ナイツ・塙宣之さんが語る「生涯現役にこだわった内海桂子師匠の生き様」と理想の逝き方
自宅でも病院でも、自分の望む場所で自分らしく「幸せな最期」を迎えたいもの。“現役最高齢の芸人”として活躍した内海桂子さんの弟子であるナイツ・塙宣之さんと、肝臓がんになった夫を支えた加藤登紀子さんに、逝く瞬間まで生死と向き合った闘病生活から感じた「理想の逝き方」について聞いた。
ナイツ・塙宣之さん「内海桂子師匠のように生涯現役で漫才を続けたい」
どこで過ごし、誰に何を託して、治療はどこまで受けるか――死の質(QOD=Quality Of Death)を高めるためには自分が人生に何を求めるかを自問自答する必要がある。
現役最高齢の漫才師として舞台に立ち続け、2020年に旅立った内海桂子さん(享年97)は“生涯現役”がその答えだった。
「とにかく誰よりも舞台に立ち続けたい人でした。誰よりも長く漫才をやりたいと考えていたんじゃないかな」
そう語るのは内海さんの弟子のナイツ・塙宣之さん(45才)。
塙さんが弟子入りした頃、内海さんはすでに80才だった。その後、いくつになっても失われない漫才への情熱に感銘を受けたと塙さんが語る。
「90才を過ぎた桂子師匠が現役で演芸場に出続けたのは、まだ売れたいという思いがあったからで、“ナイツよりももっと私を使ってくれ!”とよく言っていました。すべてのエネルギーを自分の芸のために使う姿が生き方としてカッコよかった。“舞台で私のことをボロクソに言ってもいい。それを笑いにするから”という姿勢にも憧れました。
『生涯現役』は師匠にとって自分を支える大きな要因だったと思います。たとえ周りのスタッフの人が止めたとしても、桂子師匠は頑なに舞台に出続けるという感じでこだわりを持っていらした。それに、ぼくたち弟子と交流するのも師匠の生きる活力だったように感じます」
高齢になると食生活を節制する人も多いが、江戸っ子の内海さんは味の濃い食べ物を好み、減塩を気にせず、大好きな常温の日本酒を毎日欠かさず飲んでいた。
「とにかく好きなお酒を飲んで、食べたいものを食べていました。普段の食事は桂子師匠のマネジャーでもある旦那さんが用意していましたが、まったく気にせず好きなものを食べていたようです。そうした自分らしさが舞台で“味”として出ると言っていました。個性がすべて漫才になると教えられたし、師匠が好きなように生きる姿を見せてもらったことは弟子として得難い経験でした」(塙さん)
自分も師匠のように生涯現役で漫才を続けたい――塙さんは天国の内海さんに誓う。命が燃え尽きるその瞬間まで生への強い気持ちを持ち続けることは、見守る家族にも力を与える。
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