連載

認知症の母が汚れた下着を布団の下に隠してしまう!困った息子が寝室のDIYに挑戦した理由

 作家でブロガーの工藤広伸さんは、認知症の母を遠距離介護して11年目。母の認知症が進行し、失禁問題に悩まされてきた。リハビリパンツやポータブルトイレなど、さまざまな対策をしてきたが、なかなか解決しない問題があり、母の寝室のDIYを検討することに。母の寝室はどう変わったのか?

認知症の人が下着やオムツを隠す理由

 認知症の人が尿や便で汚れた下着やオムツなどを、タンスや押し入れの中などに隠すケースがあります。おそらく下着を汚してしまって恥ずかしいという気持ちが強く、何とかしようと自分の見えないところに片づけて、そのまま忘れてしまうのだと思います。

 介護家族は、思いもよらない場所から汚れた下着が出てきて驚きますし、ニオイで気づく場合もあります。認知症の人に汚れた下着は洗濯かごに入れて欲しい、オムツはゴミとして捨てて欲しいと何度も注意しますが、忘れてしまうので効果は長続きしません。

 母も汚れた下着を隠すので、様々な対策を行ってきました。これまでどんな対策を行ってきたのか、そして今回新しく行った対策とは?

汚れた下着の対策の経緯

 母はタンスの中や机の下、こたつの中や布団の下などに、汚れた下着を隠します。わたしも最初は驚いて、「何でこんなところに隠すの!」と注意していた時期もありました。

 母は、「知らないわよ、誰かが持ってきたのよ」と言ってみたり、「あらら、何やっているのかしらね」と自分の非を認めてみたりと、反応は様々でした。

 口頭で注意しても改善しないので、まずは、ポータブルトイレを設置してみました。母が寝る布団の真横に設置したところ、トイレを使ってくれるようになり、下着を汚す回数も隠す回数も減ったのです。

 次は、布製の下着ではなく紙製のリハビリパンツ(以下、リハパン)を常にはいてもらうようにしました。それまでは夜間の失禁が中心でしたが、日中の失禁も増えてきたので、リハパンに替えたのです。

 紙製のリハパンは、洗濯の必要はありません。ゴミとして廃棄してくれると思っていたら、母の扱いは布製の下着と全く同じでした。リハパンを洗濯機で洗濯してしまい、洗濯槽の中が吸水ポリマーだらけになってしまったのです。

 また日中に汚したリハパンはタンスの中に隠し、夜間にポータブルトイレに間に合わずに汚してしまったリハパンは、布団の下に敷いてあるマットレスの下に隠すようになってしまいました。

→認知症の母の「失禁問題」が99%解決した!息子がポータブルトイレに施した工夫

寝室の畳にできたたくさんのシミ

 わが家では母の転倒リスクを考え、介護ベッドではなく、布団で寝てもらっています。毎朝、わたしやヘルパーさんが布団やマットレスを上げるのですが、そこから汚れたリハパンが出てきます。

 リハパンはパッドが尿を吸収してくれるので、布製の下着ほど濡れません。ただ尿を吸収したリハパンに母の体重が長時間かかるので、マットレスや畳に若干シミができてしまいます。

 またリハパンに替える前から、尿で汚れた下着をマットレスの下に隠す習慣があったので、寝室の畳はすでにシミだらけでした。このシミが頑固で落ちず、ニオイも気になります。

 畳はクエン酸スプレーを噴射したあと、ドライヤーで乾かして消臭し、マットレスは消臭スプレーを使って対応してきました。シミやニオイは幾分消えましたが、完全には消えないし、新しい小さなシミが増え続けていたので、新たな対策を実行することにしました。

→認知症の母が尿で濡れた下着を布団の下に隠してしまう!困った息子が実践する消臭対策

寝室の床材をDIYで変更

 母の寝室を、畳からクッションフロアへDIYで変更しました。トイレや台所などでよく使われるクッションフロアは塩化ビニル製なので、拭き取るだけで汚れが取れて掃除がラクになります。

 本来なら畳を外したあと、クッションフロアに貼り替えます。畳の上からクッションフロアを貼ると、畳がカビだらけになってしまうためです。しかし、寝室の畳はすでに尿でできたシミだらけ。

 畳の交換が必要と思うくらい汚れていたので、わたしの判断で畳の上からクッションフロアを貼ることにしました。本当かどうかは分かりませんが、わたしが調べたサイトでは防カビシートを貼れば、カビは発生しないとのこと。

 早速貼り替えに必要な道具を、インターネットや100円ショップで買い揃えるところから始めました。

クッションフロア工事の手順

 ホッチキスのようなタッカーを使って、防カビシートを畳の上に固定したあと、その上にクッションフロアを敷き、両面テープで止め、クッションフロア専用カッターで余った部分をカットして、DIYは終了です。かかった時間は約90分、費用は1万7105円でした。

 クッションフロアに交換したあと、早速汚れたリハパンがマットレスの下から見つかりました。小さなシミができていましたが、クッションフロアなのでサッと水拭きして、シミはキレイに取れました。掃除の時間が大幅に短縮され、本当によかったと思っています。

クッションフロア

 クッションフロアは滑りづらく衝撃を吸収するので、転倒しても骨折のリスクを減らせます。元々寝室は畳だったので転倒しても心配なかったのですが、今後転倒リスクの高い場所には、このクッションフロアを貼るつもりでいます。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

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