小学館IDについて

小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼント にお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
閉じる ×

腎臓を労る食生活のコツ「高齢者は積極的なたんぱく質摂取がNGの場合もあるので注意を」【管理栄養士解説】

「高齢になると肉や魚などたんぱく質をたっぷり摂るべき」と言われるが、「摂りすぎてはいけない人もいます」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。75才以上の3人に1人が慢性腎臓病を抱えているという調査結果も。高齢者の栄養指導・相談を行っている管理栄養士の川鍋仁美さんに、「腎臓に負担をかけない食生活」について教えてもらった。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

腎臓に負担をかけない食生活のコツ「たんぱく質の摂り過ぎ」に注意

「高齢者は筋力維持や健康に欠かせない《たんぱく質》を積極的に摂りましょう」とよく言われますが、実は「腎臓」の働きが弱っている場合、摂り過ぎてはいけない栄養素でもあります。

 加齢によって腎臓の働きは徐々に落ちるとされています。日本腎臓学会の研究論文※によると、日本人の高齢者の4人に1人はこの慢性腎臓病であるとされ、75才以上では3人に1人に上ることが明らかになっています。

 また、栄養相談を受ける高齢者のかたにも腎臓の働きが弱っていることを医師に指摘され、食事内容をアドバイスさせていただくこともあります。

※『Clinical and Experimental Nephrology』(日本腎臓学会)より。

腎臓の働きを確認しておきましょう

 体内では、食べたものの消化や分解を行う過程で老廃物(尿素や窒素)が作られます。その老廃物を体外に排出する働きをしているのが「腎臓」です。

 つまり、腎臓の働きが弱っていると、うまく老廃物を排出できなくなり、むくみや頻尿、血圧が上がりやすくなるなど、さまざまな不調に繋がります。

 腎臓を労りながら、たんぱく質をバランスよく摂取するためには、どんなことに気を付けたらよいのか考えてみましょう。

たんぱく質の適量を知っておきましょう

 腎臓に負担をかけないためには、たんぱく質は摂り過ぎてはいけません。かといって制限しすぎると筋肉量が減少し、とくに高齢者は健康を損なってしまいます。このバランスは人によって変わりますし、健康状態にもよるのですが、目安となる分量としては、以下のようになります。

 たんぱく質を多く含む食材は、牛肉・豚肉・鶏肉・魚介類・豆腐など大豆製品・乳製品などがあります。これらの食材を「1食につき手のひら(片手)に収まる分」を意識するといいでしょう。

 高齢者の場合はそもそも食事量が減少している場合が多いので、健康な場合には少しぐらい摂り過ぎても排出されるので問題ありませんが、腎臓に疾患を指摘されている場合は、かならず医師や管理栄養士の指示に従ってください。

減塩を心がけましょう

 腎臓を労る食生活では、たんぱく質以外にも注意しておきたいことがいくつかあります。腎臓は体内の余分な「塩分」を排出する働きも担っているため、腎機能が低下するとむくみや高血圧などに繋がります。

 食事は“減塩”を意識することが大切です。普段から味が濃いものに慣れている人は、いきなり味つけを薄くしてしまうと、食事が進まないこともあります。

調味料を減塩タイプに

 味つけだけにこだわらず、しょうゆやみそなどの調味料そのものを「減塩」にしてみましょう。

 減塩のために、みそ汁は「1日1杯」を目安にしましょう。具を多めにして、汁の量を半分くらいの量にできると塩分を抑えられます。

塩分量が多い加工食品を控え目に

 意外と塩分の含有量が多いのが加工品です。ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工品を控えることで、塩分量を抑えることができます。

カリウムの摂り過ぎに注意

 腎臓の働きが弱ってくると、カリウムがうまく排出されずに体内に蓄積されてしまうということも起こります。

 カリウムは水分バランスの調整、利尿作用や神経伝達などにも必要とされ、体に必要不可欠な成分です。しかし、多すぎても少なすぎても不調の原因になります。

 医師からカリウム制限を指摘された場合には、食事に注意する必要がありますので、医師や管理養士の指示に従いましょう。

 カリウムが多く含まれる食材には、芋や豆類、ナッツ類、海藻、きのこ類のほか、果物にも多く含まれています。食べ方や調理の工夫でカリウムの摂取量を減らすことができます。

冷凍野菜を活用する

 カリウムの多い野菜は、水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることでカリウムを減らすことができます。また、冷凍野菜なら一度茹でられているものが多いので、生よりもカリウムが少ないケースが多く、手軽に利用することができます。

果物は缶詰を利用

 生の果物はカリウムを多く含むので健康なときはよいですが、腎臓を労る食生活では、缶詰の果物に置き換える方法もあります。缶詰の果物はシロップにカリウムが溶け出しているので生よりもカリウムの量が少なめです。

 缶詰のフルーツはやわらかくて噛みやすく、カロリーも摂れるので、食が細くなった高齢者におすすめです。シロップを切って果肉だけを食べたほうがいいでしょう。

腎臓に優しいデザート「寒天フルーツポンチ」の作り方

関連キーワード

コメント

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

最近のコメント

シリーズ

最新介護ニュース
最新介護ニュース
介護にまつわる最新ストレートニュースをピックアップしてご紹介。国や自治体が制定、検討中の介護に関する制度や施策の最新情報はこちらでチェックできます!
新設情報!老人ホーム、介護施設、デイサービス
新設情報!老人ホーム、介護施設、デイサービス
老人ホーム、介護施設、デイサービスの新設情報をご紹介!
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「聞こえ」を考える
「聞こえ」を考える
聞こえにくいかも…年だからとあきらめないで!なぜ聞こえにくくなるのか?聞こえの悩みを解決する方法は?専門家が教えてくれる聞こえの仕組みや最新グッズを紹介します
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。