認知症で要介護4の母がトイレの便座を汚してしまう!困った息子がたどりついた悩みの解決法
作家でブロガーの工藤広伸さんは認知症の母を遠距離介護している。要介護4の母はトイレの介助はまだ必要ないのだが、母が使った後にちょっと困ったことが起きているという。「便座の不思議な場所が汚れている」という長年の悩みは、解決できるのだろうか?
認知症介護にはさまざまな悩みがある
認知症介護をしている人の多くは、次のような悩みを抱えています。
・同じ話を何度も繰り返す
・モノを盗ったと思い込んだり、盗んだと勘違いされたりする
・ひとり歩きや、外出中に行方がわからなくなる
こうした悩みは、介護の本やネット記事などに対処法が書いてあるので、根本的な解決には至らなくても、参考にはなります。
しかし、いくら調べても見つからない、解決できない介護の悩みもあります。わたしが長年抱えていたある悩みを、思い切って自分の介護ブログ『40歳からの遠距離介護』の記事で発信したところ、予想外の展開になったのです。
洋式トイレの便座「なぜこの部分が汚れるのか?」
わたしが長年抱えている介護の悩みとは、母のトイレの使い方です。
洋式トイレの便座の手前に、なぜか便が付いているのです。母がどういう動きをしたら、この場所に便が付くのか? 全く理由が分かりません。
わたしがトイレを使う際は、必ず便座の状態を確認します。もし汚れていたら、トイレ用掃除シートで拭き取ってから使うようにしていますが、普通はやる必要のない確認なのでなかなか面倒です。
認知症の症状なのか? それとも手足の筋委縮の影響か? 理由は分かりませんが、ブログの記事として全国に発信する以上、何かしらの仮説を立てないと、読者の皆さんから解決のヒントをもらえないと思い、次のように考えてみました。
母が便座を汚してしまう理由を考える
理由は、「母は温水洗浄便座の使い方を、忘れてしまったのでは?」と思いました。実家のトイレには「おしりをあらうボタン」と書いた貼り紙がありますが、見ていないか理解できていないのかもしれません。
もう1つの理由として、「トイレットペーパーでお尻を拭くこと自体を忘れているのでは?」とも思いました。リハビリパンツを捨てる際に、便の状態を確認することがあるのですが、明らかにお尻を拭いていないと分かる日もあったので、これが理由ではないかと。
ただ、温水洗浄便座を使っている音が聞こえることもありますし、トイレットペーパーもきちんと減っているので、たまに忘れてしまうのかもしれません。
また、足腰の不自由さも、影響しているのかもしれません。
実家のトイレは手すりがなく狭いので、壁が手すり代わりになります。母は壁に手を付き、便座の前に体をスライドさせてから、立ち上がるのではないかと考えました。お尻をちゃんと拭かないままスライドするから、便座の手前が汚れてしまうのではないかと。
しかし、便座の横や、トイレットペーパーホルダーに便が付いていた日もあって、この仮説だけでは十分ではないようです。
認知症の症状に弄便(ろうべん)があり、オムツの中の違和感から、便を直接触る人もいます。亡くなった認知症の祖母もその症状があったので、ひょっとすると母も軽めの弄便があるのかもしれません。
もし母の弄便が始まっていたら、便座の掃除だけでは足りません。母が便を触った手で触れそうな場所、例えばトイレの水を流すハンドルや扉のドアノブ、居間までの廊下の壁、そして母の指まで消毒が必要です。
この話はわが家だけの悩みであり、ブログで記事を書いてもコメントはつかないだろうと思っていました。
ところが、いくつかのコメントが寄せられ、同じ悩みを抱える介護者が全国にいると分かったのです。頂いたコメントから、別の理由の可能性も出てきました。
ブログの読者さんからコメントが続々と…
1つ目のコメントは、認知症の夫がお尻を拭かないまま、自分の便の状態を確認するから、トイレの床に便が落ちると書いてありました。確かに、自分の便の状態を見ることはあるので、母も同じかもしれません。
2つ目は、少量のトイレットペーパーでお尻を拭くから、指に便がついてしまうというコメントを複数頂きました。紙の節約のためかもしれませんし、適切な紙の量が分からないのかもしれません。折り紙のように、小さく折り畳んで使うというかたもいました。
3つ目は、トイレの洗浄水や尿が便座に飛び散った際に、便が付いたトイレットペーパーで拭いているのかもというコメントでした。
ちなみに、わたしの立てた仮説と同じ動きをしているかたもいました。
寄せられたコメントにはたくさんの気づきがありましたが、便座の汚れの謎はまだ解けてはいません。
介護の悩みはみんなで共有したほうがいい
最初に便座の汚れを見たときは本当に驚きましたが、何度も処理しているうちに慣れてしまい、今ではそれほどストレスを感じていません。
母はまだ、トイレの自立を保てています。介助のために、一緒にトイレに入る段階ではないので、しばらくは便が付着していたらビニールの手袋をして、トイレ用掃除シートで拭き取るしかないと思っています。
トイレ介助が必要な段階が来たら、こうした悩みは消え、新たな悩みが出てくるような気がします。
自分だけかもしれないと思っている介護の悩みも、実は全国のどこかに同じ悩みを抱えている介護者がいるかもしれません。ひとりで抱えずに、ネットや介護のつどいなどで悩みを共有してみることをおすすめします。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442。
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