《相続でもめないために》遺言書にはどんな種類がある? 「介護をしてくれた義理の娘に財産を残したい」など民法の規定と異なる相続をするには
民法の規定通りに遺産を相続するのではなく、被相続人の意思を優先したいときには「遺言書」の作成が必要となる。相続でもめないためには制度をしっかり知り、準備しておくことが重要だ。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、遺言書の種類や作り方、注意点などについて教えてもらった。
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教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている
民法の規定と異なる相続に必要な「遺言書」
遺言書は誰に何をどれだけ相続させるかを記載するものです。介護をしてくれた義理の娘に財産を残したい、全額寄付をしたいなど、民法の規定とは異なる相続をしたい場合に必要となります。また、離婚・再婚をしていたり、子どもがいなかったりする場合に起こりやすい相続時のトラブルを未然に防ぐという観点でも有効な手段です。
遺言書の注意点
遺言書の内容が民法上の規定より優先されるとはいっても、兄弟姉妹を除く法定相続人には遺留分の遺産相続が保障されています。
これを侵害する内容の遺言があった場合、相続人は「遺留分侵害額請求」という形で、遺留分を受け取るための請求を行うことができます。遺留分侵害額請求が行われた場合は、遺留分の相続が優先されるため、遺言書の内容は一部無効となってしまう点には注意が必要です。
また、基本的には相続に関して法律違反をするような行為が欠格事由として定められており、遺言書で相続が指示されていても、相続人が欠格事由に当てはまった場合は相続ができません。例えば、詐欺や強迫などによって被相続人に遺言をさせたり、遺言書自体を偽造したりするような行為が挙げられます。
公証役場で作る「公正証書遺言」
遺言書にはいくつか種類がありますが、遺言が最も無効になりにくいのが公証役場で作成する「公正証書遺言」です。遺言書には細かいルールがあり、ルールに逸脱した部分があると無効になってしまいますが、公正証書遺言は自分が口頭説明したものをもとに公証人が書面として作成するため、無効になりにくく、さらに紛失のリスクもありません。
ただし、財産の金額にもよりますが、作成自体に費用が掛かる(5000円~)というデメリットがあります。また、公証人と証人には内容が知られてしまいます。
自分で書くことができる「自筆証書遺言」
公正証書遺言は費用と手間がかかりますが、2つ目の選択肢である「自筆証書遺言」であれば、お金をかけずに作成することができます。自筆証書遺言はその名の通り自分で書くことができ、証人も不要です。そのため、遺言書を用意したいと思ったときに、すぐに取り掛かれるメリットがあります。
ただし、自筆証書遺言の作成時には5つの要件があり、これを満たしていない場合は遺言書自体が無効になってしまうというデメリットがあります。
自筆証書遺言の作成時の要件5つ
要件の1つ目が、遺言者本人が自筆で全文を書く必要があること。パソコンで作成したものや録音・録画したもの、家族などが代筆したものは無効です。ただし、添付する財産目録はパソコンでの作成が可能ですが、自書ではない財産目録が添付されている場合は、すべてのページに署名、押印します。
2つ目は、作成した日付は「2026年1月1日」「令和8年1月1日」などと正確に自筆で書くこと。
3つ目は戸籍上の氏名をフルネームで正確に書くこと。人物の特定のため、住所も書き入れるといいでしょう。
4つ目は名前の後に、印影が明瞭にあるように印鑑を押すこと。長期間の保存に耐え得るよう、実印と朱肉で押すのがおすすめです。
5つ目が、訂正がある場合は、訂正したい本文に取り消し線を引いたうえで、そばに新しい文章を書き、印鑑を押すこと。さらに、余白部分にどこをどのように変更したのか付記し、名前を書く必要があります。誤字脱字がある場合は無効になることもあるため、間違えた場合は正しく”訂正”をするか、最初から正しく書き直すようにしましょう。
自筆証書遺言を作成したら法務局へ
自筆証書遺言の場合は自分で保管することも可能ですが、紛失リスクがあるうえ、家庭裁判所の検認も必要です。そのため、法務局の保管制度を利用するのが安心です。
住所地か本籍地の法務局に作成者本人が原本を持参し、保管申請をすることで、法務局で安全に遺言書を保管してもらえます。1件につき3900円の費用はかかりますが、家庭裁判所の検認が不要で、紛失リスクもなくなるため、おすすめです。
遺言の内容を誰にも知られたくないなら「秘密証書遺言書」という方法も
「秘密証書遺言」とは、遺言の内容を誰にも知られずに(秘密にして)、かつ、公証人に存在を証明してもらう形式の遺言です。署名・押印した遺言書を封印して公証役場へ持参し、証人2名以上と共に公証人の認証を受ける手続きが必要となります。
内容は第三者に秘匿(秘密にして隠しておくこと)にされますが、公証人は内容をチェックすることがないため、遺言書自体が法的な要件を満たさず、無効になるリスクがあります。そのため、実際に利用している人はとても少なく、自筆証書遺言や公正証書遺言が現実的と言えるでしょう。
確実に希望の相続を叶えたいなら公正証書遺言
遺言は、民法の規定とは異なる、自分の意思を優先した相続をしたい場合に残しておくものです。そのため、不備によって無効になることを避けるため、遺言を残す場合は無効になるリスクの低い公正証書遺言を選ぶようにするといいでしょう。
取材・文/新藤まつり
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