年間3万人の高齢者が自宅で転倒!家に潜む危険なポイント11と対策
まずは玄関・勝手口から。高室さんが指摘する。
「高齢になれば、玄関の上がりかまちの段差に足を引っかけやすくなる。いったん腰かけるため幅50cm、奥行き40 cm以上の台やいすを置いた方がいい。玄関を上がるときの踏み台や手すりも用意したい。何より、玄関まわりの靴も整理しておかないと、つまずく原因になります」
転倒事故の発生場所1位になっている「居室・寝室」はどうか。埼玉県の畑田香子さん(65才・仮名)が困り顔で言う。
「2年前、こたつの配線に足を引っかけて転んでしまい、手をとっさについたら手首を骨折しました。年を取って、知らないうちに“すり足”になっていたみたい。コンセントの位置がよくなくて、気をつけなくちゃとは思っているのですが…」
最も長い時間を過ごす居室の安全は非常に重要だと専門家も強調する。
「床に雑誌や新聞、チラシなどを放置するのはとても危険。紙は滑りやすく、うっかり踏んでしまうと転倒の可能性が高くなる。また、カーペットの端がめくれているとつまずく原因に。こたつ布団の端などでも同様のリスクがあります」(太田さん)
暖房器具や加湿器などの電気コードやガス管なども骨折を起こしかねない。電気コードについて、高室さんはこんな指摘をする。
「暖房器具が増えたり、充電するものが多かったりして、つい延長コードや電源タップでタコ足配線してしまいがちですが、火災のリスクが拭えません。面倒がらずに必要なときだけさし込み、終わったら抜くことで待機電力もなくせます。コンセントを整理することも重要です」
寝室・階段は「落ちる」危険が
続いて寝室・階段は「落ちる」に注意が必要だ。
前出の東京消防庁のデータによると、高齢者の「落ちる」事故は「転ぶ」に次いで多い。2019年には7000人以上が救急搬送されている。やはりというべきか、「落ちる」場所の1位は階段だ。
「階段は、照明で足元の明るさを確保したり、階段に滑り止めテープを貼るなどがおすすめです。リフォーム時になりますが、手すりの設置も有効な策となります」(太田さん・以下同)
「落ちる」の2位はベッドからの転落。
「高さのあるベッドでは、うっかり落ちてけがをする可能性がある。対処法として、片側を壁につけるなどするとリスクを下げられます。また、低床のベッドにすると転落時の危険度を下げられます。また、布団であっても、横になっているところから起き上がるときは体勢が大きく変わるので、ふらついて転倒するリスクが高くなります」
大型の家具は必ず固定して
高室さんは部屋における危険は、まだあると続ける。
「日本が地震大国であることを考えると、タンスがある部屋も危険です。リビングの大きな家具も動いてしまうでしょう」
大型の家具は「動く」と考えて必ず固定する。また、廊下に物を置かないようにしたり、居間や寝室、廊下の段差にも注意が必要。高齢者は夜にトイレに立つことも少なくないからだ。
「夜間にトイレに行くとき、通常の照明ではまぶしくて目が覚めてしまう。また、家族を起こさないようにとの配慮から、明かりをつけずにトイレに行く人も多い。ですが、暗い室内や廊下では、うっかり物を踏んでの転倒や、足元がもつれてしまう確率が高まる。人感センサーの足元照明があれば、そういったリスクを減らせます」(太田さん・以下同)
冒頭に登場したような、寒さが厳しくなると心配になる風呂場やトイレでのヒートショックはどう回避するか。
「暖かい居室との温度差が原因ですから、脱衣所やトイレには暖房器具を置いて暖かくしておきましょう」
危険な箇所はまだまだある。
「内開きや外開きのドアは、地震で落下物などがあれば開かなくなることも考えられる。また、そういったドアでは、開けるときに無意識に前後に体を動かしていますが、高齢になるとそれが難しくなる。ふらついて転倒する原因にもなりえます。高齢者にはスライドドアが適しています。施設のドアのほとんどがスライドドアであることがその証拠です」(高室さん・以下同)
さらに、握力が低下する高齢者には握り玉タイプのドアノブは適さない。ホームセンターには安価でレバーハンドルに交換できるグッズも売られており、人気を博している。