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食が細ってきた高齢者の食事&調理法「少ない量でも効率よく栄養を摂るための5つのポイント【管理栄養士解説】

「昔はいくらでも食べられたのに、一度の食事で食べられる量が減ってきた」と感じているシニア世代も多いのではないだろうか。「食が細ってきたかたには、少量でも効率よく栄養が摂れる食事を心がけてほしいですね」と、高齢者の栄養相談・指導などを行っている管理栄養士の川鍋仁美さん。そのポイントをご紹介する。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

食事量が減った、たくさん食べられない問題

 年齢を重ねるにつれ「食が細くなってきた」と感じている高齢者のかたも多いのではないでしょうか。

 高齢者のかたの栄養相談を伺っていると、自分では体調に大きな変化を感じていないのに、「少しずつ食事量が減少していて、体重が落ちていた」というかたもいらっしゃいます。とくに病気ではないのに食事の量が以前より食べられなくなるということは、老化現象のひとつとして誰にでも起こることです。

 しかし高齢者の場合、体重が一度減少し始めるとなかなか元の体重に戻すことが難しいケースがあります。

 高齢になり活動量が低下することで筋肉量が減少し、体重が減ってしまうこともあります。また食が細ってたくさん食べられなくなることで栄養の摂取自体が少なくなってしまう「低栄養」のリスクも心配です。

 そこで食が細くなってきている高齢者におすすめの「少ない量でもしっかり栄養を摂れる」食事や調理のポイントをご紹介します。

【1】食事は基本「1日3度」

 高齢者の食事は、栄養面から考えると1日3回の食事が基本です。とくに病気や治療で食事制限などがない場合には、「朝昼晩の3食」を摂っていただきたいです。

 高齢になると、1日3度の食事作りが億劫だというかたもいらっしゃるかもしれませんが、食事の回数が減ってしまうとその分、栄養量も不足してしまいます。

 朝食は抜いても「昼と夜はしっかり食べているから大丈夫」と思うかもしれませんが、1日に必要な栄養を2食で摂るには、1食あたりたくさんの量を食べなければならないので、食が細ってきた高齢者にとってなかなか難しいでしょう。

【2】1回の量を減らして小分けにして食べる

 食事量が落ちてきている場合は、1回の食事量を減らしてもいいので、「食事の回数を増やす」「おやつをプラスする」のがおすすめです。

 食べられないものを無理に頑張って食べようとすると精神的にも負担が大きくなるので、ご飯などにこだわらず、ヨーグルトやチーズ、フルーツ、カステラ、プリンなど間食を増やしてみてもよいでしょう。市販の栄養補助食品を活用するのも手軽でおすすめです。

 食が細くなってきている高齢者こそ、少量でもよいので最低1日3食プラス間食を意識したいもの。食事の回数は維持して欲しいと思います。

【3】少量でも栄養価の高い食材を選ぶ

 高齢者が取り入れやすく少量でも栄養価の高い食材といえば、乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズなど)、卵、大豆製品(豆腐、豆乳など)などがあげられます。

 さつまいも・かぼちゃなどの芋類もエネルギー量が高く主食のかわりにもなる食材です。

 アボカドやバナナなども比較的多くの栄養素を含んでいて、高カロリーな食材です。単品でも取り入れやすいので間食にもおすすめです。

【4】食べ方の工夫で栄養量をアップ

 健康のことを考えて揚げ物など「油」を多く含む食事を控えているという高齢者も結構いらっしゃいますが、油は大切な栄養素なので減らしすぎは危険。

 食事から摂取した脂質は、私たちの身体の中でエネルギー源として使われ、細胞膜やホルモンの材料としても使われるほか、脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割も担っています。

 また、ご高齢のかたの栄養相談でお話を伺うと、便秘に悩んでいるケースも多いのですが、油を摂ることで便をスムーズに排出することに繋がります。

 少ない量で効率よく食事をエネルギーに変えられるため、食が細くなってきたかたの栄養量アップに「油」は欠かせません。

 なお、油には加熱に弱いもの、加熱に強いものがあります。

 加熱に弱い亜麻仁油やMCTオイルなどは、ヨーグルトやコーヒー、お椀のみそ汁に1さじ程度かけて食べるなど「加熱せずに」摂る工夫を。

 加熱に強いサラダ油やオリーブ油などは、炒め料理や揚げ物として取り入れてほしいです。

 高齢になると蒸し料理や茹で料理などさっぱりした味のものを好むかたもいらっしゃいますが、油の量や質を意識しながら油を取り入れて欲しいですね。蒸し料理のつけダレのポン酢にごま油を少量加えるなど、ちょっとしたことで油をプラスすることができます。

 うどんやそばなどの麺類に「揚げ玉」を加えるだけでも栄養価はあがります。

【5】ご飯が進む「ちょい足し」食材を取り入れる

 ご飯やお粥に、ふりかけや鮭フレーク、肉そぼろ、しらす干しなどプラスすることで栄養価がUPします。ごはんもすすみやすくなるので一石二鳥です。

【栄養満点 自家製ふりかけ】


<材料>
・干しエビ…20g
・乾燥わかめ…20g
・煮干し(干しえびでも可)… 20g
・ごま…大さじ1
・かつお節…1つまみ

<作り方>
 材料をフライパンに入れて5分ほど炒る(香りがたってくるまで)。ミキサー(なければすり鉢でも)で攪拌する。

 食欲が落ちてしまっているときに、不足しがちなカルシウムなどのミネラルを補うことができます。ミネラル分が不足してしまうと味覚障害を引き起こし、食欲減退につながることも。

***

 食事の量は、活動量や健康状態によって個人差が大きいため、一概に決めることはできませんが、以前より明らかに食事量が減っている場合は、医師や管理栄養士に相談し、低栄養を防ぐ必要があります。

 少ない量でもしっかり栄養が摂れるように、日々の食事を見直してみましょう。

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