山本陽子さん(80才)が別荘を改修した48坪の住まいを公開「収納棚は全部手作り」
俳優の山本陽子(80才)さんは、別荘を終の住処に改修し快適生活を送っているという。「収納棚は全部手作りです」と、笑顔で今の住まいを案内してくれた。彼女が移住に至るまでの道のりと、現在の暮らしぶりについて語っていただいた。
終の住処はココ!と感じて50代で購入した別荘
「70才になった頃、コンパクトで、ものが少ないミニマリストな生活がしたいと思ったんです」
そう語る山本陽子(80才)は、10年前、東京の住まいを引き払い、都心から車で1時間ほどの場所に居を移した。
「いま住んでいるマンションは、もともと知り合いの建築家が設計したもので、50代のときに別荘として購入しました。緑豊かなところで、四季を感じられ、海が近くて温泉もあり、徒歩圏内に食料品を買えるところもある。それに、東京へは車でも新幹線でも行き来できる。『終の住処はココ!』と思いました」(山本・以下同)
東京で暮らしていたマンションは50坪だったが、別荘は48坪。
「極端に延べ床面積が減るというわけではないですが、これまで東京と別荘、2つあった住まいを1つにするわけですから、荷物の整理が大変。そして、東京にあった荷物を全部移すわけですから、それはそれは、大変な作業でした。
私は独り者で子供がいませんから、特に自分で責任を持たないといけません。私にとっては大事なものでも、残して死んでしまうと、後に残された人は困るでしょうから、自分で思い切ってどうにかしないといけないと思っています」
整理整頓好きだったが捨てられない…
そんな山本を困らせたのは、別荘の収納スペースが東京の家に比べて少なかったことだ。
「別荘は和をテーマにしていて旅館みたいに素敵なんですが、収納はクローゼットやお布団をしまう場所など最低限しかありませんでした。東京にあった荷物を全部持っていくことはできません。そこで、『断捨離しなければ!』と2か月ほどかけて荷物の整理をしました」
元来、整理整頓好きで、部屋が片付いていないと落ち着かないタイプ。断捨離もすんなりと、うまくいくと思っていた。
「ところが、いざ整理し始めると、着られなくなった服も『ダイエットしたら、また着られるようになるんじゃないかしら』なんて思い始めてね。着ていないTシャツだって、『これ、寝巻きにできるんじゃないかしら』と迷ったり。でも、そうすると結局、捨てられないでしょ。洋服はサイズや好みがあるから、簡単に人様に差し上げられないですし。だから、洋服は『これはいまの私に合わないから、いらない!』と思い切って、捨てました」
古い靴やバッグは、ドラマや映画の衣装を担当する知り合いに託した。
「私はゴルフが趣味でゴルフ用のスパイクも未使用のまま何足か持っていたんですが、いまはもうスパイクなんて使わないですからね。どうしようかと知り合いの衣装さんに相談してみたら、『ゴルフ用のスパイクだけじゃなくて、使えそうな靴やバッグも持ってきて』と言われて、お持ちしたんです。そうしたら、『これは貴重だからありがたい』って引き取ってもらえて。ありがたかったですね」
大切なものは手元に残した
厳選して、手元に残したものの中には、趣味で買い集めたものもあった。
「私は食器が大好きで、親交のあった作家の宇野千代先生(享年98)と、あちこちの骨董品店にご一緒して、漆器類を買っては集めていました。京都では行灯(あんどん)も買いましたね。そのとき集めたものが、いまの家の和の雰囲気にぴったりハマって、ようやく日の目を見たという感じです。気に入った器だけは、どうしても手放せないんですね」
そのほかにもどうしても手放せないものがあった。
「仕事で撮った写真や、これまで自分が出演したドラマ、映画を録画したVHSテープです。ビデオテープが思いのほかたくさん…200本以上もあったんです。写真はほとんど仕事で撮ったもので、大量にある。『こんなの自分以外持っていても価値がないし、早めに処分しなくては』と思っていたんですが、処分してしまうと二度と戻ってこないでしょ。だから決断できなくて、引っ越す際にすべて持ってきてしまいました」
断捨離で荷物を大幅に処分したつもりでも、思いがけず引っ越し先に持っていくものが多かったという。
「実際に、荷物を持って行って、『いまの家にどれだけ入るか挑戦してみよう』という気持ちになってね。メジャーを片手に部屋の幅や高さを測って、『ああでもない、こうでもない』と考えていました」
収納家具は自分で作った
ゲストハウスは別にあるため、いまは、住まいの茶室にふだん使うものを収納し、8畳の客間を丸ごと納戸に作り変えた。
「東京から持ってきた和だんす以外、収納する家具は自作しました。ホームセンターで発泡スチロールや板を買ってきて、寸法を測ってカットして組み合わせて、自分で棚を作ったんです。『プロに任せないの?』と、友人からは言われましたが、DIYを自分でするのが好きなんです、私(笑い)」
自作の棚は写真やVHSテープで満杯だ。
「写真はアルバムに入れてあるものや袋のまま手つかずのものもありますが、ひとまずここにすべて置いてあります」
家具の配置もすべて自分で考えた。
「和だんすがぴったりと“コの字”になるようにメジャーで綿密に測って、自分で家具を移動したんです。ぴったりハマったときの爽快感は格別です! 気に入らないときは夜中に起きて、ゴソゴソと模様替えをすることもありました」
試行錯誤の末、現在はスッキリとした住まいとなり、好きなものに囲まれて暮らしている。
「客間にも使える12畳の居間には、6人分の椅子と漆のテーブルだけがあって、かなりシンプルなんですが、その横には広い縁側があり、毎朝窓を開けて、近くにある海からの風を浴びながら、グリーンを見るのが癒しの時間。いまの暮らしを選んで、本当によかったなと思います」
80才になったいま、第二弾の断捨離をする予定だという。
「この年になると、この先のことをいろいろと考えるようになります。まわりにも亡くなるかたがいますし、そのかたがたの遺品を、残された家族がどうしようか頭を悩ます、なんてこともよく聞きますからね。ふと自分のことを考えると、改めて早めに自分のものは自分で処分しておかないとという気持ちになりました。それで、第二弾の整理は、秋になって涼しくなった頃に、また始めようと思っています」
【小さくしたポイント】
●ものの処分は70代と80代の二段階で
●思いついたら、すぐに模様替え
●部屋の大きさに合わせて収納棚は自作
●縁側スペースも上手に活用
●無理して手放さない
教えてくれた人
俳優 山本陽子
1942年東京都生まれ。1963年に日活第7期ニューフェイスとして芸能界入り。『黒革の手帖』(テレビ朝日系)や『白い影』『白い滑走路』(共にTBS系)などのドラマをはじめ、映画に多数出演。現在は、舞台を中心に活躍している。
取材・文/廉屋友美乃 *写真はすべてご本人より提供。
※女性セブン2022年8月4日号
https://josei7.com/
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