どう生きるかより、どう死ぬか「QOD(死の質)」に注目 エリザベス女王、坂本龍一さんらが準備した「理想の逝き方」とは
入念な準備をしてその瞬間を迎えた人、最期まで病気に抗った人、生涯現役にこだわり好きに生きた人。さまざまな生き方がある中で、共通していたのは逝く瞬間まで生死と向き合ったことだ。人生に満足し、死の直前に笑顔を見せる。先人達から人生における至上命題のヒントを探った。
「どう死ぬか」を考えることが当たり前の時代に
人生100年時代、どう生きるかと同じかそれ以上に重要なのが「どう死ぬか」という問題だ。
欧米では「生活の質(QOL=Quality Of Life)」に加えて、「死の質(QOD=Quality Of Death)」という考え方が当たり前になっている。
2022年1月、アメリカのデューク大学とシンガポールのデュークNUS医科大学が、81か国の「終末期ケアの質の国別ランキング」を発表した(下グラフ)。同レポートでは「QOD」について、「痛みや不快感の管理がされていたか」や「清潔で快適な空間が提供されていたか」「好ましい死に場所が提供されたか」など13の評価基準を設定。それぞれの基準について、各国の専門家が5段階で評価し、総合点順にランキング化した。
1位はイギリスで以下、アイルランド、台湾、オーストラリアと続く。日本は24位で、先進国の中では決して高い順位とはいえない結果となった。
死の質が問われる現代、「理想の逝き方」とはどのようなものだろうか。
エリザベス女王は「理想の逝き方」を考えて生きていた
QODランキング1位を誇るイギリス国民の意識は高い。
その代表例が、昨年9月に死去したエリザベス女王(享年96)だ。英国君主として歴代最長の70年以上在位しながら、亡くなる2日前まで公務をこなし、ピンピンコロリで旅立った。晩年になってもおしゃれや好物を楽しみ、「お元気でしたか?」と聞かれると「ええ、まだ生きているわよ」(Still alive)と返すなど生涯ユーモアも忘れず、私たちの記憶にはチャーミングな笑顔が残る。
長く多忙な人生を生きながら「死の準備」も怠らなかった。
「イギリスでは1960年代から女王の死に備えて、『ロンドン橋作戦』と呼ばれる葬儀計画の準備が進められました。会議には女王も参加し、自らの葬儀のすべての進行に目を配ったといいます」(在英ジャーナリスト)
“備え”が実り、昨年9月に行われたエリザベス女王の国葬は英王室の気品や伝統を世界に示すセレモニーとなった。
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