《母の介護18年》『あさイチ』キャスター駒村多恵さん、仕事と両立し介護福祉士・介護食士の資格を取得 介護職の研究を重ね、嚥下障害の母が再び食べられるように
キャスターの駒村多恵さん(50歳)は、18年にわたり実母の介護を継続中。多忙な仕事と両立し、介護福祉士と介護食士の資格を取得した。食事の工夫と愛情で、一度は口から食べることを禁じられた母親が、再び食べられるようになったことも。駒村さんが介護食を発信するようになったきっかけや、「食べること」への思いを聞いた。 【全3回の第2回】
多忙な仕事と両立して、介護福祉士と介護食士の資格を取得
――介護や仕事をしながら、なぜ介護福祉士と介護食士の資格を取得したのでしょうか?
駒村さん:介護について知識を得たいと思った時、当時は今ほどネットで情報を入手することもできなかったので、資格試験の教材なら情報が凝縮されているのではないかと考えたんです。母は薬剤師なのですが、「薬剤師の免許を持っていて困ったことはないから、国家資格だし取っておいたら」と母も後押ししてくれて勉強することにしました。
仕事をしながら介護福祉士の2年のカリキュラムをこなすのは、睡眠時間も削られてしんどかったです。当時、朝の情報番組『ズームイン!!SUPER』(日本テレビ系)に出演していて、3時半くらいに出勤していましたが、8時台に番組が終わったら、すぐに特別養護老人ホームに向かって利用者さんをお風呂介助する実習を受けたりしていました。それが終わった後にまた仕事に戻って、ドラマの主演女優さんにインタビューする日もありました。体力の限界との闘いでしたね。
それから3年後、母の咀嚼機能が落ちてきたのを機に介護食士の資格も取得しました。2012年から『あさイチ』(NHK)で料理コーナーを担当することになって、オンエアする料理を前日に自宅で作って、それを母と一緒に食べることが習慣になっていたんです。その中で、母がだんだん噛みづらいとか、飲み込みづらくなってきたので、どう工夫したらいいのか調べるうちに、介護食士にたどりつきました。それで調理実習のあるクラスに半年ぐらい通いました。
嚥下障害のある家族への食事に困っているニーズに応えて、介護食レシピを発信
――いまや介護食事研究家のような活動もされていますね。
駒村さん:マニアックにトライアンドエラーを繰り返しています(笑い)。飲み込み具合や、どのくらい噛めるかなどの程度によって、食形態を変えていくんです。刻むだけでいいのか、とろみをつけるといいのかで提供する食事も変わってくるので、研究を重ねて母に合わせた食形態を作り続けています。
例えば、エビはプリッとした食感が特徴ですが、嚥下障害の人には口の中で逃げてしまって噛みにくい食材です。どうすれば食べやすくなるのか、背を大きく開く、潰してみる、切り込みを入れてみる、切り込みの角度や本数を変えてみる。
それを母に提供する前に、万一の誤嚥リスクを減らすため、月に1回訪問診療に来ていただいている嚥下の専門外来の先生に食べているところを内視鏡でチェックしてもらって、OKだったものを1か月作るというサイクルです。
――そうして、嚥下障害があっても家族と同じ料理が食べられるレシピを考案して、発信しているんですね。
駒村さん:もともとは発信するつもりはなかったんです。きっかけは『あさイチ』に出演される調理師専門学校の先生との雑談のなかで、介護食の話題をプロデューサーさんが聞いていて、私が介護食を習いに行ってるところをロケすることになったんです。
その放送は反響があって、グッチ裕三さんにも廊下で声をかけられてお褒めの言葉をいただいたり。視聴者の方の反応も大きくて、たくさんの方が困っていらっしゃるんだと気づき、そこから少しずつ発信するようになりました。
100食以上レパートリーがありますが、基本的には日々ごはんコーナーで料理研究家の方などに教えてもらったレシピを、母が食べられるようにするにはどうすればいいのかと考慮して、安全第一でアレンジしています。
食べることは生きること
――おすすめの介護食を教えてください。
駒村さん:今の寒い時期だと、サムゲタン風スープは体が温まっていいですね。お米と一緒に骨付き鶏肉をしっかり煮込むととろみが出るし、お肉がほろほろになるので口が開きにくくても食べやすい。コラーゲンも摂れて栄養価が高いので、我が家の定番です。
嚥下力がもう少しある頃は、母は牛肉のしぐれ煮がすごく好きでよく作っていました。お酒と砂糖でお肉をさっと煮ると調理時間も短く、比較的柔らかく食べられるんです。
――口から食べることを禁じられた母親が、ほぼ普通食まで回復したこともあったそうですね。
駒村さん:それは食形態だけではなく、姿勢の改善も同時に行いました。例えば、首が後ろに倒れた状態だと、私たちだって飲みづらいんです。その姿勢を補正するために、首の後ろにタオルを入れて、顎を引いて気管に入らないようにしたり、体圧分散してリラックスした状態を作るとか舌のどの位置に食べ物をのせると食べやすいのか観察したり。母の場合は右半分に歯が残っているので、右側にのせると噛みやすくて。
これは再現性があると思います。母は以前、退院するタイミングで「食べるのは禁止」と言われたのですが、嚥下の先生と相談し、これなら食べられるのでは、という料理を私が持参して、入院先の言語聴覚士さんに飲み込みのチェックをしてもらったところ、「感動するほど食べられます」と言われて、先生は発言を撤回されました。
もし胃ろうを付けたとしても、工夫次第で口から食べることもできます。口から食べる機能を回復するためのリハビリテーションと併用することは可能です。食べることを諦めないでいただきたいですね。食べることは生きることですから。
◆フリーキャスター 駒村多恵
こまむら・たえ/1975年2月18日、大阪府生まれ。フリーキャスターとして報道・情報番組を中心に活躍、素顔を引き出すインタビュアーとして高く評価される。実母の在宅介護を約15年以上続けており、仕事をするかたわら介護福祉士や介護食士の資格を取得。現在はNHK「あさイチ」のサブキャスターとして、料理・園芸コーナーを担当する他、介護に関する講演なども行う。
撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香
