真夏に急増する「クーラー肺炎」に注意!家の中に潜む“カビ”がアレルギー性肺炎を引き起こす原因に
猛暑が続くなか、気を付けたいのが「肺炎」だ。夏特有の肺炎は、クーラーや浴室、脱衣所など家の中にあるものや環境が原因になることも。正しい対策を専門医に聞いた。
教えてくれた人
大谷義夫さん/池袋大谷クリニック院長、三島渉さん/横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長
クーラー、脱衣所、台所が原因に!自宅に潜む夏型肺炎のリスク
記録的な猛暑を前に、厚労省は熱中症対策として日中の外出をできる限り避けるよう注意喚起している。
しかし、家の中にも肺炎のリスクがある。それが「クーラー」だ。
池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師が言う。
「エアコン機器の内部に発生したカビによる『住居関連過敏性肺炎』に注意が必要です。アレルギー反応で発症するアレルギー性の肺炎で、エアコンを設置して数年たっていれば、どの家でも起こり得ます。症状を繰り返しているうちに、肺の組織が硬くなって縮んでしまう『肺線維症』に移行し、最悪、呼吸不全に陥る可能性もあります。アレルギー性なので抗生物質は効きません」
夏場に冷房運転をするとエアコン内部で結露が発生し、湿度が高くなるためカビが発生しやすくなる。このカビがクーラーの風に乗って気管支から肺に入り、肺炎を引き起こすのだ。
だが、この猛暑でクーラーを控えるのは現実的ではない。
できる対策はエアコンの吹き出し口やフィルターをこまめに清掃し、カビの発生を防ぐこと。フィルターは外して水かお湯で洗い流すと効果的だという。
「内部にカビが発生している場合、自分で取り除くことが難しいので、業者に依頼することも検討しましょう」(大谷医師)
築20年以上経過した木造建築の家にも肺炎リスクが潜んでいる?
さらに家自体が原因で引き起こされる夏特有の肺炎もある。「夏型過敏性肺炎」と呼ばれる疾患だ。
「トリコスポロンという白カビによる、アレルギー性の肺炎です。トリコスポロンは古くなった木材を好み、高温多湿の脱衣所や台所の床下などに発生します。木造建築の家だけでなく、集合住宅でも床などに木材を使用していれば発生の可能性があり、畳やカーペットの裏で発生したとの報告もある。高温多湿な6月から11月頃までは注意が必要です」(同前)
「築20年以上の木造住宅」や「築20年以上の集合住宅の低層階」に住んでいる人には、夏型過敏性肺炎リスクがあるという。
「主な症状は『長引く咳』『息切れ』『微熱』『だるさ(倦怠感)』などで、毎年、夏に繰り返し現われるのが特徴です。住居関連過敏性肺炎と同じアレルギー性の肺炎で、重症化すると命に関わる。実際に私の患者さんのうち2人が『夏型過敏性肺炎』が慢性化して『肺線維症』に移行し、呼吸不全になって命を落としました。2週間以上の長引く咳などの自覚症状があれば、早めに呼吸器科などの専門医を受診することが望ましい」(同前)
取るべき対策は、まずトリコスポロンの発生を抑えることだ。前出の三島医師が語る。
「部屋をこまめに換気し、浴室や脱衣所は使用後に乾燥させること。押し入れやクローゼットに除湿剤を入れる、すのこを使って通気をよくすることなども有効です。水回りを中心に丁寧に掃除し、カビが生えないよう心がけましょう」
すでにトリコスポロンが発生していたら、より大がかりな対処が必要になる可能性もある。大谷医師が言う。
「掃除してもトリコスポロンを除去できない場合は、リフォームするしかありません。家全体に発生していたら、転居が必要になるケースもある」
毎年、カビが発生しやすい夏になると同じ症状を繰り返す人のほか、「例えば夏の旅行などに出かけている間は症状が収まり、自宅に戻ったら症状が出るという人は、夏型過敏性肺炎の疑いがある」と大谷医師。
「たかがカビ」と侮らず、早めの対策を取ることが肝要だ。
「住居関連過敏性肺炎」と「夏型過敏性肺炎」を防ぐ対策
・クーラーの吹き出し口をこまめに清掃する
・クーラーのフィルターは外して水かお湯で洗い流す
・部屋をこまめに換気する
・浴室や脱衣所は使用後に乾燥させる
・押し入れやクローゼットに除湿剤を入れる
写真/PIXTA
※週刊ポスト2025年8月1日号
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