65才を過ぎたら「カロリー控えめの粗食が大切」は間違い?フレイル予防の新たな啓蒙活動に注目
健康寿命が大きく延びた今、より健康的で豊かな老後生活を送るためには、フレイル予防が大切だ。フレイルの原因のうちでも特に重要な「栄養不足」に対し、どのように向き合えばいいのか。新たな啓蒙活動についてレポートする。
フレイル予防のため「栄養不足」に産学官連携で啓発
加齢により体力や気力が弱まっている状態である「フレイル」。ネスレヘルスサイエンスは、2021年より兵庫県の包括的フレイル対策推進事業に参画し、兵庫県内でのフレイル啓発や予防に取り組んできた。そして2024年11月より、包括的フレイル対策推進事業の一環として産学官連携を強化。
ウエルシア薬局やローソン、医療法人や大学などと連携した新たな取り組みとして、「65才を過ぎたら…栄養の考え方をギアチェンジ」の啓発を開始した。
多岐にわたるフレイルの原因のうちでも特に重要な「栄養不足」に対し、地域の高齢者や家族の食事や栄養についての意識と行動の変容を促すことで、高齢者の低栄養やフレイルの課題解決を目指す。同社の調査レポートを紹介しながら、注目の啓蒙活動について紹介していく。
フレイルとは?主な原因は3つ
「フレイル」とは、加齢により体力や気力が弱まっている状態のことを言い、以前は「虚弱」や「衰弱」などとも呼ばれていた。フレイルは、筋力低下などの身体的要素、認知機能障害などの精神的・心理的要素、経済的困窮などの社会的要素で構成されている。要介護状態の前段階とも考えられているが、適切な介入により健康な状態へ戻ることも。そのため早めの発見と対策が重要だ。
フレイルの原因は多岐にわたるが、大きく分けると「栄養不足」「運動不足」「社会参加不足」の3つが挙げられる。
フレイルの段階ではまだ生活に困るほどではなくても、放っておくと心身の機能が徐々に低下し、転倒や骨折、認知症、要介護の可能性を高める。他にも骨粗しょう症や生活習慣病の発症、心不全や慢性腎不全などの悪化に繋がることもあるようだ。フレイルになる前だけでなく、フレイルになってからも、それ以上悪化しないよう対策することが大切だ。「適切な栄養摂取」「適度な運動」「社会的な繋がりの維持」などがフレイルの予防・改善に役立つとされている。
「カロリーを摂りすぎない粗食が大切」と考える高齢者が多い
加齢に伴う食欲の低下などにより食事量が減少すると、身体の維持に必要な栄養素が不足し「低栄養状態」となる。低栄養は筋力の低下や身体機能の低下に繋がり、衰えを加速させ、フレイルのリスクとなるようだ。中高年世代のメタボリックシンドローム対策の食事・栄養管理では、エネルギー(カロリー)の摂りすぎに注意することが大切だが、高齢者の加齢に伴う低栄養やフレイルのリスクに備えるための食事・栄養管理では、反対にカロリーやたんぱく質をしっかりと摂取することが大切となってくる。
この調査結果から、高齢者ほど粗食を心がけがちだが、その結果、フレイルを招いてしまう恐れも。そこで、栄養に関する正しい知識を身につけてほしいと始まったのが、新たな啓蒙活動「65才を過ぎたら…栄養の考え方をギアチェンジ」だ。
65才を過ぎたら栄養管理の知識が必須
この啓蒙活動は、医療法人社団悠翔会 理事長・診療部長の佐々木淳さんの著書『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』(飛鳥新社、2021)に基づいている。佐々木さんは、以下のようにコメントしている。
「栄養管理という言葉を聞いて、カロリーや塩分の制限を思い浮かべる人が多いと思います。確かに現役世代は血圧や血糖、コレステロールの管理、太り過ぎないようメタボ対策も大切です。しかし年を取ると逆に栄養不足が原因で体調が悪化して入院したり、要介護になる人が多いのです。年齢に応じた最適な栄養管理の知識をみにつけましょう!」
健康的な食事といえばついついヘルシーなものをイメージしがちだが、必要となる栄養素は年齢によって違ってくるもの。心や身体の衰えは加齢のせいと諦めず、年齢に応じた食事や運動でフレイルを予防しよう。
【データ】
ネスレ日本 ネスレヘルスサイエンス
https://www.nestlehealthscience.jp/
<図解>フレイルとは?主な原因と3つの対策<フレイルチェック>https://healthscienceshop.nestle.jp/blogs/isocal/knowledge-malisocal-003-index
【調査概要】
調査名:75才以上の食と健康に関する実態調査
調査期間:2019年6月
調査手法:インターネット調査
調査数と対象:(1)75才以上の男女500名、(2)75才以上の同居家族を介護・支援する男女500名*SA(シングル・アンサー):ひとつの質問に対して、複数選択肢を示してその中からひとつの回答を選択させる回答形式
※ネスレ日本の発表したプレスリリース(2024年11月22日)を元に記事を作成。
図表/ネスレ日本株式会社提供 構成・文/秋山莉菜