健康

骨を鍛える最強メソッド|骨を強くする食事と2大エクササイズ

 骨は目に見えない分、どんな状態かわからず知らない間に老化や劣化が進みやすい。とくに女性の骨は男性の4倍もろいという。最期まで楽しく寝たきりにならずに生きるための骨を鍛えるため方法とは。コロナ禍でとくに注意すべき骨を強くするメソッドを専門家に聞いた。

新しい生活様式で骨を鍛える必要性が…

 終わりの見えないコロナ禍の中、在宅勤務の継続や拡大に乗り出す企業が増えている。ヤフーは10月1日から「無制限リモートワーク」に移行することを発表。みずほフィナンシャルグループも同時期に、都内の本社勤務の社員約3000人を常時テレワーク勤務とすることを決めた。

 また、いすに座ったまま体を温めることができる「在宅勤務用こたつ」が発売されるなど、在宅勤務を後押しする消費者需要も増加している。

 しかし、こうした「新しい生活様式」に光伸メディカルクリニック院長で整形外科医の中村光伸さんは「いまの生活は骨を弱くするリスクを高めている」と警鐘を鳴らす。

「新型コロナウイルス感染症の影響で運動量が減少し、骨が弱くなった人が増えているのではないかと危惧しています。骨を強く保つためには、ある程度の運動量が必要で、通勤・通学といった日常生活の活動量は意外と大きい。

 毎日駅まで歩いたり、社内の階段を上り下りしたりしていたのが、在宅勤務ではゼロになる。運動量が2分の1以下になってしまったという人も多いのが現状です」(中村さん)

 つまり、日常生活の中で意識して骨を育て、鍛えるようにしなければ骨は弱くなる一方だということだ。

なぜ骨を鍛える必要があるのか?

骨粗しょう症のリスク、女性の骨は男性の4倍もろい

 そもそも女性は男性に比べて年を取ってから骨がもろくなる人が多い。実際、日本骨折治療学会によれば女性の骨折患者は男性の4倍近くにのぼるという。その理由は、女性ホルモンにある。

 桜美林大学老年学総合研究所所長の鈴木隆雄さんが解説する。

「骨は体の中で常に新しく作り替えられており、骨を作る『骨芽細胞(こつがさいぼう)』と骨を壊す『破骨細胞(はこつさいぼう)』がうまくバランスを取りながら働いて、骨の強度を保っています。

 しかし、更年期以降は骨芽細胞の働きを活発にする女性ホルモンのエストロゲンが減少してしまう。そのため、閉経以降は骨を壊す『破骨細胞』の働きの方が強くなり、カルシウムが失われて骨がもろくなり、骨粗しょう症になるのです」(鈴木さん・以下同)

→骨ホルモン「オステオカルシン」を増やす|「かかと落とし」のながら骨活で全身若返り

ビタミンDの不足で骨が育たない

 エストロゲン量の低下と並んで女性の骨がもろくなる大きな原因となっているのは、過度な日焼け対策によるビタミンDの不足だ。

「ビタミンDは骨を育てるために必要なカルシウムを体に吸収させるためになくてはならない栄養素です。食物から摂取できるほか、日光を浴びると体内で合成されることが明らかになっています。

 しかし過度に日焼け対策をしてしまえば、外に出て日光に当たってもビタミンDを吸収できない。日焼け止めクリームを塗ったうえに日傘をさして、サングラスに手袋までするような生活をしている人は珍しくありませんが、骨にはよくない」

 鈴木さんによれば、日本人女性は世界と比べてもビタミンDが不足しているという。

「IOF(国際骨粗鬆症財団)の指標では、日本人女性のビタミンDの血中濃度は、著しく低いと指摘されています。確かに紫外線は皮膚がんのリスク要因ですが、日常生活で多少浴びる程度なら問題ありません。むしろ紫外線を浴びないことのデメリットもあると知ってほしい」

骨がもろくなると認知症のリスクも

 骨がもろくなることでまず懸念されるのは、骨粗しょう症のリスクだ。鈴木さんが解説する。

「骨粗しょう症は、骨からカルシウムが抜けて、スポンジのようにスカスカになっている状態です。骨密度が下がるため、骨折のリスクが高くなり、軽い転倒でも骨折する可能性が高くなります」

 骨粗しょう症の人が転倒してしまったとき、折れやすい部位は全身にある。

「よくあるのは、転倒した瞬間に手をついて、肘から手首にかけての前腕骨(ぜんわんこつ)が折れてしまうケース。尻もちをついて大腿骨を骨折する人も少なくありません。痛みがないため気づきづらいのが、背骨の圧迫骨折。自覚症状がないまま背中が曲がり、胃を圧迫して逆流性食道炎を起こしてしまうこともあります」

 特に高齢者であれば、骨折が命取りになる。

「大腿骨を骨折すると、入院が必要になります。リハビリによって元通りの生活を送られるかたもいますが、そのまま病院のベッドから起き上がれずに、要介護状態になることも。寝たきりになったことで認知症が悪化することもあります。国内外のさまざまな調査では、大腿骨などを骨折した人の死亡率が高いこともわかっています」

 実際、女優の赤木春恵さん(享年94)は91才のときに自宅で転倒して大腿骨を骨折。その後は車いす生活を送り、そのまま復帰することなく亡くなった。2013年に全身がんを公表し、生涯女優活動を続けていた樹木希林さん(享年75)も、2018年、大腿骨骨折をきっかけに体調が悪化して、1か月後にこの世を去っている。

