サプリ×薬の危険な組み合わせ「ビタミンC×緑内障治療薬、グルコサミン×糖尿病治療薬」ほか相互作用に要注意【医師監修】
手軽に栄養補給できるサプリや健康食品だが、薬じゃないから、副作用の心配がないと思い込むのは要注意!医薬品との組み合わせ次第で重篤な症状を引き起こすリスクがあるという。サプリ・健康食品と薬の「危ない飲み合わせ」を長年研究してきた女性薬剤師が貴重なデータベースを公開。医師も薬局も教えてくれない、危険な組み合わせを紹介する。
教えてくれた人
堀美智子さん/薬剤師・医薬情報研究所エス・アイ・シー取締役、一石英一郎さん/国際医療福祉大学病院内科学教授
薬とサプリの「相互作用」に要注意!
「薬ではないから副作用のリスクがないと考えている人が多いですが、健康食品やサプリの安全性や有効性は、薬に比べて未解明な部分が多いのが現状です」
そう語るのは、長年にわたりサプリの研究を続けてきた薬剤師の堀美智子さん(医薬情報研究所エス・アイ・シー取締役)だ。
堀さんによれば、とくにブラックボックスになってきたのが、薬とサプリの「相互作用」だという。
「薬との飲み合わせについては、まだまだ知見が不足しています。両者の相互作用リスクに精通する医師や薬剤師は少数で、患者さんへの積極的な情報発信もされていない。サプリと薬の飲み合わせによっては命に関わるような重篤なリスクを生じることもあります」
国際医療福祉大学病院内科学教授の一石英一郎医師もこう指摘する。
「医師が処方時に参照する医薬品の添付文書には、併用注意や禁忌の薬の記載はあるものの、サプリなどとの相互作用はほとんど記載されていません。受診する際、医師に使用しているサプリについて自己申告をしない患者さんも多く、知らずに処方された薬との相互作用によって、薬の作用が強まったり弱まったりするケースが実際にあります」
クエン酸には胃腸薬との併用で言語障害のリスクも
昨年3月に発覚した小林製薬の紅麹サプリによる健康被害は記憶に新しいが、紅麹は脂質異常症治療薬との併用で効果が増強される恐れがある。
「紅麹に含まれるロバスタチンという成分は、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を低下させ、動脈硬化などを予防するスタチン系薬と同じ作用機序を持つとされます。併用により効果が増強されるとコレステロール値のコントロールがうまくいかなくなるだけでなく、スタチン系薬の副作用である肝機能障害や腎機能障害、横紋筋融解症などのリスクを高める可能性もあります」(以下、「 」内のコメントは堀さん)
疲労回復効果などを期待して摂取されることの多いクエン酸には胃腸薬との併用でこんなリスクが。
「クエン酸を多く含んだ飲料やサプリが店頭に多く並びますが、胃酸の中和効果があるアルミニウムを含んだ胃腸薬との併用は要注意。クエン酸にはアルミニウムの吸収率を高める作用があり、大量のアルミニウムが骨や脳に蓄積することで言語障害や骨症(骨の痛みや軟化など)につながる可能性があります」
胃腸薬の成分名にはアルミニウムと記載されず、「スクラルファート」「合成ヒドロタルサイト」などと書かれている場合が多い。無意識のうちに飲み合わせるケースがあるので注意したい。
眠気防止を目的としたサプリにも、飲み合わせに気をつけたい薬がある。
「多量のカフェインが含まれているガラナがそのひとつ。喘息などの治療に使われる気管支拡張薬と併用すると、動悸や不眠、胃痛、頭痛、吐き気などカフェイン中毒の症状が強く出る可能性があります。気管支拡張薬にはカフェインと類似した化学構造を持つものがあり、薬の作用が増強されるリスクがあるのです。脂肪の吸収抑制を目的に飲む人が多い茶カテキンにも多量のカフェインが含まれますので、気管支拡張薬との併用には注意が必要です」
歳を重ねると骨粗鬆症の予防など、骨の健康維持を目的にビタミンDが含まれるサプリや健康食品を摂取する人は多い。しかし、同じ目的で医療機関で処方されるカルシウム製剤と併用すると、思わぬ相互作用を招くことがある。
「骨の主要成分であるカルシウムを直接補給するカルシウム製剤は、ビタミンDと併用すると、カルシウムの吸収が過剰になり、吐き気、めまい、便秘、腹痛、倦怠感などの高カルシウム血症の症状が出ることがあります。どちらも骨を丈夫にするうえで不可欠な成分ですが、摂りすぎには注意が必要です」
お薬手帳にメモしてリスクを回避しよう
薬とサプリの「飲み合わせ」リスクは年齢を重ねるほど注意が必要という。加齢で腎臓や肝機能が低下すると、それらの成分が体外に排出されるまで時間を要し、作用が強く出るためだ。
だが一方で、 堀さんはこう指摘する。
「『薬を服用している人はサプリを飲んではいけない』という話では決してありません。併用のリスクを事前に確認したうえで、用法用量を守って使用すれば、サプリは健康増進に役立つものですし、日頃から身体に不足しがちな成分を補うためにも有用です。
ただ、専門知識がない方が、サプリと薬の相互作用を自分で調べるのは困難。使用する際は必ず医師や薬剤師に相談し、問題がないか確認することを習慣化してください。また、お薬手帳にいま飲んでいるサプリをメモすることを徹底していただくことで、リスクを回避することが可能になります。サプリを飲んでからの自分の体調の変化も書いておくとなお良いでしょう」
気軽に利用できるものだからこそ、慎重を期し上手に付き合いたい。
※週刊ポスト2025年6月6・13日号
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