肉や魚をやわらかくしっとりさせる「塩糖水」漬けの作り方とレシピ2つ
今、話題の調理法「塩糖水漬け」をご存じだろうか。 塩糖水漬けにした食材はふっくらジューシーに仕上がって、料理のおいしさもアップ。硬い肉や魚もやわらかく食べやすくなるから、シニア食にもぴったりなのだとか。
料理研究家の上田淳子さんの著書『おいしくなって保存もきく!塩糖水漬け』(世界文化社)は、発売後に即重版が決定したほど注目を集めている。そこで、同書より塩糖水漬けのやり方とレシピを紹介する。
塩糖水ってどんなもの?
塩糖水とは、塩と砂糖と水を一定の割合で混ぜたもの。フランスではソミュール液、アメリカではブライン液と呼ばれ、これを上田さんが日本風にアレンジしたのが塩糖水。家にあるものだけで、手軽に作ることができるのが魅力的!
塩糖水漬けにすると、パサつきがちな肉や魚も水分を保ってしっとりとした仕上がりに。さらに、臭みが取れる、冷めてもやわらかいといったメリットも。また、塩を含ませることで保存性が高まるなど、いいことづくめ。
肉や魚がやわらかくなる塩糖水の仕組み
なぜ、塩糖水に漬けた肉や魚がやわらかく仕上がるのか?という疑問には、女子栄養大学の西村敏英教授が解説。
そもそも肉や魚が調理によって固くなるのは、熱によってたんぱく質が変質するから。筋肉を構成する筋線維の中にある筋原線維が収縮し、水分が流出してしまうので、固くなったりパサついたりする。一方、塩糖水に漬けると塩と砂糖それぞれの働きで、肉に変化が起きる。
塩の働き
塩が内部に浸透すると、筋線維がほぐれて筋線維間のスペースが広がり、そこに水分を蓄えることができる。
砂糖の働き
砂糖の分子と肉のたんぱく質の分子が結合し、加熱による縮みや凝固を抑制する。また、砂糖は保水性が高いので、肉の中で水分をしっかり保つことができる。
塩糖水の作り方と漬け方
3つの材料を混ぜて漬けるだけ、と手軽。さらに、おいしさを保って保存できるので、まとめ買いした食品はとりあえず漬けておいて。
<材料>(肉や魚200g〜300gに対して)
塩小さじ…2/3 糖…大さじ1/2 水…100ml
<作り方>
・ポリ袋に塩、砂糖、水を入れて巾着状に上部を寄せ、袋をふって溶かす。袋に少し空気が入っているとふりやすい。
<漬け方>
・肉や魚を入れ、全体に液が浸るようにならす。空気を抜いて口を縛り、冷蔵庫で3時間以上おく。
・バットにのせておくと、万が一ポリ袋が破れても安心。
<使い方によって気をつけること>
・水気をしっかり拭く
焼く、炒める、揚げるときは、ペーパータオルで水分をよく拭いてから調理を。油はねもなく、焼き色がきれいにつく。ゆでる、煮るときは軽く水気をきる程度で充分。
・塩糖水を捨てる
魚なら2日、肉なら3日は漬けたままで大丈夫だが、それ以上になる場合は塩糖水を捨てる。肉は塩糖水を捨てた状態で冷凍保存することも可能。
→食材をやわらかくする基本の調理法・コツ|介護食の基礎知識 見た目もよいやわらか食の作り方
塩糖水を活用したレシピ2選
■鶏ささ身とピーマンの青椒肉絲
シンプルな炒め物だからこそ、味を整える塩は控えめに。塩糖水でプリッとやわらかい食感に。
<材料>(2人分)
鶏ささ身の塩糖水漬け…4〜6本(約250g)
※塩糖水…塩小さじ2/3、糖大さじ1/2、水100ml
ピーマン…6個
しょうが(細切り)…小1かけ分
酒…大さじ1
塩、こしょう…各適量
ごま油…大さじ1
<A> 片栗粉…大さじ1/2 サラダ油…小さじ1
<作り方>
【1】鶏ささ身の塩糖水漬けは水気をきってペーパータオルでよく拭く。1本を縦半分に切って細めの斜め切りにする。ピーマンは細切りにする。
【2】【1】のささ身にこしょうをふって<A>をからめる。フライパンにごま油半量を入れて中火にかけて温め、ささ身を入れてほぐしながら軽く炒めて取り出す。
【3】【2】のフライパンに残りのごま油、しょうがを入れて中火にかけ、香りが立ったら【1】のピーマンを加えてさっと炒める。酒を加えてピーマンがしんなりしたら軽く塩、こしょうをし、【2】を戻し入れ、軽く炒め合わせる。
■かじきのトマト煮
脂肪分も臭みも少なく冷めてもおいしいかじきを、たっぷりのトマト缶でさっと煮るシンプルなレシピ。粗くくずしてパスタやオムレツにしても。
<材料>(2人分)
かじきの塩糖水漬け…2切れ
※塩糖水…塩小さじ2/3、糖大さじ1/2、水100ml
こしょう…適量
トマトの水煮缶(ダイスカット)…1缶(400g)
オリーブ油…大さじ2
<A> にんにく(みじん切り)…小1片分 玉ねぎ(みじん切り)…1/2個分
<作り方>
【1】かじきの塩糖水漬けは水気をきってペーパータオルでよく拭き、半分に切ってこしょうをふる。
【2】フライパンにオリーブ油半量を入れて強めの中火にかける。熱くなったら【1】を入れ、両面をさっと焼いて取り出す。
【3】【2】のフライパンに残りのオリーブ油、<A>を入れてしんなりするまで約3分炒める。トマトの水煮缶を入れてひと煮立ちさせ、弱火にして約5分煮る。かじきを戻し入れて約2分煮る。
著者
料理研究家・上田淳子さん
調理師専門学校の西洋料理研究員を経て渡欧。ヨーロッパや日本のレストランなどで修行後、家庭でも再現しやすいシンプルフレンチや、無理しない「ふだんの食事」をベースに料理家として幅広く活躍する。自他共に認めるワイン好きで造詣も深い。公式HP(https://juncook.com/)。近著に『おかずチャートで迷わない! 即決! 晩御飯』(学習研究社)、『父と母へのごはん便 冷蔵・冷凍どちらもおいしい!』(文化出版局)など。
撮影/西山航(世界文化社ホールディングス)