50歳からの筋トレ入門|厳選!動ける体になるシニア向けトレーニングジム
お正月に飲んで食ってゴロゴロ過ごしたツケがそろそろ出て来る頃。
確実に太っている気がするけど、もう別に誰かに裸を見せるわけでもないし、まあいいや……そうやって現実から逃げているあなた。
同世代のシニア層は、今日もジムに行って汗を流し、身体を鍛えていることを知っていますか?筋トレは単に身体を引き締めるだけでなく、健康面にも良い影響を与えることがわかっています。
さあ、記念すべき東京五輪イヤー。アスリートに負けずに貴方もトレーニングを始めましょう!
フィットネス業界は「マッチョ」から「ヘルスケア」へ
健康志向の高まりを反映し、ダンベルやウェイトマシンを使った本格的な筋力トレーニングに励むシニア層でフィットネスクラブが活況を見せている。
経産省の『産業活動分析』によれば、全国のフィットネスクラブの会員数は60歳以上が30%を占めており、最も多い。施設使用料の支出金額に対する年齢別割合でも60歳以上で約4割を占め、全世代平均の1.6倍の約7200円を支出している。
こうした顧客層の変化に合わせ、フィットネス業界はいわゆる「マッチョ志向」からシニア世代向けの「ヘルスケア志向」へと軸足をシフトし始めている。では、なぜシニアがこんなに筋トレにハマるのか。
もう還暦も超え、今更鍛えたってしょうがない……という人にまず知ってもらいたいのは、「筋肉は何歳からでも鍛えれば増やせる」ということだ。
筋トレは見た目改善、病気予防といいことずくめ
「日常生活のなかで、膝や腰が痛んで辛いという人も多いと思います。そんな時は、周辺の筋肉をバランスよく鍛えることで症状が緩和する効果が期待できます。階段を休まずに上れるようになったり、姿勢が見違えるようによくなったり。かつての元気を取り戻すために筋トレは欠かせません」(パーソナルトレーナーの枝光聖人氏)
筋肉は30歳を過ぎたら年1%ペースで減っていくといわれている。基礎代謝の3~4割を筋肉が「脂肪」や「糖」を消費することで担っているため、筋肉量が減ると「脂肪」や「糖」は体内で使用されずに余る。その結果、メタボリックシンドロームや脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病を引き起こしやすくなってしまうのだ。また高齢者の場合、筋肉がやせ細れば転倒や骨折のリスクが増え、寝たきりにもなりかねない。
近年は、筋トレによってインスリンの効きがよくなることが期待できるために、血糖値が下がり糖尿病予防に繋がることや、成長ホルモンの分泌が増えて免疫力が向上することなどもわかってきている。「シニアの筋トレ」はいいことずくめなのだ。
自己流では9割が脱落。プロに習って「効果的に継続」
しかし定年後も長らく運動習慣のない人にとっては、何をどう始めたらいいのか悩むところだろう。まずは無理をせず、筋肉の「向上」ではなく「維持」を目指すのが重要だ。
具体的な施設のサービスやプログラムは次頁で詳述するが、現在、多くのフィットネスクラブでは、衰えがちな足腰強化に特化したり、器具を使用せずに自分の体重(自重)を負荷にした自重スクワットや体幹トレーニングを多めに組んだりと、シニア会員向けのプログラムが多彩に用意されている。
「健康運動指導士や理学療法士など、専門的な資格を有するトレーナーが少人数グループをじっくり指導することが多く、介護予防を謳い文句にしたプログラムも増えています」(都内大手フィットネストレーナー)
こうした〝プロ〟に教わるメリットは安心してトレーニングができることと、「継続できること」だ。前出の枝光氏が語る。
「自己流でやってしまうと、どこかを痛めたり、思うような成果が出ないと焦ってモチベーションが低下する。中高年の9割が1年以内でジムから脱落するという調査報告もあります」
見た目のカッコよさも健康も手に入れるため、新年の第一歩をフィットネスから始めてみてはいかがだろうか。
シニア向けサービスのあるフィットネスクラブ&高齢者に優しいマシンを紹介
短時間・少人数制・医師監修・特殊マシン…など、フィットネスクラブはシニア向けサービスが増強中。実は、カッコよくて健康な人たちはトレーニングをしているんです。シニア層にこそ「ジム通い」がおすすめ。人気のフィットネスクラブ&マシンを紹介します!
