老後資金に関する調査で判明「約8割が生活費や医療費に不安」年金制度への不信感も浮き彫りに＜調査レポート＞
「人生100年時代」が到来し、長い老後への関心が高まっている現代社会。漠然とした不安を抱えている人も多いのではないだろうか。「老後資金に関する調査」で浮き彫りとなった、多くの人が感じている「老後不安」とその課題をレポートする。
老後資金準備状況は二極化傾向に「老後資金に関する調査」
健康寿命が延び、「人生100年時代」と言われるようになった今、長い老後をどのように生きていくかに関心を寄せる人は多いのではないだろうか。中でも「老後資金」の問題は、ほとんどの人にとっての大きな不安として挙げられるだろう。
そこで国内最大級（※1）の家計診断・相談サービス『オカネコ』を運営する400F（フォーハンドレット・エフ）は、全国の『オカネコ』ユーザー434名を対象に「老後資金に関する調査」を実施。調査によって浮き彫りとなった現状とこれからの課題をレポートしていく。
※1 現時点での400Fデータベース及び他社公開情報の比較調査による。
生活費と医療費が二大懸念に
まず初めに、「老後に対して、現在どの程度不安を感じていますか？」と尋ねたところ、約8割（78.7％）が老後に対して何らかの不安を感じていると回答し、そのうち「非常に不安」と感じている層が35.2％にも上る結果となった。この高い不安感の背景には、依然として不透明な経済状況や社会保障制度への漠然とした不信感があると考えられる。
また、上記の問いに対し「非常に不安」「どちらかというと不安」と回答した人を対象に、「老後の生活で特に不安を感じている項目を教えてください」と尋ねた。その結果、特に不安を感じている項目としては「生活費」（83.0％）と「医療費」（58.8％）が圧倒的に上位を占めた。
これは、長期化するデフレからの脱却が叫ばれる一方で、実質賃金が伸び悩み、食料品やエネルギー価格の高騰が続く現状を反映していると考えられる。また、高齢化の進展に伴い医療費が増加傾向にある中で、将来の医療費負担に対する懸念も高まっていると推測される。その他、「健康面」（53.8％）、「介護費」（49.7％）も上位に挙げられており、心身の健康維持とそれに伴う経済的負担への懸念が大きいことが判明した。
老後資金準備の二極化
続いて、「老後資金の準備は、現在どの段階ですか？」と質問を行った。すると、年代が上がるにつれて「充分と思える準備ができている」と回答する割合は増加しているものの、30代以下ではわずか3.2％に留まり、40代が2.7％、50代でも6.7％ と、依然として低い水準となった。しかし、60代以上では20.2％と顕著に増加しており、定年が近づくにつれ準備が加速する傾向が見られる。
一方で、「まだ何もしていない」という層の割合について、30代以下が31.5％と最も高いものの、40代23.2％、50代25.7％、60代以上22.3％と年代による大きな差はなく、年代が上がっても一定数の人々が準備に着手できていないことが浮き彫りとなった。この結果は、年代が上がるにつれて老後資金の準備ができている人とそうでない人の二極化が進んでいる現状を示唆していると言えるだろう。
また、具体的に「現在、老後資金としてためている額はいくらです／でしたか？」と尋ねたところ、50代では「5,000万円以上」が16.9％、60代以上では「5,000万円以上」が25.4％に達するなど、高額な貯蓄を保有する層も増加しており、貯蓄額においても二極化傾向が見られた。
老後資金の準備方法は「預貯金」が主流
次に、「老後資金の主な準備方法として、行っている／いたものをすべて教えてください」という質問を実施。その結果、「預貯金」が75.1％と最も多く、次いで「投資信託・株式」59.9％、「公的年金制度」55.1％が続いた。NISAなどの非課税制度の拡充により投資への関心は高まっているものの、依然として預貯金が主流であることが明らかに。
また、「2025年度の年金支給額引き上げ（＋1.9％）に対する印象を教えてください」という問いには、約半数（47.2％）が「物価上昇に追い付いていないと感じる／実質的には目減りだと感じる」と回答しており、年金制度への不信感や不安感が根強いことが窺える。これは、将来受け取れる年金額への期待値が低いことや、現状のインフレ率と対比させると、実質的な購買力の低下だと感じる国民感情を如実に表す結果となった。
若年層の「ねんきん定期便」理解不足が示す金融リテラシーの課題
最後に、「『ねんきん定期便』の内容を普段どの程度確認していますか／いましたか？」と尋ねたところ、30代以下の若年層の半数以上（56.5％）が「全く理解していない」または「あまり理解していない」と回答する結果となった。年代が上がるにつれて理解度は向上するものの、50代でも約4割（38.9％）が理解できていないという結果は、自身の将来の年金額や制度に対する国民全体の理解度が低いことを示している。
年金制度は老後生活を支える重要な柱であり、その仕組みを理解することは将来設計を立てる上で不可欠だ。しかし、このように理解が進んでいない現状は、若年層が老後への具体的なイメージを持てず、結果として老後資金の準備が後回しになる要因のひとつになっている可能性も考えられる。
＊＊＊
以上の調査結果から、現在の日本社会において老後の生活に対する漠然とした不安が広がり、特に経済的な側面への懸念が顕著であることが浮き彫りとなった。物価上昇が続く中で、年金支給額の引き上げが実感に乏しいと感じられる現状や、若年層における年金制度への理解不足は、将来への不安を一層増幅させる要因となっている。
今後、一人ひとりが主体的に老後資金の準備を進めるためには、よりわかりやすい情報提供や金融教育の充実が不可欠だ。特に若年層に対しては、早期からの資産形成の重要性を啓発するとともに、NISAやiDeCoなどの制度活用を促す具体的な情報発信が求められる。また、年金制度そのものの透明性を高め、国民の信頼回復に努めることも喫緊の課題と言えるだろう。
老後資金の準備を始めたくともどこから手を付けたものかわからない、という人は、専門家を頼るのも手だ。ひとりで悩んで時間を浪費する前に、誰かに相談してみることをおすすめする。
【データ】
400F
https://400f.jp/
オカネコマガジン
https://okane-kenko.jp/media/
【調査概要】
調査名：オカネコ 老後資金に関する調査
調査方法：WEBアンケート
調査期間：2025年6月13日（金）～2025年6月15日（日）
回答者：全国の『オカネコ』ユーザー434人
回答者の年齢：30代以下21.2％、40代25.8％、50代31.3％、60代以上21.7％
回答者の世帯年収：400万円未満27.4％、400万円以上600万円未満20.1％、600万円以上800万円未満15.4％、800万円以上1,000万円未満12.4％、1,000万円以上1,200万円未満6.5％、1,200万円以上11.8％、分からない6.4％
※400Fの発表したプレスリリース（2025年6月26日）を元に記事を作成。
図表／400F提供 構成・文／秋山莉菜
