《脳血管疾患の予防に》減塩だけではなく「血管を強くする」ことが大事 そのカギを握る牛乳に含まれる栄養素とは?
生活習慣病など、牛乳がさまざまな病気の予防に役立つことを知っているだろうか。病気予防の観点から、牛乳を飲まないのはもったいないと話すのは、『医師が教える長生きする牛乳の飲み方』(アスコム)を上梓した、精神科医の和田秀樹さん。牛乳で予防が期待できる病気や牛乳の健康効果について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
精神科医・和田秀樹さん
わだ・ひでき。精神科医。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。著書に『70歳からのボケない勉強法』(アスコム)など。
牛乳は生活習慣病の予防に期待大
生活習慣病とは、長期間にわたる不健康な生活習慣が原因で発症する病気の総称で、糖尿病、高血圧、脂質異常症、脳血管疾患、心臓病、肥満などが含まれる。
特に日本人に多い糖尿病の予防には、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を適切な範囲内に保つ血糖値のコントロールが重要だ。そこで、血糖値が上がりにくい低GI食品である牛乳が役立つ。例えば朝食時に飲むことで食後の血糖値の上昇を緩やかにすることが期待でき、その効果は昼まで続くという。
「また、牛乳に含まれるたんぱく質のひとつであるカゼインは、食べ物の消化吸収の速度をゆっくりにしてくれる特徴があるため、急激な血糖値の上昇を防いでくれます。消化吸収がゆっくりで胃の滞在時間が長いことで、満腹感を得やすく、食べ過ぎを抑えてくれるため、肥満の防止にも牛乳はひと役買ってくれます」(和田さん・以下同)
血管を強くして血圧を安定させ、脳血管疾患の予防に
今の日本人の死因の1位は「がん」だが、1980年までの30年間は「脳血管疾患(脳卒中)」だった。塩分の摂りすぎによって上がった血液の圧力で血管が内側に押し付けられ、血管壁が損傷したり、脂肪やコレステロールが沈着しやすくなることで血管が狭くなったりして、狭く脆くなった血管が切れてしまうことによるものが多かったそうだ。
和田さんは、減塩だけでなく「血管を強くすること」も同じくらい重要だと言う。1980年以降、死因のランキングで脳血管疾患が順位を下げたのは、1980年以前と比べて食生活や栄養状態がよくなり、血管が強く丈夫になったことが理由だからだ。
「血管を強くするのはたんぱく質と脂質の一種であるコレステロールです。たんぱく質をとり、コレステロール値も血圧も高めのほうが肌つやもよく、元気でいられます。脳血管疾患のリスクを減らすための正解は、減塩よりもたんぱく質と脂質をとって血管を強くすること。たんぱく質も脂質もバランスよく含まれる牛乳は、脳血管疾患の予防にもひと役買ってくれそうです」
感染症やがんのリスクを下げることにもつながる
風邪やインフルエンザなどの感染症にかかるのも、がんになるのも、免疫機能が低下し、体に入ってくる異物を防御しきれないことが原因のひとつだ。免疫細胞の材料となる栄養素は炭水化物やたんぱく質、脂質などで、なかでも嫌われがちな脂質の一種であるコレステロールは、免疫細胞が正常に機能するための重役を担っている。
「免疫細胞の材料とそれを正常化する栄養が牛乳にはすべてそろっています。免疫力が高まれば、新型コロナウイルスも風邪も、インフルエンザも怖くないし、がんのリスクも下げられるのです。毎日の牛乳習慣で、病気や不調を遠ざける人生にしましょう!」
慣れ親しんだ牛乳を飲まないのはもったいない
今のシニア世代が子どもの頃は、瓶牛乳を配達してもらったり、給食で飲んだりと、多くの人にとって慣れ親しんだ「体によい飲み物」だ。大人になると、コレステロール値が気になるなどの理由で飲まなくなっていく人も増えるが、成長期の子どもに重宝されてきた牛乳は、高齢者にとっても重要なものであると和田さんは話す。
「子どもは成長過程で体の修復力や維持力、免疫力が低い傾向にあります。高齢者も老化によってそれらが低い傾向に。だから、それを栄養で補う必要があるのです」
さまざまな飲み方や食べ方ができる牛乳
牛乳は栄養価が高いことに加え、いろいろな飲み方や食べ方ができるのもメリットのひとつだ。
「そのまま飲んでももちろんいいですが、果物や炭酸水、ココアやコーヒーなどに入れて飲んでもおいしいし、料理にも使えるのでどんどん取り入れてほしいのです」
牛乳を原材料とした乳製品も栄養価は同じく高い
ヨーグルトやバター、チーズなどの、牛乳を原材料とした乳製品も同様に栄養価は高いため、牛乳ばかりでは飽きてしまうという場合は、ほかの乳製品をとるのもおすすめだ。
「牛乳とバターほど塩と合うものはありません。バターは卵や砂糖などとも相性がよく、スイーツの材料でもあります。アイスクリームやバターをたっぷり使ったクッキーなどでも、乳製品の栄養をとることができます」
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