちらも「その他の消費支出」を除くと、「食料」(27.6%)、「教養娯楽」(10.5%)、「交通・通信」(10.4%)に次ぐ割合です。
このように、高齢者世帯において「光熱・水道」費は消費支出の約1割弱を占める重要な項目であり、水道料金の基本料金の無償化は、家計の一部負担を軽減する有効な支援策といえます。さらに、軽減された分をエアコンの使用に充てることで、熱中症の予防にもつながり、高齢者の健康を守る面でも効果が期待されます。
※参照/総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年):2023年(令和5年)家計の概要」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2023np/pdf/summary.pdf
水道料金の無償化について【まとめ】
年金だけで生活している高齢者にとって、2025年7月1日の検針から適用される水道料金の基本料金の無償化は、1か月あたり860円から1,460円、4か月間で合計3,440円から5,840円の自己負担軽減となり、経済的な支えとなります。この無償化は、エアコンの利用を控えることなく快適に過ごせる環境を整えることを目的としています。
東京都は、危険な暑さによる熱中症対策として「こまめな水分補給」「迷わずエアコンの利用」「日傘・帽子の活用」の3つを推奨しています。熱中症は室内で発生することが多いため、エアコンを使わないことで健康に悪影響を及ぼすおそれがあります。自身の健康を守るために、迷わずエアコンを利用しましょう。
※参照/都庁総合ホームページ「小池知事「知事の部屋」/記者会見」令和7年6月6日
https://www.metro.tokyo.lg.jp/governor/kishakaiken/2025/06/06