話題の古米や古古米「やわらかく仕上げて介護食にアレンジ」おいしく食べる方法&炊き方のコツ7選【管理栄養士提案】【管理栄養士提案】
備蓄米が放出され古米の味が話題になっている。「米は収穫から時間が経つと水分料が減り、風味も変化しますが、炊き方やアレンジ方法によって古米でもおいしく食べられます」と管理栄養士で高齢者の栄養相談も実施している管理栄養士の川鍋仁美さん。古米の上手な炊き方や高齢者におすすめのアレンジレシピを教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
備蓄米=古米の味はどうなの?
米の価格高騰が何かと話題になっています。スーパーの販売コーナーはいまだに品薄の日もあり、海外産の米も見かけるようになりました。
5月末からは政府が随意契約によって直接販売店に売り渡した「備蓄米」が店頭に並び始めています。残念ながら筆者がよく行くスーパーでは出会えたことがないのですが、すでに入手して食べてみたかたもいらっしゃるかもしれません。
備蓄米とは、米不足に備えて政府が倉庫に保管しているもの。収穫から1年以上経ったものは「古米(こまい)」、2年以上は「古古米(ここまい)」、3年以上は「古古古米(こここまい)」と呼ばれています。現在政府から放出されている備蓄米は、古古米と古古古米とされ、その味についても話題になっています。
古米のデメリット「水分量が減る」
備蓄米はその年に出回る米と比べると「おいしくない」「パサパサしている」という意見も聞かれます。また、安全性に関して懸念している意見もあるようですが、国が品質管理を行ったうえで安全に流通している米なので、いたずらに怖がる必要はないでしょう。
一般的に、古米は新米に比べると水分量が少なく、粘り気も少ないため、味や食感が落ちてしまうことは確かです。そのため、ちょっとした工夫やアレンジによって味や風味をUPさせるのがいいでしょう。
お粥やリゾットのようにやわらかく仕上げれば介護食にも活用できますし、古米のデメリットもカバーできます。そんな話題の備蓄米をおいしく炊く方法や、高齢者にも食べやすいアレンジレシピをご紹介します。
古米をおいしく食べる方法7選
米の鮮度は水分量に比例しています。古い米は新米に比べて水分量が少なく、普通に炊くと固くパサついた感じがするものも。研ぎ方、炊き方のポイントは以下の通りです。
【1】優しく力を入れずに研ぐ
水分量が少ない米は割れたり欠けたりしやすいので、研ぐときに力を入れすぎないように注意しましょう。
【2】いつもより浸水時間を長めにする
米のおいしさや粘り気は水分量によります。いつもより30~1時間ほど浸水時間をとってみてください。
【3】冷たい水で米の甘みを引き出す
米は低温から炊くことで沸騰するまでの時間が長くなり、米の甘みが引き出されます。
研いだお米をざるに上げて冷蔵庫で30分ほど冷やし、水を入れて炊飯します。または氷を数個入れて水の温度を下げてから炊飯します。
【4】日本酒やみりんを加えてツヤUP
時間とともに酸素に触れて酸化が進むと、お米の成分であるでんぷんも劣化してしまい独特のぬか臭さがでてきます。米1合あたり大さじ1の日本酒(またはみりん)を入れると、甘みが増してふっくらと炊き上がり、ツヤも出ます。
【5】酢など調味料が絡めてしっとりと
古米は粘り気が少ないので、お酢などの調味料が絡みやすいといえます。酢飯には適しているので、具材を載せてちらし寿司などはいかがでしょう。
【6】油でコーティングしてパラパラ食感に
古米は水分量が少ないのでパラパラとした食感の炒飯などに適しています。炒めるときもほぐれやすいので、チャーハンやピラフにおすすめです。
【7】水分を含ませておかゆやリゾットに
炊いたお米が固い、パサパサしているなと思ったらおかゆやリゾットに。夏場に食欲が落ちやすい高齢のかたや、介護食としても活用できるレシピをご紹介します。
夏野菜の冷やしリゾット
さっぱりとした味わいで夏場におすすめのメニューです。水の替わりに野菜ジュースやトマトジュースを使ってみるのもおすすめです。
<材料>※2人分
・ごはん…お茶わん小2杯
・トマト…小1個
・ズッキーニ…1/3本
・かぼちゃ…1片(30gほど)
・玉ねぎ… 1/4個
・ハム…2枚
・オリーブオイル…小さじ2
・スープの素…1個
・水(または野菜ジュースやトマトジュースでも)…300㏄
・塩・こしょう…少々
<作り方>
【1】トマトは皮を湯剥きして一口大に切る。ズッキーニとかぼちゃは皮を向いて5ミリ角に。玉ねぎはみじん切りに、ハムは1cm角に切る。
【2】鍋にオリーブオイルを入れて火にかけ、玉ねぎを弱火で透き通るまで炒める。ズッキーニ・かぼちゃ・ハムを加えてさらに炒める。
【3】水とスープの素、トマトを加えて約5分煮込み、塩こしょうで味を調える。
【4】粗熱が取れたら、ボウルに入れて冷蔵庫で冷やす。
【5】ご飯をザルに入れて流水でパラパラするまでよく洗う。
【6】ボウルにご飯を入れてご飯を潰さないようにさっくりと混ぜる。
【7】皿に盛りつけ、お好みでバジルやパセリなどを添える。
ポイント 水分が少ない古米はそもそも粘り気は少なめですが、さらにご飯を洗ってしっかり米の粘り気を取ることで、サラッとしたのど越しのよいリゾットに仕上がります。
炊飯器で作るサンラータン風粥
酸っぱくて辛い酸辣湯(サンラータン)。酸味や辛味は口の中をほどよく刺激し、食が進みやすくなります。ただし、嚥下機能が落ちている場合には、酢やラー油などの酸っぱいものや辛いものは、むせる原因にもなるので注意が必要です。このレシピは辛みと酸味を抑えていますが、体調によって調味料の量を調整してくださいね。
<材料> ※2人分
・お米…1/2合
・鶏ガラスープの素…小さじ1
・しょうゆ…小さじ1
・エリンギ…1房
・たけのこ水煮(薄切り穂先)…30g
・溶き卵…1個分
・米酢…少々
・ラー油…少々
・青ねぎ…少々
<作り方>
【1】米は研いでザルにあげておく。
【2】エリンギとたけのこはみじん切りにする。
【3】炊飯器に米を入れ、お粥の分量で水を入れる。
【4】【3】に鶏ガラスープの素、しょうゆ、【2】を加えてよく混ぜ、お粥モードで炊飯する。
【5】炊き上がったら溶き卵を回し入れ、蓋をして3分蒸らす。
【6】米酢とラー油を加えてひと混ぜする。
【7】器に盛り付け、青ねぎを散らして完成。
ポイント 噛む力・飲み込む力に不安がある場合は、エリンギやたけのこを別の素材にしてみましょう。乾燥しいたけをミルサーなどで粉末にしたものや、鶏ささみを細かくほぐして加えてもいいでしょう。
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古米でおいしく夏場の栄養補給に
古米はリゾットやお粥にすることで夏場に不足しやすい水分摂取量も増やすことができます。ご飯だけではたんぱく質やビタミンが不足しがちなので、卵やハム、ささみなどのたんぱく質を多く含む食品や、お好みの野菜を加えて栄養価をアップさせましょう。
せっかく手に入れた備蓄米、古米ならではのアレンジや工夫でおいしく食べて、暑い季節を乗り切ってくださいね。