「背中が曲がる人」その理由と曲がらない人との違い「運動機能の低下でフレイル、内蔵圧迫で認知機能の低下の恐れも」【専門家解説】
「年をとったなぁ」と実感する、体中いたるところの不具合。でも気づいているだろうか。年々丸まっていく背中のゆがみは、「背骨の老化」が招くもの。背中が曲がるか曲がらないかは、全身の老化スピードを大きく左右する超重要ポイントだった。
教えてくれた人
戸田佳孝さん/戸田整形外科リウマチ科クリニック院長、高林孝光さん/アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長・運動機能評論家
ふとした瞬間に気づく“老け姿”
年をとってふと鏡を見て、「老けたなぁ」と思うのはどんなときだろうか。都内に住む新田明子さん(62才・仮名)は、ショッピングセンターのショーウインドーに映る自分の姿を見てギョッとした。
「おばあちゃんが向こうから歩いてくるなぁと思ったら、それは紛れもなく自分でした。背中が丸まって、腰が少し曲がって、昨年亡くなった母にそっくりで。家のお風呂の鏡だと、全身を引いて見る機会があんまりないから、たるんだお尻や下腹ばかり気にしていましたが、背中があんなに曲がっているなんて驚きました。一緒に歩いていた友人は背筋が伸びていて、同じ年なのに私よりずっと年下に見えて見習わないとなぁと思いました」
加齢とともに背中が曲がるのはなぜか。「背骨の老化」に原因があると指摘するのは戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんだ。
「原因は大きく2つあって、1つ目は骨粗しょう症による椎体(ついたい/背骨)の圧迫骨折です。尻もちをついたときや、転んだときだけでなく、骨がもろくなると自分の体の重みで骨折が生じます。ある研究によると、1つの椎体に骨折が起きると、その3か月以内にほかの椎体に圧迫骨折が起きる可能性は13.6%だそうです。そして3か月以内にまた次の椎体にと、ドミノ倒しのような現象によって背中が曲がっていきます。痛みがなく気づかないことも多いため、慢性化し、だんだんと背骨が弯曲していくのです」
男性より女性のほうが多い「背骨の老化と骨盤のゆがみ」
女性の場合はホルモンの変化で骨粗しょう症になるリスクが高く、男性に比べ背中が曲がりやすいという。戸田さんが続ける。
「2つ目は体のバランスをとろうとすることによるもの。女性は妊娠、出産を経て骨盤が後ろに倒れた状態になりやすく、腰椎の自然な反りが失われ、背骨全体が丸まります。これが癖になって、背骨がだんだんと曲がってしまいます」
運動機能の観点から分析するのはアスリートゴリラ鍼灸接骨院院長で運動機能評論家の高林孝光さんだ。
「疼痛(とうつう)緩和肢位といって、人はある部位に痛みを感じるとその部分の筋肉を伸ばす動きをします。筋肉は縮めると痛くなり、伸ばして緩めると楽になるんです。たとえば首の右側が痛いとき、首を右より左に傾けて右側の筋肉を伸ばした方が痛みが緩和される。その意味で、背骨が曲がってしまう人は腰痛を抱えているケースが非常に多い。
腰が痛くて、それを緩和しようと腰の筋肉を伸ばして前かがみのような姿勢になる。それが癖になって背中が曲がってしまうんです。前かがみになると、椎体が圧迫されて骨折も起こりやすくなります」
背中の丸まりは「見た目」だけの問題ではない。認知機能が低下するリスクあり
背中が丸まることは、「見た目に美しくない」と避ける人もいるだろうが、及ぼす影響は外見の善しあしだけではない。
「背中が曲がるとまず、体のあらゆるところの運動機能が低下してしまいます。背中を丸めてバンザイをしたときと、背筋を伸ばしてバンザイしたとき、手の上がる位置がまったく違うでしょう。背中が丸くなると体の可動域に制限が出て、どんどん身体機能が衰えていきます。そうすると、フレイルや転倒のリスクが高まり、寝たきりになってしまうことも。
また、背骨の中には脊髄(せきずい)が通っているので、背中が曲がると神経の動きが悪くなります。血管も曲がり、血流も悪くなるでしょう」(高林さん・以下同)
内臓が圧迫されることで、老化のスピードが早まると高林さんが続ける。
「胃腸がうまく動かなくなり消化不良を起こしたり、肺に充分に酸素が入らず息切れしやすくなります。肺に酸素を取り込めないと、脳にも行き渡らず集中力がなくなったり、認知機能が低下する恐れもある。
見逃せないのが肝臓です。肝臓ではソマトメジンCという骨を丈夫にしたり、筋肉を大きくするホルモンが産生・分泌されますが、圧迫されると分泌されなくなる。同じく肝臓からはヘパリンという血流をよくするホルモンも分泌されますが、これも低下して血流が悪くなってしまうため成長ホルモンなど“若返りホルモン”が運搬されず、老化を早めます。白髪や抜け毛、肌荒れ、乾燥など美容面での老化も進行しやすくなってしまうのです」
戸田さんは体全体に痛みを引き起こすと話す。
「背骨が曲がると、筋肉も曲がったままで固定され、慢性的な腰の痛みにつながります。頭が前に出てくるので、重心が前にきてしまって、バランスをとろうとひざが曲がり変形して痛みが生じることも大きな弊害といえるでしょう。
また、圧迫骨折によって脊柱管(せきちゅうかん)がせまくなり、脊柱管狭窄症(きょうさくしょう)を招いてしまう。神経が圧迫されるので、腰や足にしびれや痛みが出て、歩行にも支障が出ます」
背中が曲がる人と曲がらない人の差とは?
痛みが特にないから、見た目の問題だから、などと背骨の老化、弯曲を放置することは健康寿命に大きな影響を及ぼすということ。
では、曲がる人と曲がらない人にはどのような違いがあるのだろうか。高林さんは「呼吸」にあると言う。
「私が診ている患者さんの中で、背中が曲がる人と曲がらない人の差というのは、息を吸う力と吐く力にあると考えています。呼吸が弱くなる人は背中が曲がってきてしまうんです。先ほど、背中が曲がると肺が圧迫されると言いましたが、しっかり呼吸ができて息を吸い込むと肺がちゃんとふくらんで呼吸筋も発達して、背筋がしっかり伸びます。息を吐くときには肺は縮みますが、お腹が動くので、しっかり吐けると腹筋が鍛えられて前傾姿勢が正されます」(高林さん・以下同)
背中の曲がりを引き起こす骨粗しょう症には、老化だけでなく遺伝要素も関係している。
「骨粗しょう症の50〜70%が遺伝的な体質だといわれています。自分の両親や祖父母などを見て、背中や腰が曲がっているようなら早いうちから骨粗しょう症対策を始めましょう。
後天的な生活習慣ももちろん背筋を左右します。デスクワークが多い人、ずっと同じ姿勢でいることが多い人、足を組んで座る人などは骨盤が後ろに傾いて、背中が曲がりやすくなります」(戸田さん・以下同)
写真/PIXTA イラスト/藤井昌子
※女性セブン2026年2月19日号
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