中高年はやせ型よりぽっちゃりに見える方が健康!OVER60の健康新常識7選
人生100年時代を迎える中、加齢とともに筋肉が減少し、つまずいたり、転倒しやすくなるなど生活に支障が出る人も多い。健康長寿で過ごすためには、若いうちから正しい運動習慣を身につけ、筋肉量を落とさないことが大切だ。だたし、昔の常識は今の非常識ということもある。間違った運動で怪我をしないためにも、パーソナルトレーナーの澤木一貴さんに最新の運動習慣を解説してもらった。
教えてくれた人
澤木一貴さん/パーソナルトレーナー。「SAWAKI GYM」代表。リハビリ患者からトップアスリートまで、医学的根拠に基づいた指導を行う。『4週間で姿勢がよくなる!スタスタ歩ける! 長寿の体幹トレーニング』(大和書房)ほか著書多数
年を重ねたらぽっちゃりに見える方が健康って本当?
「年を取って何もしないでいると、食欲や活動量が落ちて一見やせたように見えますが、健康診断に行くと骨も筋肉もスカスカ、というかたが多い。中高年になったら、ぽっちゃり見える方が、明らかに健康です。BMI(※1)の基準値は18.5~25ですが、25以上で健康な人も多い。内臓脂肪や体脂肪が基準値前後であれば、体重を落とす必要はありませんが、筋肉は落とさないよう、筋トレは必要です。『筋トレを続けているのに、体組成計の筋肉量が全然増えない』と相談されることがありますが、体組成計は電気抵抗値を基に推定していて正確な変化が出づらい。気にせず続けてください」(澤木さん・以下同)
(※1)BMIとは世界共通の肥満度の指標で、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出され、肥満や低体重の判定に用いられる。
60才から覚えておきたい運動習慣の新常識7選
【運動習慣の新常識1】運動で脂肪を筋肉にすることはできない
「脂肪と筋肉は別物です。運動すると脂肪の割合が減り、筋肉の割合が増えますが、これは脂肪が筋肉に変換したわけではありません。健康づくりの観点でいえば、脂肪が多い人は食事などで脂肪を落とし、運動で筋肉をつける。これを同時並行で行うことが大切。ちなみに、通常だと内臓脂肪が落ちてから皮下脂肪が落ちるので、ぽっこりお腹はいちばん凹ませやすい部分です。一方、女性がつきやすい太ももやお尻はなかなか落ちづらいのが現実です。でも、規則正しい食事と運動で、効率的にやせることは可能になります」
【運動習慣の新常識2】60代でも筋トレでムキムキになれる
「若い人のような筋肉をつけることは無理ですが、ムキムキを目指すことはできます。ただ、筋肉サイズが大きくなるのに3か月はかかります。マシンを使う場合、好きなマシンばかりをやる傾向がありますが、それでは姿勢やバランスを崩しがち。『全面性の原則』といって、腹筋をしたら背筋、上半身をやったら下半身と、全身まんべんなく鍛えることが大切です」
【運動習慣の新常識3】運動を始めて20分経たないと脂肪は燃焼しない?
「厳密に言えば、運動を始めた直後でも微量ながら脂肪は燃焼しています。運動をすると糖質と脂肪が燃焼されるのですが、最初は糖質の燃焼が多く、20分後くらいに脂肪の燃焼量が逆転。燃焼量が多くなる転換点という意味では間違いではありません。人間は生きているだけで日々エネルギーを消費しますが、加齢とともに代謝が落ちるので、活動量を増やすことをおすすめします」
【運動習慣の新常識4】60才を過ぎてからの体重減少は筋力低下かも
「筋肉を維持しながら脂肪が落ちていればいいのですが、この場合は、やせたのではなく、筋肉が落ちただけという可能性が高い。60才を過ぎると、筋肉は加速度的に減り、特に手足やお尻が衰えます。『うれしい!』と喜ぶ前に下肢の筋トレをしないと、将来寝たきりやO脚化が進み、変形性膝関節症になることも」
【運動習慣の新常識5】中高年でやるべき筋トレは?
「何より生きるためにスクワットは必要です。重力に対してちゃんと立つための『抗重力筋』の中の大殿筋(お尻)、大腿四頭筋(前もも)、腓腹筋(ふくらはぎ)を鍛えられます。スクワットは数十種類あるのですが、背筋を伸ばし、お尻を引くイメージで腰を落とすのが基本です」
【運動習慣の新常識6】1日2万歩歩くこともあるほど健脚だ
「1時間以上の運動を続けると筋肉の分解が始まり、筋力や筋肉量が落ちるリスクが出てきます。特に加齢で筋力が低下し始める60代は、成人の目標値である8000歩が適正です。筋肉を落とさずに長く歩きたいなら、食事でたんぱく質を多めに摂るか、前後にスクワットなどの筋トレを。筋トレには、筋肉を保存する効果もあります」
【運動習慣の新常識7】体の柔軟性には自信がある
「高齢なのに驚くほど体が柔らかい人がたまにいますが、柔軟体操などで体が柔らかくなった人や、ふくよかな人を除き、やせすぎで姿勢が崩れている場合は、筋肉が少なすぎて関節がゆるみ、意図せず可動域が広がっている可能性大。筋力をつけないと歩行困難になる恐れがあります」
取材・文/佐藤有栄 イラスト/鈴木みゆき、しまだなな 写真/PIXTA
※女性セブン2024年6月6日号
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