ライザップ発「50歳以上」向けトレーニングジム 「ソウジム」
【入会金】1万円【会費】1万9800円~4万9800円【問い合わせ】0422-27-6387
「結果にコミット。(R)」でお馴染みのライザップが東京・吉祥寺に設立した、「50歳以上」を対象とするジム。筋トレと食事指導で長く健康や体力を維持することを目的としている。
ドイツのフィットネスメーカー「ミロン」社の最新マシンを導入。ユーザーの四肢の長さを事前に計測、そのデータをマシンに連動させることで、自動でユーザーに合わせた椅子の高さやバーのポジションが調節されるため、常に適切な設定でトレーニングを行なえる。
ウォーキングやバイクなど有酸素系と、上半身や下半身の筋トレマシンを8台設置。
「ライザップはパーソナルトレーニングですが、ソウジムは8人を1人のトレーナーが指導しながら行ないます。筋トレを6種類、最後に有酸素2種目をこなして最短17分半。それでも効果は十分です。また鍼灸師開発のストレッチも行ない、柔軟性の向上も目指します」(トレーナーの小西竜幹氏)
健康への自信と活力を呼び戻そう コナミスポーツクラブ「OyZ」
【会費】週1回6270円、または週2回8690円の月会費制(初回時に登録料5500円、会員証発行手数料1100円が必要)【問い合わせ】0570-000-573
大手フィットネスクラブ「コナミスポーツクラブ」による60歳からの少人数制(1クラス6~8人)運動スクールで、全国84施設のコナミスポーツクラブで運営。理学療法士やフィットネストレーナーの監修による、安全で効果的なプログラムを組んでおり、運動に不慣れで体力に自信がない人も専任トレーナーがサポートして実践できる。
筋トレはスクワットなど足腰の筋力運動を重視し、踏み台をゆっくり昇降するステップ運動、姿勢改善運動、脳トレを活用した運動の4項目。3分間の運動を繰り返して計20分間行なう。
「75歳以上に多いフレイル(筋力と身体機能が低下し心身ともに弱ってきた状態)の予防に効果が期待できます」(同社広報)
ちなみに「OyZ」はOpen(開く)、Youth(若さ)、Zip(活力)の略。健康への自信を取り戻し、あの頃の活力を甦らせることを目的としている。
柔軟性と足腰強化で老後の不安を軽減 「スポーツクラブ ルネサンス」
【入会金】3300円【事務手数料】5500円【月会費】クラブによって異なるため要確認【問い合わせ】0120-956-623
筋トレ以外にもシニア向けの多彩なプログラムが用意されているフィットネスクラブも多い。その代表格が「スポーツクラブ ルネサンス」だ。
「カラダ・うごくコース」は全身の関節の動きを柔軟にする15~30分のダイナミックストレッチ。運動習慣がない、偏った姿勢をしがちといった人向けで、同じ動作を左右交互に行なうことで、姿勢の歪みを見つけ出して修正していく。身体の柔軟性をつけることで姿勢が良くなったり、コリや痛みの緩和に繋がったりするという。
他にも人気なのは「青竹ビクス」。トレーナーの動きに合わせて。足裏のつぼを刺激する器具を踏んでリズミカルにステップを踏みながら、腕を前後左右に動かす。足腰に不安がある人でも気軽に取り組める。
「継続して受講していただくことにより、シニア層の方に多い転倒の予防や、血行促進に役立ちます」(同社広報)
80代、90代の会員もいる専門ジム 中高年専門パーソナルトレーニングジム「心身健康倶楽部」
【料金】60分、月4回3万1000円(税別)【問い合わせ】https://www.shinshinkenkou.com/
東京、大阪、神奈川に7店舗を展開。会員は45~65歳が中心だが、80代、90代も多数在籍している。枝光聖人代表によれば、「長年のパーソナルトレーナー経験から、日常生活で腰や膝に不具合が出始める年代向けにじっくり時間をかけながら、健康維持を目的に生活の質の改善を目指してもらいたい」というのが「中高年専門」にこだわった理由だった。特徴は「週1回60分」のパーソナルトレーニング。
「一般的に筋トレは週2回がベスト。筋肉が傷つき、その後修復され強くなる『超回復』に2~3日かかるからです。ただし中高年は回復力が落ちているので1週間間隔で十分」(枝光代表)
