「昔からこうしていたから大丈夫」と自己流の判断で食中毒に！高齢の親の家に食品を買い置きするときの注意点と選び方「一度開けてしまった食品は期限に関係なく早めに」【管理栄養士解説】

　高齢の親に介護が必要になり買い物に1人で行けない場合、食品の買い置きをすることもあるのではないだろうか。生鮮食品が少なくなると栄養面も心配だ。どんなものを選べばいいのか、高齢者の栄養相談を行っている管理栄養士の川鍋仁美さんに教えていただいた。

教えてくれた人／管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授！いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

食品の保存方法を意識していますか？

　食品には「賞味期限」と「消費期限」があります。賞味期限はその食品をおいしく食べられる期限を表しているのでその時点で食べてはいけないわけではありません。「消費期限」についてはそこまでに消費すべき期限なので、期限を過ぎたら食べてはいけません。

→「消費期限」と「賞味期限」の違いを説明できますか？高齢者は注意したい「宅配弁当の保存法や食べ方」【管理栄養士解説】

　温かくなる季節はとくに食中毒のリスクが高まるため、食品の消費期限や保存方法には注意が必要。食品は表示されている保存方法をしっかり守り、適切に保存することが大切です。

「要冷蔵」の表示がある食品は購入後速やかに冷蔵庫に保存し、一度開けてしまった食品は期限に関係なく早めに食べましょう。

自己流の判断が食中毒を引き起こす

　高齢者のかたに「衛生的に危ないですよ」とお話しても、「昔からこうしていて大丈夫だった」「ずっとこのやり方だったから」と自己流のやり方を続けていることが多いんです。しかし、年齢を重ねると免疫力も低下するので食中毒を引き起こす菌に対する抵抗力も落ちているかもしれません。

　今までは大丈夫だったことでも、ちょっとした油断で食中毒菌が増えた状態のものを口にしてしまうと食中毒を発症してしまいます。

　年齢とともに発症のリスクが上がっていて、重症化しやすいことを改めて本人や家族が理解しておくことが大切です。

高齢者でも食べやすいおすすめの保存食

　買い物になかなか行けないひとり暮らしの高齢者の場合、ヘルパーさんやご家族が訪問するタイミングで、食品の「まとめ買い」をお願いしているケースも多いと思いますが。

　また、同居の家族が働いているので日中はひとりで過ごされる高齢者の場合、お昼ご飯に冷凍食品や即席麺、菓子パンなどを食べているというかたも多いようです。

　スーパーに買い物に行く機会が減ると、生鮮食品を食べる機会が減ります。買い置きする場合、ある程度賞味期限が長く、保存が効くものを選ぶことになります。その際、なるべく栄養価の高いものを選びたいものです。

　保存が効くもので栄養価が高く、かつ賞味期限が長いものには、以下のようなものがあります。常温保存できるので、災害時の備蓄としても役立ちます。

青魚の缶詰

　サバやいわしの缶詰など青魚の缶詰には、DHA・EPAという良質な脂質が豊富に含まれています。缶中の汁にも栄養が含まれているので汁ごと食べることがおすすめです。骨まで柔らかいので高齢者でも食べやすくカルシウムの良い供給源にもなります。

粉末スープのもと

　コーンスープやポタージュなど、食事に手軽に取り入れやすいものを。お湯よりも牛乳で溶くと栄養価が上がります。たんぱく質を強化したスープものもあるので、高齢者はとくにたんぱく質不足を補うめにおすすめです。

乾燥野菜

　乾燥野菜を活用することで野菜不足を補えます。切り干し大根のほか、青菜や人参、れんこん、きのこ類など乾燥野菜は品数も豊富です。

　噛む力が弱ってきているかたは、乾燥野菜をミルサーで粉末状にしてみそ汁など汁物に混ぜると取り入れやすいです。

介護食にも「乾燥野菜のみそ汁」

＜作り方＞
【1】乾燥野菜大さじ1杯程度をミルサーにかけ、粗い粉末状にする。
【2】【1】の粉末にたっぷりのお湯を入れて乾燥を戻し、10分ほどおく。
【3】鍋にだし汁（水でも可）適量を入れて沸かす。
【4】【2】を入れてしばらく煮る。
【5】みそを加えて味を調える。

ポイント
野菜は使う分だけ、ミルサーにかけましょう。乾燥野菜はたっぷりの水分に浸してしっかり戻しましょう。乾燥野菜は十分に戻っていない、かたさが残っていると誤嚥につながる恐れも。飲み込みに心配がある場合は、みそ汁にとろみ剤でとろみをつけて、よく混ぜて食べましょう。

栄養補助食品

　食が細ってきた高齢者や、低栄養状態のときに活用する栄養補助食品。これは、低栄養状態になる前に、栄養不足の予防として摂っておくのもおすすめです。

　昼食がパンだけ、麺類だけになってしまう場合などにも、高栄養のドリンクやゼリーなどを活用すると手軽に栄養を補うことができます。

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　高齢者のかたにとっては、食品表示を細かく確認して食品を管理することはなかなか難しいこと。介護するご家族は、賞味期限が長い食品を上手に利用しながら、安全でおいしい食事環境を整えるサポートをして欲しいと思います。