老けない・病気を防ぐ《運動習慣ランキング》1位は「全死亡リスクの低下につながる」と専門家 いますぐ始めたい最強の運動Best18
春は運動を始めるのに最適な季節。どうせ取り組むなら健康を増進する運動を選びたい。有酸素運動、筋トレ、ストレッチ――識者に聞いた、老化を防ぎ、健康寿命を延ばすおすすめの運動習慣をランキング化。いますぐ始めたい最強の運動はこれだ!
教えてくれた人
辻大士さん/筑波大学体育系助教、石井好二郎さん/同志社大学スポーツ健康科学部教授、菅野隆さん/日本健康運動研究所代表、石原新菜さん/イシハラクリニック副院長
簡単な運動でも習慣化すれば健康になれる
「運動とは万病への妙薬である」――古代ギリシャ時代、医学の祖とされるヒポクラテスの言葉だが、医学の研究が進んだ現代でも「運動」を推奨する医師が大半だ。しかし運動と一言で言ってもウオーキングや水泳、器具を使うサイクリング、ヨガ、ストレッチとさまざまな選択肢が存在するため、「本当にこの運動で問題ないだろうか?」との考えが頭をよぎることもあるだろう。
筑波大学でビッグデータを活用して運動の健康効果を調査している、体育系助教の辻大士さんが答える。
「運動によって健康効果の違いは存在しますが、一般的にいわれている運動習慣は、健康にとって間違いなく有益です」
運動習慣ごとの健康効果の違いについても、一概には言えない。同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さんが続ける。
「本人の状態によっても、運動による健康効果は増減します。普段から運動量が多い人だと、さらに運動を行っても健康効果は小さく、逆に心血管疾患リスクを高めることもあります。一方、普段まったく運動をしない人だとストレッチですら筋力向上効果があります」
それでは、専門家たちが「健康に寄与する」と太鼓判を押す運動は何なのか。その運動習慣が推奨される理由とともに見ていこう。
【専門家監修】最強の運動習慣ランキング
以下10名の専門家に「病気を遠ざけ、長い健康寿命を享受するための運動習慣」を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。上位18位以内の回答を掲載した。
<専門家の皆さん>
小河繁彦さん(東洋大学生命科学部生体医工学科教授)、関守さん(会員制パーソナルトレーニング施設 CLUB100 トップトレーナー)、菅野隆さん(日本健康運動研究所代表)、辻大士さん(筑波大学体育系助教)、佐野こころさん(医学博士)、大西睦子さん(内科医)、山本佳奈さん(内科医/医療ガバナンス研究所)、石原新菜さん(医師/イシハラクリニック副院長)、中沢るみさん(管理栄養士/野菜ソムリエ)、望月理恵子さん(管理栄養士/健康検定協会)
長寿遺伝子を活性化する「ウオーキング」が堂々の1位!
