「慢性膵炎とともに生きる母の決意」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第25話
漫画家のうえだのぶさんは、慢性膵炎を抱える母と山口県でふたり暮らし。「死ぬかと思った」という2度目の手術を経て、母の気持ちに変化が…。退院の日、母のために作った晩ご飯とは?
「死ぬかと思った」その後の母の気持ち
膵臓内の管(膵管)に石が詰まってしまい、それを取るために3回の手術を受けることになった母。2回目の手術は、1回目よりもきつかったようで…。「死ぬかと思った!」を連発していましたが、術後の経過は良好で、手術の3日後には退院が決まりました。
母の「死ぬかと思った」体験は、どうやら麻酔が覚める時のことらしく、1回目の手術の時は手術室でスッキリと目が覚めたけど、今回は、意識はあるのに目が開けられなくて身体も動かなくて、地の底にどーんと沈んでいくような感じがして「ああ、このまま死ぬのかな」と思ったんだそうです。
担当の先生からは、術後に痛みや発熱があっても数日で回復すると説明があった通り、実際手術の2日後には熱は下がって食事も出ているので「何かあった」わけではないようなのですが。
「あの時のこと覚えてる?」と聞いてみると、「あれだけは忘れられん!」と母は細かく説明を始め、私が日記に書き留めている内容とちゃんと合うのでビックリ。よっぽど怖かったんだと思います。
そして退院当日――。
支払いを済ませて一緒に駐車場に向かっていると、突然母が「わたしゃ決心したよ!」と言い出しました。
私「え!? もしかしてもう治療受けないとか言う!?」
母「そうじゃない!元気なうちに美味しいものをいっぱい食べて、いろんな所に遊びに行くことにした!」
――おお?どうした!?
母「もうね、クヨクヨしてても仕方ない!元気なうちにちゃんと楽しんじょかんと時間がもったいない!」
これを聞いて、私は心の底から「良かった~~~~~!」とちょっと胸に迫るものがありました。
「原因不明で完治しなくて膵がんになる確率も高くなる」という病気になってしまった人に、「クヨクヨするな」とか「元気なうちに人生を楽しもう」とか、そう生きて欲しいとは思っても、こちらからは言えません。
でも、本人の中から湧いてきた気持ちなら、私は喜んでサポートしたい。
てか、やっぱりクヨクヨしてたんだね。
私が心配すると思って顔にも口にも出さずに「何もわかってない」フリをしてたのかな。
であれば凄いですよ、尊敬しますお母さん、、、、
母「あーでも、石は取ってもらったけえこれで終わりじゃけえ良かったいね♪」
え? まだ手術あるよ? 次はステントを外す手術するよ? ていうかこの病気これで終わりじゃないよ? 本当にわかってる? それともこれも演技?
まあとにかく、元気なうちに美味しいものをいっぱい食べて欲しい。私も頑張りますけ~。
この日の晩ごはんは、母のリクエストで「鶏皮串」にしました。もちろん「NO老いる」的工夫もしましたよ。
NO老いるMemo「脂質の高いものと低いものを組み合わせる」
今回の手術で膵管の石は取れましたが、慢性膵炎の対処法である「脂質制限」はこれからもずっと続きます。
鶏皮は母の大好物ですが、市販の焼き鳥はやはり脂が多いので1本だけ。それだけだとやっぱり寂しいので、脂質の少ないロースハムの「ちょっとお高いやつ」を買って盛り合わせました。
副菜は、「さつま芋の茎の煮物」と「けんちょう」。
「けんちょう」は、大根と人参と豆腐を炒め煮にする山口県の郷土料理です。
豆腐が入るのでたんぱく質も摂れる優秀な一品。豆腐は意外と脂質を含む食品ですが、小鉢程度ならオッケーです。
→「豆腐はヘルシーだからNOオイル?」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~ 第10回
――次回は7月3日公開予定です。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で81才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
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