自分の便をいじってしまう「弄便(ろうべん)」その対処法
認知症の母を盛岡ー東京の遠距離で介護し、その経験をブログや書籍などで発信している工藤広伸さんは祖母や父の介護経験もある。
家族の視点で”気づいた”、”学んだ”エピソードの数々は、とても役に立つと評判だ。当サイトのシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、介護中の人へのアドバイスのみならず、介護を始める前の人にも知ってもらいたいことが満載。
今回のテーマ「弄便(ろうべん)」。介護中排せつの悩みはつきものだが、中でも便にまつわることは深刻だ。祖母の介護中に「弄便」を経験したという工藤さんに、最新の対処法を紹介してもらう。
亡くなったアルツハイマー型認知症の祖母(当時89歳)は、やや高度と言われる状態まで病気が進行していました。自宅で自分の便を畳の上に広げたり、病院でも壁に自分の便をなすりつけたりしたことがありました。
こういった行為を「弄便(ろうべん)」と呼び、認知症の症状のひとつと言われています。
今回はわが家の弄便体験とその対処法について、ご紹介します。
介護家族が弄便を見たときの衝撃は大きい
「弄便」は「便を弄(もてあそ)ぶ」と書きますが、必ずしも認知症の人が便を弄んでいるわけではないそうです。
オムツの中の便に対する不快感、要介護状態であっても自分自身で便を何とかしたいという思い、便失禁したことへの恥ずかしさなどが、弄便の原因とも言われています。
また、認知症が進行してしまったことで、便を便と認識できずに不思議な異物として取り扱うために便いじりが起こるとも言われています。
加齢から来る便秘にも、注意が必要で、便秘改善のために下剤を常用したり増やしたりすることで、オムツで排便する機会が増え、その結果弄便につながることもあるようです。
予めこういった知識がないと、介護中、家族が初めて弄便を見たときの衝撃はかなり大きいことは理解できます。
なんともいえないあの便の臭いや目を疑うような光景に、冷静さを失った家族が反射的に「何やってるの!」と、認知症の人を責めてしまった経験もあるかと思います。また、他の介護と違って、なかなか慣れるものでもありません。
わたしは症状を勉強したり、実際に祖母の弄便を経験し、そこに、「認知症の人が持つプライド」を感じました。
どんなに分からないことが増え、記憶が定かでないとしても、便を漏らすという行為を恥ずかしいと感じているという気持ちから、家族はまず、理解すべきだと思ったのです。
なかなか消えない便の臭い対策グッズ
入院中の祖母の弄便対策として、病院から「つなぎパジャマ」を購入するように言われました。
このパジャマは、認知症の人がファスナーを下ろせないよう特殊ボタンが付いていて、そのボタンを解除しないとファスナーを下ろせない仕組みで、便いじりを防止できるというものでした。
しかし、結局祖母は、その「つなぎパジャマ」の仕掛けをかいくぐり、便をいじってパジャマを汚しました。
当時は「つなぎパジャマ」を着せた事を何とも思わなかったのですが、今になってみると、これは身体拘束のひとつだったのかもと考えます。
認知症の人が嫌がらず、介護する家族が大変だったら「つなぎパジャマ」という選択肢もあると思いますが、祖母のように嫌がる場合は、この選択はしないほうがいいかもしれません。
便で汚れた祖母の「つなぎパジャマ」を普通のビニール袋に入れ、病院から車で家まで持ち帰っていたのですが、車の中の便の臭いは耐えられるものではありませんでした。
現在は、便の臭い対策の商品が色々と出てきています。
今なら「驚異の防臭袋 BOS (ボス)」(クリロン化成)に入れ、臭いをシャットアウトして持ち帰っていると思います。
また、花王が出している「消臭ストロング」シリーズは、衣料用洗剤、トイレ用洗剤、除菌シート、トイレ掃除用シートなどラインナップも豊富で、なかなか消えない便の臭い除去に役立ちます。
これらはすべて弄便後の対策ですが、未然に防ぐ方法も開発されています。