食材をやわらかくする基本の調理法・コツ|介護食の基礎知識 見た目もよいやわらか食の作り方
熱いうちに手早くつぶす
いも類や豆類は、加熱するとやわらかくなるが、もっと食べやすくするには、つぶすのがおすすめだ。ただし、冷めると粘りが出てつぶしにくくなるため、熱いうちに手早く行うこと。これを裏ごしすれば、さらになめらかになる。
「里いも、さつまいも、かぼちゃなどは、煮汁などの水分を加えてつぶすだけでも比較的やわらかく仕上がります。しかし、でんぷんの多いじゃがいもをマッシュポテトにする場合、つぶしてすぐに牛乳などの水分を混ぜるとボソボソ感が残ってしまいます。まず生クリームやマヨネーズ、バターなどの油脂を入れてから、牛乳を加えて好みのやわらかさに調整すると、なめらかに仕上がります」
つぶす調理例レシピ
マッシュポテト
<作り方>
【1】じゃがいも2個は皮をむいてゆで、つぶしておく。
【2】生クリーム大さじ1を加えてよく練り、塩少量、練乳小さじ1を加えてなめらかにする。
咀嚼・嚥下をスムーズにする4つの調理法
食べ物を、喉から食道へとスムーズに移動させるには、口の中で唾液とからめてまとめ、塊にする必要がある。その助けとなる調理法4種類を紹介します。
とろみをつける
咀嚼機能が低下すると、口の中で食べ物と唾液が一緒にうまくまとまらず、バラけてしまう。
「ご飯の場合は、あんかけチャーハンにしたり、半熟卵のオムライスにすると、“とろみ”と混ぜながら食べられるので、口の中でまとまりやすくなります。また、水溶き片栗粉でとろみをつけた場合、時間がたつととろみがなくなってしまうので、冷ましてから食べるものや作りおき料理には、市販のとろみ剤を使いましょう。
おくらやモロヘイヤなど、ぬめりのある野菜を活用するのもおすすめです」
つるんとさせる
「ゼラチンや寒天を使って固めたゼリーやムース、プリンなどのデザートは、舌で押しつぶせるほどやわらかく、つるんと飲み込めて喉ごしがいいのでおすすめです。口の中に残ったものも一緒にまとめて喉を通過するので、食事の最後に食べれば、掃除の役割も果たしてくれます」
ただし、硬い寒天ゼリーは口の中で溶けにくく、つぶすとバラバラになって飲み込みにくいので注意が必要。こんにゃくゼリーも噛みにくく、喉に詰まる危険性があるので、なるべく控えること。
豆腐やパン粉などのつなぎを入れる
ひき肉は加熱すると硬くなるので、ふわふわに仕上げるためには、豆腐や卵、パン粉などの“つなぎ”を加えるのがおすすめだ。
「ひじき煮は、口の中でパラパラしてまとまりにくいですが、つぶした里いもと和えると、独特の粘りでまとまり、飲み込みやすくなります。
白和えの豆腐、ごま和えの練りごま、おろし和えの大根おろし、ヨーグルト和えのヨーグルトも、食材を食べやすくまとめるための“つなぎ”。これらを活用すれば、食べられる食材が増えるはずです」(江頭さん)
油脂を使ってなめらかにする
水分がある食材に少量の油を加えると、乳化してなめらかになり、飲み込みやすくなる。
例えば、じゃがバター。じゃがいもは、蒸してつぶしただけだと、水分を含んではいるもののポロポロして飲み込みにくい。あわてて食べるとむせやすいが、溶けたバターを混ぜると、なめらかで口当たりがよくなり、飲み込みやすくなる。
「市販のごまドレッシングを活用すると、油脂だけでなく、とろみも加わり一石二鳥。また、刺身にオリーブ油をかけたカルパッチョは、なめらかな口当たりになります」(リハビリ専門医 藤谷順子さん)
誤嚥性肺炎を予防する4つのトレーニング
飲み込む力が低下すると心配な誤嚥性肺炎の予防には、次の4つのトレーニングが有効と藤谷さん。
1.膝を立てて仰向けになり、息を吐く時に腹をひっこめ、吸う時に膨らませる。3~5回を1セットに数回行う。
2.いすに浅く腰掛けて背もたれに寄りかかり、反動をつけずに腹筋の力だけで上体を起こす。1日に5~10回行う。
3.1回につき15秒、「あ~」と大きな声を出し続ける。
4.背中を伸ばして腹筋をひっこめ、10回連続で咳をする。
飲み込む力に不安を感じたら試してみて。
まとめ
加齢に伴い、噛む力、飲み込む力が衰えいくことは起こりがちだが、食べる喜びや幸せはいつまでもなくしたくないもの。調理法を工夫することで、食べやすい食事をいつまで楽しめる。また、日頃から食べる力をつけるトレーニングも心がけたい。
教えてくれた人
摂食・嚥下アドバイザー 江頭文江さん、リハビリ専門医 藤谷順子さん
撮影/菅原拓 料理/江頭文江
※女性セブン2018年8月9日号
【関連記事】