60分メニューは毎回体脂肪率など体組成を計測し、バイクなど軽めの運動の後、体調やその時点の身体の歪みに合わせてポイントを絞って筋トレを行なう。最後は疲労を残さぬよう、ストレッチで終了となる。
医師や専門家による管理でもしもの時も安心「メディカルフィットネスクラブ武蔵境」
【料金】「生涯元気体操」は65歳以上の「いきいきクラス」が週1回5280+税円~、75歳以上の「ゆうゆうクラス」が4290円+税~【問い合わせ】0422-33-1005
医療法人グループが運営し、医師や健康運動指導士らの専門家が生活習慣病やロコモ、認知症などの予防、改善に取り組んでいる。連携医療機関(メディカルクリニック武蔵境)にて血液検査や心電図、問診やメディカルチェックによるリスク把握を行ない、体力測定などのチェックを経て、オーダーメイドで無理のないメニューでのトレーニングができる。不調を感じたらすぐに医師らに相談が可能なので安心して取り組める。
年齢によってクラス分けをした筋トレを含む運動プログラム「生涯元気体操」を教室形式で行ない、転ばない体づくり、筋力と柔軟性の回復による日常動作をスムーズにすることを目標にしている。他にも認知症の前段階でもある「軽度認知障害」を予防する独自のプログラム「脳耕体操(R)」も人気。思考力や簡単な計算にリズミカルな運動を組み合わせることで、とっさの注意機能や判断能力が高まることが期待できるという。
特殊な器具がいらず自宅でも実施可能 「京都市健康増進センター ヘルスピア21」
【入会金】無料【会費】3か月コース(全12回)8760円~【問い合わせ】0120-21-3356
高齢者向け介護予防筋トレプログラム「京(今日)から始めるいきいき筋力トレーニング」を実施。腰痛や膝痛、股関節痛予防や体全体のバランス感覚を磨く。市と市健康づくり協会が、整形外科医の監修を受けながら考案した。後だしじゃんけんなどの脳トレや、肩をほぐす軽い運動のあと、全10種目の自重による筋トレ種目のうち、日替わりで5~6種目を実施。
「お尻の筋肉を鍛える『しゃがみ立ち』や寝転んだ姿勢で腰をあげる『腰上げ』、腹筋を鍛える『上体上げ』など9種目は下半身をメインにした筋トレ種目です。膝や腰などに問題があって床に寝転べないシニア向けには油圧式マシンを活用したマシンクラスも併設しているのでそちらも活用してほしい」(協会の健康運動指導士・児島久美氏)
毎回1時間、60代から80代までの平均25人ずつが健康運動指導士のもとで筋トレする。器具は不要だ。なお、HP(http://www.healthpia21.net/ikiiki)ではPDFファイルで内容が公開されている。
医療器械メーカーが作った高齢者に優しいマシン 江崎器械「タートルジム」
【問い合わせ】0120-880-497
医療器械製造販売メーカー「江崎器械」が開発した高齢者向け筋トレマシン(全7種類)。高齢者がケガや筋肉痛を気にせず筋トレできる設計の秘密が隠されている。通常のマシンの油圧とは異なり電動アシストを使用。重りを調節する必要がなく、利用者が動かす力・スピードによって適切な負荷がかかる。
「マシンを押した後、戻ってくる際の負荷を支える動作は筋力増強の効果が高いのですが、高齢者の場合は筋肉痛になりやすい。それが嫌で筋トレが続かない方が多いんです」(開発者の江崎健太郎社長)
現在、国内350施設以上のデイサービスセンターやリハビリ病院の他、アシックスジャパンが運営するデイサービス施設「トライアス」でも全店で導入。
「地域包括支援で要支援1、2の65歳以上の高齢者が利用されています。歩行速度の改善や立ち座りの動作が楽にできるようになった、という喜びの声をいただいています」(同前)
気になる人は、近所の導入施設を探してみては。
※値段は断わりのない限りすべて税込。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2020年1月31日号
●脳機能を改善するには有酸素運動+筋トレ 複数人でするのが大切