血管年齢40代の74才医師が実践する健康法「血管しごき」って?
食事や睡眠、運動など生活習慣をどれほど改善しても体調不良や病気を繰り返す──それは「血管」のメンテナンスが足りないのかもしれない。血管を“しごいて”、血管のアンチエイジングに成功している医師が、人生を変える健康法を指南!
74才で40代の血管年齢の持ち主が続けるマッサージ術「血管しごき」
1人の人間の血管を1本につなぐと、およそ10万kmの長さになる。そんな地球2周半もの距離を、心臓から送り出された血液はたった1分で駆け巡る。ところが、加齢や生活習慣の影響によってダメージを受けた血管はしだいに硬くなり、血液が流れにくくなってしまう。これが「動脈硬化」だ。
『もむだけで血管は若返る』(PHP研究所)の著者で、大阪市立大学医学部名誉教授で健康科学研究所所長の井上正康さんは、現在74才ながら、血管年齢は40代という驚異の血管の持ち主だ。
「血管年齢とは、動脈がどれだけ硬くなっているか、動脈硬化の程度を表すもので、個人差が大きいのが特徴です。血管が硬くなると血液がつまりやすく、酸素や栄養が全身に届きにくくなる。脳梗塞や心筋梗塞、認知症など重大な病気のリスクも高めます」(井上さん・以下同)
つまり、血管年齢が老けている人ほど病気になりやすく、逆に、年を取っても血管年齢が若ければ、健康に長生きできる可能性が高い。
井上さんの血管年齢の若さの秘訣は、毎日の「血管しごき」というマッサージ術にあるという。
従来、血管を若々しく保つには、食事など体内を健康に保つ生活習慣を心掛けるか、薬などで治療するしかないとされてきた。井上さんの「血管しごき」は、皮膚の外から血管に刺激を与えるという目からウロコの方法なのだ。
しかも、だれでも、いますぐできるマッサージでありながら、がん予防、免疫力アップ、快眠、頭痛解消、美容効果など、幅広い健康効果があるという。
血管しごきは血管を圧迫し、動脈に刺激を与える
一般的なマッサージは、「筋肉」に圧を加えてほぐすのが目的だが、「血管しごき」は、血管を圧迫することで、「動脈」に刺激を与える。
「血管は大きく分けると、動脈、静脈、毛細血管の3つあります。このなかで最重要なのが、心臓から全身に血液を運ぶ動脈です。動脈はつねに伸縮を繰り返して血圧をコントロールする重要な機能を持ちますが、放置していると筋肉と同じようにこり固まります。動脈に適度な刺激を与えることで、ほぐしながら鍛えることができ、しなやかな血管の維持につながるのです」
「骨」までつかむようにしごく
「血管しごき」は、特別な器具はいっさい使わない。すべて自分の手で行うので、難しいテクニックも必要ない。ただし、普通のマッサージとは違う「コツ」がいくつかある。
「まず、マッサージしたい部分の皮膚に手を当てたら、指や手のひらをしっかりと密着させて、皮膚と筋肉を骨に押しつけるようにしごきます。腕の動脈を鍛えたいなら、反対の手で野球のバットを握るようにギュッとつかみ、骨のまわりをグリグリひねります。
動脈は、筋肉と骨の間、つまり皮膚から離れた深い部分を通っているので、皮膚の表面をこすったり、揉むだけでは刺激にならない。骨までつかむイメージで、強くしごくように刺激するのがコツです」
体中どこからでもOK。痛気持ちいい程度が目安
力加減は、“痛気持ちいい程度”が目安。少しのマッサージでも血流がよくなり、体が温まるのを感じる。
血管は全身を巡っている。頭のてっぺんからつま先までくまなくひと通りしごくのが基本だ。体のどこから始めても構わないという。
「ただし、触って痛みを感じる場合や、炎症を起こしている部分は避けること。また、首のマッサージは肩こり改善におすすめですが、頸動脈や多くの神経が通っているのであまり力を入れないでください。眼精疲労解消に効果的なまぶた周辺も、目を傷つけないようやさしく行いましょう」
マッサージにかける時間は15分。それで全身の血管をしごける程度のスピードで行う。一度に全身やるのが大変ならば、1日で何度かに分けて行ってもいい。
「継続することが最も大事なので、疲れるまでやる必要はありません。毎日続けていると、確実に血管は変わってきます」
「血管しごき」は、動脈だけでなく静脈やリンパ管(老廃物などが流れる管)も同時に刺激する。そのため、全身の血流が改善されて新陳代謝が活発になり、かつ老廃物の排出がスムーズになるため、便秘解消や頭痛の予防にもなる。
「自律神経も刺激されるので、リラックス効果もあります。顔の血管をしごけば、シミやしわができにくくなり、化粧ノリがよくなるのを実感できるはず。頰骨をほぐせば、小顔効果も期待できますよ」
上記イラストを参考に、毎日実践してみて。
→認知症予防には脳トレ以上の効果!脳を活性化させる「血管しごき」のやり方
教えてくれた人
井上正康さん/大阪市立大学医学部名誉教授。健康科学研究所所長『もむだけで血管は若返る』(PHP研究所)の著者。
イラスト/小山ゆうこ
※女性セブン2020年6月4日号
https://josei7.com/