「母の膵炎の原因はストレス?」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第22話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんの母は慢性膵炎。膵臓に石が詰まってしまう原因不明の病で、1回目の手術を終えた母と娘の日常生活が再開した。病を抱える母と母を想う娘の気持ちは微妙にすれ違っていて――。
うちのケンカ
「原因不明で完治せず膵がんのリスクもあるけど予防策はない」
そんな病気になってしまった母の状況にもやもやする私と、状況が何もわかってない(わかろうとしない)高齢の母。「仲がいいね」と言われますがもちろん衝突はしますし、時には派手なケンカもします。。。
母とのがっつりふたり暮らしが始まったのは2013年の夏。
栄養士の資格を取るため短大に通い始めた46才の時のことでした。それまでは近くのアパートでひとり暮らしをしていましたが、仕事と学業の両立がハードすぎ、母と同居していた弟一家が隣に家を建てたタイミングで実家に戻りました(その頃からブログやSNSに「母ネタ」で4コマなどを描くようになりました)。
我が家のケンカはおおむね同じパターンで
1.母が何かトンチンカンなことを言う(する)
2.私が「だからそれは」と説明(または修正)しようとする
3.母が私の話を聞かず勝手に悩んだり言い訳し始める
4.私がキレる
5.母がしぼむ
傍から見ると、「鬼のような娘が一方的に母を怒鳴りつけるの図」なので、母のお友達界隈では「恐ろしいのぶちゃん」で有名です。
それはそれで悲しいのですが、母が一度目の手術を終えてから私を悩ませる疑惑がひとつ生まれました。
「もしかして私とのケンカがストレスになって膵臓に石ができるのでは?」
だって世の中の様々な病気の原因に「ストレス」という文字が必ずと言っていいほど書いてあるじゃないですか。
そう思ったら小さなケンカをするたび不安になり、それでまた自分を責めたりして、、、とうとうある日母に聞きました。
「私が家を出て行った方がお母さん気が楽になるんじゃない?」
「そんな事ないよ」と言うと思ったら、、、まさかの
「それはあるかもしれん」との返事。
え?そうなの?そう思ってたの?????
その時の気持ちはショックとか悲しいではなく、「なんだ、やっぱりそうだったんだ」と。
ある意味気が楽になったような、そんな感じでした。
この病気になるまでの母と私のスタンスは、「お互いを干渉しない」でした。同じ家に住んでるけどそれぞれ自立した個人で、お金も含めて「自分のことは自分でする」または「その時できる方がする」というルールで暮らしていました。
それが母の発病によって突然生活のペースが変わり、母の都合に私が合わせる、「母の介護をしている」かのような生活になっていたのです。
私は病気の対応に夢中になっていたけど、今の状況ならお母さんひとりで暮らせるし、弟達も隣にいるし、私が近くにまたアパートでも借りればいいんじゃないの?
母が負担なわけじゃないんです。逆に母がいないと困るわけでもないんです。本当に「どっちでもいい」と思っていたので、母が私を負担に思っているなら安心して(?)家を出られると思いました。
――そして翌日。
神妙な顔の母。
「あのね、一晩考えたんだけどね、あんたがあまり怒らんでくれたら、ふたりで暮らした方が楽しいんじゃないかと思うんよ」
私も神妙な顔で返しました。
「あのね、私とお母さんは母娘だけど、暮らし方としては『夫婦』だと思うんよ。他人の大人同士がケンカしながら、でも一緒に暮らすんよ。私は経験ないけど結婚ってそういうものやろ?」
神妙な顔のまま、母が言いました。
「わかった」
この時から母娘でありながら夫婦のような関係性は今もずっと続いていて、母と私はいい感じの距離で同じ家に暮らしています。私が怒るのは相変わらずですが、母はあまりしぼまなくなりました。
母の主治医の先生にこの話をしたら、ふふっと笑いながら「お母さんの病気に、ストレスは関係ないですよ」と言われました。
さて、そんなこんなで過ごしていたら――2回目の手術「膵臓の石を取る」日がやってきます。
NO老いるMemo「同じようでも結構違う」
膵臓を労わる食生活を続けている母の食事は、脂質控えめの食材を選ぶこと。ポイントは、「同じようでも結構違う」。
私と母の話、、ではなく、この時期美味しい「豆」の話。
「えんどう豆」と「えだ豆」、同じようなさや入りの豆ですが脂質は結構違います。
えんどう豆は、豆ごはんに使うグリンピース、脂質が低い食材なんです。
一方、えだ豆は、未成熟な「大豆」で、大豆は油がとれるくらい脂質の多い豆です。
なので以前「豆腐」の話でも書きましたが、「豆腐」「豆乳」「納豆」など大豆製品は意外と脂質が多いんです。
→「豆腐はヘルシーだからNOオイル?」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~ 第10回
ちなみに母の好物は豆ごはん、私はビールのお供にえだ豆、、、食べ過ぎには注意ですね。
――次回は5月22日公開予定です。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。57才。山口県で81才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
●【新連載】NO老いるLIFE ~母と娘のほんわか口福日誌~ 第1回「母の膵臓が!救急搬送の夜」