老人ホームで嫌われる介護士の特徴3つ|自分のために嫌われない介護を
介護ブロガーのたんたんこと、深井竜次さんが、6年間の介護現場で体験したことをもとに、嫌われる介護士・不快になる介護について考察。介護施設でも在宅介護でも、よりよい介護のために心がけておくべきこととは。
嫌われる介護ってどんなもの?
介護士ブロガーのたんたんと申します。僕は6年間介護施設での経験をもとに「介護士の幸せな働き方」を目標にブログにて情報発信をしています。これまで介護士をして得た貴重な体験や学びを記事にしてきました。
前回は「老人ホームで愛される人」をテーマにしました。
→老人ホームで愛される人の特徴3つ…最高の介護はお金では買えない
今回は介護施設の利用者ではなく、介護職員側に焦点を当てた「こんな介護士は嫌われる」(こんな介護をする人は嫌われる)をテーマに選びました。
僕は介護職として現場で働いているときに「もし自分が目の前の利用者様ならこんな介護をされたら嫌だな」ということを意識して最善なケアができるように努めてきました。
それでも良かれと思ってしたケアが利用者様の尊厳を傷つけて、関係が悪化したことがありました。
「介護には正解がない」と言われますが、間違いはあります。しかし、たった一度の間違いによって利用者様との関係が悪化して修復が難しくなることもあるのです。
そうならないためにも、介護するにあたって「絶対これはやめたほうがいい」ということをこの記事では伝えていきたいと思います。
親が施設で暮らしている人、介護職の人、将来に家族を介護するときに「より良い関係でありたい」と思っている人に読んでいただきたいです。
嫌われる介護士の特徴3つ
利用者様に嫌われる介護職員の特徴は大きく以下の3つあると僕は考えています。
1.距離感が近すぎる(遠すぎる)
2.介護の失敗やミスを認めない人
3.忙しすぎて余裕がない人
この3つの特徴について掘り下げて解説していきたいと思います。
1.距離感が近すぎる(遠すぎる)
介護者のコミュニケーションによって、利用者様の尊厳を傷つけられると、介護者に対して負の感情を抱いてしまいます。
たとえ認知症になって正常な判断ができなかったとしても、寝たきりの状態になったとしても、自分より長く生きてきた人生の先輩です。介護される人対して、ある程度のリスペクトを持って関わらないと、関係は悪化の一途を辿ってしまいます。
介護する人と介護される人のコミュニケーションには、「距離感」がとても大事な要素だと僕は考えています。
一方で、近すぎても遠すぎても相手に不快感を与えてしまいます。
介護される人に嫌われないためには、具体的に以下のような行動はやめるべきだと考えています。
・タメ口でコミュニケーションする
・相手の内面に入り込みすぎる(政治・宗教・家庭の内情の話をする)
・介護をする際に無言になる
・他の人と比較する
この距離感は介護をするうえでとても大事なことです。しかし、人によって許容範囲が違うので難しいかもしれません。
それでも「相手を侮辱しない」「自分が言われたら嫌なことを言わない」というのは徹底するべきだと思います。
僕が介護現場で利用者様に「嫌われたかも…」と思ったことがありました。それは、利用者様から家族のことについて尋ねられ、自分の母親が亡くなったことを伝えたときのこと。どうも気まずい空気になってしまったのです。
実はその利用者様は、母親が若くして亡くなったという背景があり、僕の話で思い出してしまったようでした。
そのあとすぐ謝罪をして、以降は良い関係を作ることができましたが、いくら相手が自分のことを受け入れていようと、ある程度の自制や距離感が必要だと思った経験でした。
2.介護のミスや失敗を素直に認めない人
コミュニケーション以外の面でも介護者が嫌われることはあります。それは介護のレベルが低いことです。
介護する人のちょっとしたミスで利用者様に不快な思いをさせてしまうこともあります。しかし一度のミスがきっかけで信頼を失い、嫌われてしまうこともあります。
介護する人とされる人には、信頼関係が大事です。介護者を信頼して体を預けることによって、介護は成立するのです。
介護のプロなのですから、ミスはあってはならないことですが、完璧にこなせないこともあります。なので、ミスをしたあとの対応が大事になってきます。
しっかり謝罪をしてしかるべき処置をとる。誠意を持って対応することで、「この人は自分のためにこんなに頑張っている」と思って挽回できることもあるはずです。
仕事の失敗やミスを素直に認めなかったり、ミスをしたあとの対応が雑だったりすると、さらに嫌われてしまいます。
3.忙しすぎて余裕がない人
介護士にしても家族の介護にしても、介護以外にするべきことはたくさんあります。
介護士の場合は、複数の利用者様を同時にケアしながら、書類の作成や会議への出席、後輩の指導など多くの仕事があります。
また、在宅介護している人も、仕事や家事などするべきことはたくさんありますよね。
介護をしながらそのほかのことをこなすのは、大変な作業ではあります。しかし、そのせいでケアが雑になってしまったり、細やかなコミュニケーションがとれなくなったりすると、やはり嫌われることになります。
介護される人は「雑に扱われた」という感情が残るかもしれません。
僕の働いていた施設で利用者から嫌われてしまった職員がいましたが、利用者様の家族から「どんなケアをしているのですか?」とクレームを受けたことがありました。
具体的な対策としては…
・偏りすぎている仕事量を分散する(担当変更など)
・忙しいときは利用者様とのコミュニケーションに時間をかけすぎない
・正直に忙しい理由を伝えて納得していただく
などが挙げられます。
在宅介護においては、介護サービスなど外部に頼めることはないか検討してみることです。
嫌われない介護とは【まとめ】
介護士は、利用者に嫌われてしまうと、関係が悪化して、それを修復するのに時間をとられて結果的に、余計忙しくなってしまいます。これは在宅介護で家族を介護している人にも同じことがいえると思います。
大事なのは、「相手が負担を感じることなく介護を受けられているのか?」と常に相手の立場になって考えること。そして、介護される人も、相手の至らない点をある程度は許容するべきだと僕は考えます。
お互いが寄り添って初めて良い介護は生まれます。「嫌われる介護者」は、自分に負担が跳ね返ってきます。相手を思いやる心が、介護の負担を減らすことにつながります。介護においては、嫌われる勇気より、嫌われない努力を…。
と、頭ではわかっていても、心も時間もゆとりがないと、なかなか実践できないのですけれど。
文/たんたん(深井竜次)さん
島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。
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