識者が選んだ運動習慣ランキングの1位に輝いたのは「ウオーキング」だ。
「ウオーキングは有酸素運動の一種で、全死亡リスクを減らします。エネルギーを消費することで、古い細胞や老廃物を壊すオートファジーと、長寿遺伝子を活性化します」(石井さん・以下同)
ウオーキングと並んで、運動習慣の代表格といえるのが10位の「ランニング」。両者の大きな違いはタイムパフォーマンスだという。
「台湾の32万人を対象とした研究では、ランニング5分とウオーキング15分の全死亡リスク減少効果が等しい結果です。ランニング25分ではウオーキング105分に匹敵します」
いきなり走る自信がない人なら、14位の「サイクリング」がおすすめ。日本健康運動研究所代表の菅野隆さんが説明する。
「自転車はウオーキングより運動強度が高く、運動の時間効率がよくなります。自転車に乗ると、活動範囲も広がり、外出頻度も増えて一石二鳥です」
単純なウオーキングでも歩く速度を意識することで、健康効果はアップする。注意したいのは、高い効果を期待できてもやりすぎることで逆効果になるケースがあること。4位「筋トレ」は週の運動時間は1時間を超えない方がいい。
「きつい筋トレやハードなランニングは体への負荷が大きいので、過度に取り組むことで活性酸素が過剰になり健康効果が減ってしまいます。筋トレには死亡リスク減少効果があるとされますが、東北大学の研究では1時間をピークに弱くなり、2時間を超えると筋トレをしない人と変わらなくなってしまいます。適切に行えばフレイル(加齢による心身の衰え)や寝たきり予防にきわめて有効な運動なので、やりすぎにだけ注意してください」(イシハラクリニック副院長・石原新菜さん)
また運動量が多い仕事に就いているなど、普段から運動習慣があると、重ねて有酸素運動をしても健康効果が低くなることもある。
「運動による健康効果は無限に増えるわけではありません。ハードな運動をしている人は追加で運動する場合、静的運動で副交感神経を優位にしてリラックスした方が、健康効果が大きくなることもあります」(石井さん・以下同)
副交感神経を優位にする静的運動習慣には、7位「ストレッチ」、9位「ヨガ」や10位「太極拳」が挙がった。
これらはこれまで運動をしてこなかった、運動不足の人にとって効果が大きい運動習慣でもある。
「運動習慣がなく筋力が衰えている人がストレッチを行うと、筋力量が向上することがわかっています。柔軟性だけでなく、跳躍力などの運動機能も高まるので、静的な運動習慣から始めるのも効果的です」
ストレッチは体を伸ばす際にさまざまな細胞も刺激して、血管の柔軟性を上げて血圧を下げたり、筋肉の成長を促すなどの健康効果も見込める。
ただし運動前に静的ストレッチをするのは逆効果なので注意したい。
「運動の際に活性化する必要のある交感神経を抑え、筋肉を緩めてしまうので、その後の運動パフォーマンスが落ちます。運動前のストレッチはきびきびと動くものにしましょう」
静的ストレッチは寝る前に行うとリラックス効果で睡眠によい影響もある。静的運動と動的運動は必要に合わせて活用しよう。
グループでの運動は「寝たきり」や「認知症予防」に最適
高齢になると体の衰えに悩まされることも増える。特に転倒からの骨折は要介護になるリスクが高い。その転倒予防に有効な手段となるのが、5位の「スクワット」だ。
「下半身の筋肉を鍛えることで、立ち上がりや歩いた際のふらつきが抑えられます。10回程度を1セットとして、トイレに行くときに行うなど、習慣化するといいです」(菅野さん)
18位の「片足立ち体操」も短時間で手軽に転倒予防に必要な筋肉を鍛えられる。
そして可能なら取り入れてほしいのが、グループでの運動だ。
「1.3万人を4年間追跡調査した結果、グループで運動をしている場合と、1人で運動をしている人で比較した場合、グループで運動をしている人の方が明らかに要介護状態になる確率が低かったのです」(辻さん・以下同)
社会活動が寝たきり予防に有効だとする研究もある。「運動をグループで行うことで、社会活動と運動の健康効果をまとめて得られるので一石二鳥です。身近に運動グループがあれば、積極的に参加しましょう」
また高齢になると増える日常のちょっとした悩みも運動によって改善できる。尿漏れ対策には16位の「骨盤底筋トレーニング」を、腰痛改善には18位の「ドローイン」(お腹を凹ませて行う体幹運動)など、適宜組み合わせたい。
望む健康効果と自分に合った運動を見つけたら、どの程度行えばいいのか。
「グループでの運動は月に1回からでも充分に効果があります。そこに個人の運動も行うことで相乗効果が見込めるので、週3日以上取り組んでほしいです。1回の目安は少し汗ばむ程度で充分です」
運動によって期待される効果はさまざまだが、あまりにもそれらにとらわれすぎては続かない。
「効果だけを重視して楽しくもない運動を嫌々やるより、好きな運動を長く続けた方が結果的に得られる健康効果は大きくなります」
すでに運動習慣がある人も、まったくないというあなたも、専門家たちが推す運動で健康長寿を手に入れよう。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年5月8・15日号
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