脳機能を改善するには有酸素運動+筋トレ 複数人でするのが大切
政府は、一部の後期高齢者について医療費の窓口負担額を引き上げる方針だ。「長寿」には「健康」や「自立」がつきものになった今や「若返り」は魔法でも夢でもなく、現実的に求められる技術となってきた。
「若返り」と聞いて、「脳」の若返りを期待する人も多いだろう。健康寿命を延長するためにも、認知症予防は最も重要な対策といえる。
脳の機能が改善するのに効果的な「有酸素運動+筋トレ」を複数人で行う
東北大学特任教授の村田裕之さんは、脳の老化現象をこう説明する。
「加齢とともに、脳の神経細胞やそれをつなぐ神経線維が減っていくことから脳は萎縮していきます。細胞学的な視点からは、脳の神経細胞や神経線維を取り戻すことが“若返り”と言えます。しかし、脳科学的に見た“脳の老化”とは、加齢とともに脳機能が低下して処理速度や作動記憶機能が衰えることです。“若返る”という表現より、“脳機能が改善する”と表現した方が正確でしょう」
脳機能の改善に最も効果があるのが「脳トレ」だ。さらに脳トレによって神経細胞が新たに作られることが東北大学の研究で確認されている。その効果をより高めるのが「運動」だという。
「運動を行うとBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が脳から分泌されます。これは、脳の神経細胞の新たな発生や成長を促進するたんぱく質です。筋肉から『イリシン』という物質が出ることによって、BDNFが分泌されやすくなることから、有酸素運動に加えて筋トレも行った方が効果的です」(村田さん)
有酸素運動と筋トレが、脳機能の改善にも効果的だとわかっている。だが、それは、1人きりではなく、複数人で行うことで高い効果を発揮するという。
「まだ完全に解明はされていないのですが、他人と協調する社会性が改善効果をもたらしていると考えられます」(村田さん)
「若さ」を取り戻すためには、人とのかかわりも欠かせない要素であることがわかった。老化を食い止めようとしていた時代から、これからは老化という時計を巻き戻していく時代へ移行する。すると、これまで信じていた常識が覆る可能性もあるのだ。
新時代の「若返り」は、まず、自分の「健康現在地」を知るところから始まるだろうと堀江さんは話す。
「たとえば、私たちの学会では、遺伝子検査を行って個人の適正体重を遺伝子から算出しようとしています。今まではBMIという指数を用いていましたが、それはあくまで平均からの算出です。本当に死亡率を下げる体形は、一人ひとりまったく違う可能性も大いにあるのです」
忘れてはならないのは、「食事」、「睡眠」、「運動」という昔から変わらない生活習慣がいつの時代も基本にあるということ。それを踏まえた上で、夢の「若返り」が実現する日を待ち望みたい。
※女性セブン2020年1月2日・9日号