ナイツ・塙宣之さんが語る「生涯現役にこだわった内海桂子師匠の生き様」と理想の逝き方
歌手の加藤登紀子さん(79才)の夫・藤本敏夫さん(享年58)は2001年に肝臓がんが判明し、余命1年と宣告された。しかし、藤本さんと加藤さんは諦めなかった。
「やるべきことを全部やればもっと長生きできるんじゃないかって、夫も私も驚くほど強気に受け止めました。余命宣言を受けた夫は“あと3冊は本を出す”と宣言して精力的に働き、放射線治療などの新しい治療法を探しました。夫は自分で自分を納得させたいという思いもあり、生きている限りは生きることを諦めませんでした」(加藤さん・以下同)
死と真っ向から向き合った藤本さんは入退院を繰り返しながらも書籍用の原稿を書き、仕事の指示を出し、いまできることを最大限に行った。そんな夫を加藤さんは支え続けた。
しかし余命宣告から1年後、肺炎にかかった藤本さんの容体が急変した。加藤さんが病室に駆けつけたとき、血中酸素飽和度がかなり低下した藤本さんは酸素マスクを付けていた。妻が夜通し夫を見守り迎えた翌朝、親族が揃ったのを見届けた藤本さんはこうつぶやいて自ら酸素マスクを外した。
「もういいだろう」
加藤さんが振り返る。
「マスクを外した夫はそのまますーっと息をしなくなりました。“もう終わりにしよう。じゃあな”とでも言うようにそのまま息を引き取ったんです。藤本は、マラソン選手がコースを走り切るように生きた。もちろん悔しさもあったでしょうが、それでも“悔いはない”と大見得を切って生を手放した。その瞬間の彼の顔は本当に素敵でした」
夫の死後、加藤さんは藤本さんが運営していた千葉県鴨川市にある有機農業の法人「鴨川自然王国」を引き継いだ。現在は東京と鴨川市を行き来して暮らす彼女が語る。
「あらゆる人生は自分が主役の物語だから、藤本も誰かのためではなく自分のために生きました。生き方も死に方も人それぞれ。ある意味で自分勝手に生きればいいんです。私も自分が歌いたいから歌っている。何があったって人は死ぬのだから、自分の物語のために日々一生懸命に生きるしかないんです」
→加藤登紀子さんが明かす「夫を失った寂しさを癒してくれたみそ汁と鴨川の暮らし」
自分にとっての「理想の死」をイメージしておくことが大切
人生の最期は人それぞれ。だからこそ「自分の理想」を考えておくことは重要なのだ。
「晩年の田村正和さん(享年77)は露出を避けて俳優としてのイメージを守っていたと聞きますし、アントニオ猪木さん(享年79)は闘病する姿を世に出して最後まで露出を続けました。どちらも正反対のようですが、生き方や死に方を自分で決めた点は共通します。死は誰にでも訪れるものだから、自分が理想とする最期をイメージしておくことが大切です」(在宅医療を行う医師の森田洋之さん)
あなたは、どのように死を迎えたいですか。
→1本のFAXが、すぐ死ぬはずの妻を2年半救った シリーズ「大切な家族との日々」
教えてくれた人
森田洋之さん/医師
撮影/本誌写真部 写真/時事通信社
※女性セブン2023年6月8日号
https://josei7.com/
●女優・八千草薫さん、加藤治子さんがおひとりさまでも「幸せな最期」を迎えられた理由