「扶養」を活用した節税の実例|親、夫、子の扶養で税金はいくらお得に?
扶養家族になると、税金的なメリットが多くなるといわれている。年老いた親を扶養にしたいけれど、遠方に住んでいて無理…と思っている人、ちょっと待って。実は親は同居しなくても、扶養家族になることができるんです。税金のプロがわかりやすく解説します!
同居していない親も「扶養」にできる
「親を『扶養』に入れる」ことでお得になるケースがある」、「父親を扶養に入れたら、税金が10万円お得になったのよ」
都内在住のパート主婦・佐藤みどりさん(52才)はママ友からそんな話を聞いた。昨年、子供が巣立って扶養が外れた矢先、まさか「親を扶養に入れる」なんて考えもしなかった。
「そもそも扶養家族は収入のない専業主婦や子供がなるものでしょ? いくら年老いたとはいえ、一家の大黒柱を担ってきた自分の父に“扶養に入ってほしい”と切り出すなんて、父のプライドを傷つけないだろうか。しかも、いまさら親と同居するなんて…」
そんな“思い込み”で「扶養」を誤解し、せっかくのお得な制度を逃している人が多いという。
そもそも、扶養には「所得税法上の扶養」と「健康保険上の扶養」の2種類がある。
前者の場合、扶養に入れる人の条件は、65才未満なら年金収入が年108万円以下、65才以上なら年158万円以下だ。その上で、生計を一にしていれば(生活費を仕送りしているなど)、配偶者や親族が扶養家族になれる。実は「同居」は条件に含まれないのだ。
「離れて暮らしていても、扶養家族とみなされる場合は多い。申請が通れば『扶養控除』が使え、多くの恩恵を受けることにつながります」(ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん・以下同)
扶養控除額は?
扶養控除の控除額は、扶養される親族の年齢によって変わる。
16才以上の親族なら38万円、離れて暮らす70才以上の親なら48万円が所得から差し引かれる。
世帯年収700万円の夫婦が離れて暮らす老親を扶養に入れたら、年間約8.7万円の節税に!
たとえば世帯年収700万円の子供夫婦が、離れて暮らす70才以上の老親を扶養に入れたら48万円の控除を受けられる。すると、所得税は約4.9万円、住民税負担は約3.8万円減り、年間約8.7万円の節税になるという。
「健康保険上の扶養」の場合は?
後者の「健康保険上の扶養」の場合、親が60才以上なら年収が180万円未満であり、子供によって生計を維持されることが、扶養対象になる条件となる。また、別居だと、親の収入より子供の仕送りの方が多いことが基準だ。
「子供が会社員の場合は、会社の健康保険に親が扶養家族として入ることになるので、親の国民健康保険料を浮かすことができます。しかも、子供の保険料が大きくなることはありません」
ちなみに、世帯分離をしても、扶養から外れるわけではない。世帯分離した上で扶養家族になれば、そのまま扶養控除が受けられる。
「扶養」を活用した節税法はまだある
ほかにも「扶養」を活用した節税方法は多い。扶養される側に給与収入がある場合、前述の「所得税法上の扶養」では「年間103万円以下」、「健康保険上の扶養」では「年間130万円未満」であることが条件となる。
妻がパートで働く場合、103万円までなら所得税が課税されず、130万円まで(一定規模以上の企業などの要件を満たす場合は106万円まで)なら夫の扶養に入れるため、健康保険料も厚生年金保険料も払わなくて済む。「103万円の壁」「130万円の壁」を超えないよう意識しながら働く主婦も多いだろう。
「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾さんが話す。
「扶養の中で働くことでお得になることも多い。会社によっては働き方を考慮してくれるので、前もって自分の働き方のスタンスを伝えるといいでしょう。自分では年収が把握しにくいですが、一定の範囲を超える前に人事が声をかけてくれることもあります」
妻が夫を扶養するケース
扶養に入るのは妻ばかりではない。会社員の夫がリタイアしたときなどのタイミングで「妻が夫を扶養する」という手もある。
パートで働く妻が「130万円の壁」を超えるように勤務時間を増やせば、勤め先の社会保険に加入することになる。
そのとき、夫の年金収入が180万円未満、妻の収入の2分の1未満などの条件を満たせば、夫は妻の扶養に入ることができ、国民健康保険料などの負担をせずに済むのだ。夫の退職時に妻がまだ現役で働いている場合などでは、一考の価値があるだろう。
子供を妻の扶養に入れるケース
ほかに、「子供の扶養」を替えるという手もある。共働き夫婦の場合、子供を夫の扶養に入れることが多い。
だが、子供を妻の扶養に入れることで住民税が節税されるケースがある。住民税は一定の所得以下なら課税されない。市町村によって多少異なるが、扶養親族がいない場合は「所得が年間35万円以下」が非課税の基準となる。これは、少し働けばすぐに超えてしまう上限だろう。
ところが、16才未満の子を扶養に入れると子供1人なら「102万円以下」、2人なら「137万円以下」と、所得の非課税上限額が大幅に上がる。もし、子供1人を年収160万円(所得95万円)の妻の扶養とした場合、妻の住民税3万6000円を0円にすることが可能なのだ。
→医療費や介護費の合算で還付金が増える「世帯合算」など世帯・扶養を変えて得するお金
教えてくれた人
ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん、社会保険労務士・北村庄吾さん
※女性セブン2021年1月28日号
https://josei7.com/