50才から注意!足の老化チェック 1日5分「アキレス腱伸ばし」で一生歩ける足を
50才を過ぎた女性は足に不調が出やすく、まして外出自粛で足の老化が進んでいるかもしれない。一生自分の足で歩くために必要なのが「アキレス腱を伸ばす」ことだと足の専門医は解説する。まずは「足の健康」度チェックリストに挑戦してほしい。1つでも該当する人は要注意かもしれない。
【目次】
■「足の健康」度チェックリスト
ふだん何気なく行っている生活習慣が、実は足の老化を早めているかも…。
□同じ姿勢で長時間座りっぱなしでいることが多い。
□立ち仕事などで立っている時間が長い。
□肥満である。
□運動をする習慣がない。日常的に歩かない。
□風呂は湯船につからず、シャワーですませることが多い。
□補正下着など体を締めつける衣服をよく着用している。
□足がよくむくむ。時々かゆい。こむら返りがよく起こる。
□手足に冷えを感じる。冷え症である。
□ハイヒールなど、かかとの高い靴をよく履く。
□妊娠・出産を経験している。
※1つでもチェックがついた人は、足のトラブルが起きる可能性大!
参考文献/長崎和仁著『足の先生! 足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください。』(アスコム)
50才を過ぎると足に不調が出やすい
「ただでさえ、筋肉量が少ない女性は50才を過ぎると足に不調が出やすくなるのに、外出自粛による運動不足で、足の老化が加速傾向にあるようです」
こう語るのは、足の総合病院”下北沢病院副院長の長﨑和仁さんは語る。
若い頃に履けた靴を、久しぶりに試したらきつくて履けなかった──なんてことはありませんか? これは足が変形した証拠、と長﨑さん。
「足は長年、重い体を支え続けてきたわけですから、筋肉が落ちれば骨に負担がかかり劣化しやすくなりますし、腱や靭帯も伸びるので、足の形が変わってしまうのです」(長﨑さん・以下同)
男性と比べて足の筋肉量が少ない女性は、50才を過ぎたあたりから、土踏まずがなくなるなどして足の形が変わり、それを原因としたさまざまな不調が表れ始めるという。女性にとって50代はまさに“足の曲がり角”なのだ。
アキレス腱の柔らかさこそ健康長寿の要に!
しかし、ある部分に柔軟性を持たせると、足の変形が抑えられるという。
「その部分とは、ふくらはぎとかかとの骨をつなぐ15cmほどの腱“アキレス腱”です。年齢に関係なく、大きな歩幅でしっかりと地面を蹴って歩ける人のアキレス腱は柔軟性が高いんです」
では、アキレス腱が硬いとどんな問題があるのか?
「主に2つあります。1つは、足裏のアーチ(土踏まず)に大きな負荷がかかること。アキレス腱が硬いと歩くときにすねの骨がしっかり倒れない。すると、地面からの衝撃がすべて足裏のアーチにかかるわけです」
女性の1日の平均歩数は約6000歩。つまり、しっかりすねの骨を倒して歩けないと、片足だけで1日約3000回も足裏が地面からの衝撃を受けることになる。これが繰り返されると、偏平足や足底腱膜炎、外反母趾などの病気を引き起こし、ひざの関節にもダメージを与えるという。
■足の健康の要となる3大アーチとは?