→高齢者の転倒が危険|樹木希林さんも…大腿骨骨折や寝たきりを防ぐリハビリとは【動画あり】

骨を育て強くする食事と生活習慣

 骨がもろくなっていれば、少しつまずいただけでも死に至るリスクがあるということ。それでは、どうすれば強くて丈夫な骨を作ることができるのか。

カルシウムとビタミンDを積極的に

 ます見直すべきは食事内容だ。鍵になるのはカルシウムとビタミン類だと鈴木さんは言う。

「日本人は牛乳やチーズといった乳製品の摂取量が、そもそも少ない。水道水もカルシウムの含有率が高い硬水ではなく軟水であるため、どうしても欧米に比べて不足しやすい状況です。

 緑黄色野菜にもカルシウムは含まれますが、軟水で育った野菜はカルシウム量も低くなります。牛乳やチーズなどの乳製品や小魚などから積極的に摂るようにしてください」

 厚労省が定める女性の推奨量(15才以上)は、1日650mg。牛乳コップ1杯に約230mg含まれている。

「カルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンKも欠かせない栄養素です。ビタミンDは鮭、さんま、きのこ類などに、ビタミンKは納豆に多く含まれています」

 きのこは天日干しして太陽の光をたっぷり浴びることでビタミンDが何倍にも増加する。

→大豆食品、食べるならこれ!|筋肉を作る、骨を丈夫にするなど目的別ランキング&おすすめレシピ

手にひら太陽にかざす

 鈴木さんは、ビタミンDを食事から摂取するのに加え、日光浴で増やすことも推奨している。

「最もいいのは、日光を浴びて、自分の体でビタミンDを作り出すこと。日光を浴びるのは顔でなくてもかまいません。日焼けが嫌なら、1日に数分でいいので手のひらを日光にかざすなどしてほしい」

たんぱく質をたっぷり摂る

 中村さんは、たんぱく質も強い骨を作る重要な要素だと説明する。

「骨は鉄筋コンクリートのような構造をしていて、たんぱく質は鉄筋の役割を果たしています。コンクリートの部分にあたるのがカルシウムであるため、カルシウムだけでは強度が保てません。カルシウムとその吸収を高めるビタミンD、さらに鉄筋の役割を果たすたんぱく質などもたっぷり摂ってほしい」(中村さん)

 反対に、骨をもろくするものもある。

「喫煙の習慣がある人は、骨粗しょう症になりやすい。たばこは女性ホルモンの分泌を妨げ、骨代謝を低下させます。喫煙の習慣がある人は、食生活の改善とともに禁煙にも取り組んでほしい」(鈴木さん)

骨を鍛える最強のエクササイズ2選

 骨を育てる栄養素をしっかり摂ったら、鍛えるために運動を。中村さんは、強い骨を作るためには食事だけでなく、直接刺激を与えることも必要と説く。

1.骨を1分間に100回たたく

「カルシウムやビタミンDなどの材料がそろっていても、脳から『骨を強くしなさい』という指令が出なければもろいままです。運動して骨に負荷をかけて刺激を与えると、負荷に耐えようとして骨は強くなります」(中村さん・以下同)

 運動といっても、激しいものである必要はない。毎日30分、日光のもとウオーキングをするだけでも骨には刺激が加わるという。自宅でも気軽にできる方法として中村さんがすすめるのは、骨を直接刺激して鍛える「骨たたき」だ。

「いすに背筋を伸ばして座り、右のこぶしで右膝の上を、左のこぶしで左膝の上を交互にコツコツとたたきます。たたくスピードは1分間に100回程度が目安。一度にまとめてたたいても、何度かに分けて行ってもかまいません。骨は刺激を与えれば与えるほど強くなるので、回数がオーバーしてもいい。テレビを見ながら、トイレに入ったときなど、実践しやすい場所とタイミングで行って」

 太ももよりもより膝に近い部分をたたくのがコツだと中村さんはアドバイスする。

「骨が分厚い筋肉に覆われている太ももは、骨への刺激が伝わりにくいので、膝の上をたたくようにしましょう。骨は細長い形状をしていますが、膝から足首に向けた縦方向に刺激することで、骨に振動が伝わりやすく、効率がいいです」

 ただし、強くたたきすぎると膝を痛めるので注意が必要だ。

「胸のあたりから、小指側を下にして、力を抜いて自然にこぶしを落とすくらいの力加減がベスト。膝や足腰に持病がある人はやらないこと。痛みを感じたらすぐに中断してください」

■1分間に100回! 骨たたきのやり方

2.骨がぐんぐん育つ貧乏ゆすり

 いすに座ったままで骨を鍛える方法はほかにもある。東京学芸大学名誉教授で医学博士の宮崎義憲さんは「貧乏ゆすり」を推奨する。

「意外に思われるかもしれませんが、貧乏ゆすりで足を動かすことも、骨粗しょう症対策になります。足を上下することで筋肉が骨をこすり、摩擦が生まれます。これによって骨膜に膜電位が生じて、血中のカルシウムを骨に取り込んでくれるのです。カルシウムの摂取とともに、ぜひ実践してみてほしい」

 貧乏ゆすりの方法はいたって簡単。いすに座った状態で足をゆするだけだ。病状にもよるが、車いすに座った状態でも行うことができる。

「1秒間に2~3回足を上下する貧乏ゆすりを、休憩をはさみながら左右それぞれ5分間×3セット行ってください。おすすめのタイミングは、お風呂上がり。毛細血管が拡張しているため、より効果的です。就寝の30分前に行うと、適度な運動効果で体が疲れるので、寝つきもよくなります」(宮崎さん)

■骨がぐんぐん育つ! 貧乏ゆすりのやり方

 自覚症状がないまま静かに進行する骨粗しょう症。コロナ禍のいまこそ、骨を強くするために生活を変えるべきときなのだ。

イラスト/飛鳥幸子 写真/ゲッティ・イメージズ

※女性セブン2020年10月22日号
https://josei7.com/

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