年間3万人の高齢者が自宅で転倒!家に潜む危険なポイント11と対策
高齢者の「不慮の事故」のうち「転倒・転落」によるけがや救急搬送が「交通事故」よりも多く発生している。高齢者は一度でも転倒すると、寝たきりや認知症に近づき、けがをしただけではすまなくなる。その転倒リスクがいちばん高いのが自宅だ。あなたが暮らしている住まいで寿命を縮めないための防衛術を公開する。
冬の「ヒートショック」が危ない
とうとう冬将軍が到来。寒い季節になると恋しくなるお風呂だが、これが多くの高齢者の命を奪っている。
大阪府在住の大岸麻美さん(52才・仮名)は、昨年の冬を振り返る。
「同居している80代の父がお風呂でヒートショックを起こし、救急搬送されたんです。たまたま私が脱衣所にタオル補充に行ったので異変に気づき無事でしたが、そのまま溺れ死んでしまうケースが多いと聞いて震え上がりました」
ヒートショックとは、居室と浴室やトイレなどとの温度差のほか、熱い湯に入ることが原因で血圧が乱高下して、さまざまな病気を引き起こすこと。失神のほか、心筋梗塞や脳梗塞を招くこともあり、11月から3月にかけての寒い時期に多くなる。
ケアタウン総合研究所代表の高室成幸さんが話す。
「ヒートショックによる風呂場での溺死は多い。風呂場以外でも、着替えやトイレなど肌を露出するときは脳梗塞や心臓発作などのリスクがあり、注意が必要です」
自宅の中には多くの危険が潜む
ヒートショックのほかにも自宅には多くの危険が潜んでいる。東京消防庁によると高齢者の事故件数は右肩上がりで増加しており、2019年には同庁管内だけで8万3905人が救急搬送された。4年前と比較すると、1万5000人以上もの増加だ。
事故種別でいちばん多い「転ぶ」事故の発生場所は「住宅等居住場所」が最多の56%で、3万3524人だった。
その中でも1位は居室・寝室、2位は玄関・勝手口、3位は廊下・縁側・通路と続く。つまり、自宅のどこかで事故に遭うことがほとんどなのだ。
「日本の住宅は大家族向けから核家族向けに移り変わってきていますが、高齢者を想定したつくりになっていない。そのため年齢を重ねると、各所に支障が出やすくなるのでしょう」(高室さん)
そういった事情もあり、住み慣れた自宅であっても危険が潜んでいることが多々ある。
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが言う。
「消費者庁のまとめでも、転倒事故の半数が自宅で起きていると示されています。状況別の事故トップ3は『滑る』『つまずく』『ぐらつく』。特殊な状況で起きるというより、加齢によりバランス感覚が失われ、数cm程度のわずかな段差がリスクとなるようです。転倒リスクは年齢とともに上昇しますので、事故が起きやすいシチュエーションは頭に入れておくべきです」
運悪く大腿骨を骨折すれば寝たきりとなってしまうことが多く、そうなれば体力と認知機能は急激に衰える。
高齢者の「転ぶ」事故発生場所「自宅がトップ」
・住宅等居住場所 3万3524人/56%
・道路、交通施設 2万609人/34.5%
・店舗、遊戯施設等 3405人/5.7%
・会社、公共施設等 719人/1.2%
・公園、遊園地、運動場等 681人/1.1%
・医療施設 188人/0.3%
・学校、児童施設等 115人/0.2%
自宅における高齢者の「転ぶ」事故発生場所トップ5
1位:居室・寝室 2万2902人「リラックスしている場所がいちばん危険!」
2位:玄関、勝手口 3187人
3位:廊下、縁側、通路 2342人
4位:トイレ、洗面所 1000人
5位:台所、調理場、ダイニング、食堂 898人
出典/東京消防庁(2019年における発生数)