1.外側の縦アーチ…かかとと小指のつけ根を結んだアーチ。このアーチが平たくなると、左右のバランスが悪くなり、かかとが外側に倒れやすくなる。
2.内側の縦アーチ…かかとと親指のつけ根を結ぶアーチ。足の筋力が落ちて、かかとが内側に倒れると、この部分に負担がかかり、土踏まずが平たい“偏平足”になる。
3.横アーチ…5本の指のつけ根を結ぶアーチ。この部分のアーチが平たくなると、横幅が広い“開帳足”になる。歩くたびに、人さし指や中指のつけ根に痛みが走り、タコやマメができやすくなる。
■足裏のアーチの変形例
【理想的なアーチ】
足裏にアーチがあると、足が地面についたときの衝撃を吸収してくれるうえ、足指で地面を押し出す力を高めてくれるので長時間歩ける。
【偏平足】
足裏のアーチがなくなり、平らになると、足を強く蹴り出すことができず、足全体の負担が増す。少し歩いただけでも、疲れやすくなる。
【ハイアーチ】
足裏のアーチのしなりが大きすぎると、足が地面についたときの衝撃が指のつけ根やかかとに直接かかるため、痛みを感じやすくなる。
【隠れ偏平足】
一見すると足裏にアーチがあるように見えるが、それは後ろの部分だけで、前の部分のアーチが平たくなっている。これも偏平足といえる。
「そして、もう1つの問題が、足の血流の低下。アキレス腱が硬いと、ここと直結しているふくらはぎの筋肉もしっかり使われず、足の血液を押し上げられなくなります。すると、冷えやむくみ、下肢静脈瘤などが起こりやすくなるのです」
しかし、アキレス腱は何才からでも柔軟にできるという。そのための方法が「アキレス腱伸ばし」だ。
「ただ伸ばすだけの簡単なエクササイズですが、足の若さを保って痛みの発生を防ぐうえ、血流促進にも有効です。同時に、歩くことも大事。歩数にこだわる必要はないので、快適に痛みなく歩き続けられる量のウオーキングを習慣化するのがおすすめです」
足の不調は寝たきりの最たる原因となるため、足の健康を保つことは、健康寿命を延ばすことにもつながる。「アキレス腱伸ばし」は人生100年時代の新習慣として必要不可欠といえる。
「アキレス腱伸ばし」を行う前に、歩くときの理想的なアキレス腱の動きを知っておこう。
歩くときの理想的なアキレス腱の動き
【1】かかとで着地する
まず、かかとから地面につけ、次に足の前部分までを地面につける。
【2】足裏全体が地面につく
足指まで地面についた状態。このとき、すねの骨は足のまっすぐ上になる。
【3】すねの骨が前に倒れる
すねの骨を前に倒す。アキレス腱が柔らかいと、すねの骨がスムーズに前に倒れるが、硬いと足裏のアーチ(上の図を参照)をつぶすことになる。
NG!アキレス腱が硬い
アキレス腱が硬いとすねの骨がスムーズに倒せないため、代わりに足裏のアーチをつぶすことですねの骨を倒すことになる。
OK!アキレス腱が柔らかい
アキレス腱が柔らかいと、足裏のアーチに負担をかけずにすねの骨を前に倒せる。
【4】最後に蹴り出す
足指のつけ根のMTP関節(中足骨と基節骨からなる関節)を中心に足指から蹴り出す。【1】~【4】が歩行時の足の一連の動きになる。
足の専門医が教える「アキレス腱伸ばし」メソッド
日常生活に「アキレス腱伸ばし」を取り入れて習慣にしよう。簡単なエクササイズのせいか、間違った方法で覚えている人が意外と多いため、ここでは医師監修のもと、正しい方法を紹介する。
■まずはアキレス腱の柔らかさをチェック
★チェック方法
まっすぐに立ち、左足を1歩後ろに下げる。右ひざをゆっくり曲げていき、左足のすねが10°以上倒せるかをチェックする。このとき、後ろ足のひざ(ここでは左足のひざ)を曲げないこと。左右の足、両方で行う。
かかとをしっかり床につけ、両ひざと両足の人さし指を正面に向けるのがポイント。すねがきちんと倒せているかを確認することが大切なので、前から見たときに足がまっすぐになるようにすること。
■アキレス腱を伸ばしてみよう!!
【1】壁の前に立ち、両手を壁に当てたら、左足を1歩後ろに下げる。両足のつま先はまっすぐ前に向け、かかとはしっかり床につける。
【2】壁に体重をかけながら、右足のひざをゆっくり曲げる。アキレス腱に伸びを感じた状態で30~60秒キープ。反対側の足も同様に行う。左右1セットとして5回繰り返す。
※これはNG!
教えてくれた人
下北沢病院副院長・長﨑和仁さん/日本血管外科学会血管内治療認定医。日本で唯一の“足の総合病院”で、多くの足の治療に取り組む。主な著書に下北沢医師団共著による『“歩く力”を落とさない! 新しい「足」のトリセツ』(日経BP)がある。
取材・文/佐々木めぐみ イラスト/尾代ゆうこ、カミグチヤヨイ
※女性セブン2021年6月3日号
https://josei7.com/