認知症ケア「ユマニチュード」|在宅介護で実践できる 5つのステップ
ステップ5「再会の約束」
他人の介護であればまだしも、身内の介護で「再会の約束」をするのは、最初は照れくさいかもしれません。しかし、「今、優しく接してくれた人が、また会いに来てくれる」という喜びや期待の感情を記憶に残すことが大切なのです。口頭での約束だけではなく、ベッドの横にホワイトボードやメモ帳を置いて「7時にまた、会いに来ます」などと書き留めておきます。だれが書いたかを忘れてしまったとしても「優しい人が会いに来てくる」という約束を何度も目にし、楽しみにしてくれるようになります。5つのステップが絆をつくり、ケアをスムーズにする
相手が認知症の方である、介護を受ける身である、と考えると、介護を担う人はどうしても「してあげている」という一方通行のコミュニケーションを取りがちですが、実は、相手からは常に返事が自分に向けて発されています。これは、互いに良い時間を過ごしていることを相手が知らせてくれている、いわばケアをしている方への贈り物です。相手からの贈り物をうけとることができるのも、実はケアの技術なのです。これによって互いに良い関係を結ぶことができるようになります。
もちろん、100%うまくいくわけではありませんが、このステップを意識的に行なうことで、いつもと違う変化をご経験になる方は少なくありません。ケアの技術として、この5つのステップを活用してみてください。
次回は、介護にはまだ携わっていない方にも活用できる「ユマニチュード」の技術についてお伝えします。
本田美和子
国立病院機構東京医療センター 総合内科医長。
筑波大学医学専門学群卒業後、国立東京第二病院(現・国立病院機構東京医療センター)、亀田総合病院、国立国際医療センターに勤務。米国のトマス・ジェファソン大学にて内科レジデント、コーネル大学病院老年医学科フェローを経て、2011年11月より現職。著書にイヴ・ジネスト氏、ロゼット・マレスコッッティ氏との共著の『ユマニチュード入門』(医学書院)や『エイズ感染爆発とSAFE SEXについて話します』(朝日出版社)などがある。
イラスト/中島慶子 取材・文/鹿住真弓
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