認知症の母がトイレと間違えてお尻がはまってしまった衝撃の場所「どうしよう…」焦った息子が取った対策
作家でブロガーの工藤広伸さんは認知症の母を遠距離介護している。「最期まで自宅で暮らしたい」と願う母の希望もあり、見守りカメラなど便利な道具を駆使し、月に2度は実家に帰省。数日間滞在して母のケアを続けているのだが、認知症の進行とともに母は「トイレ」の場所がわからなくなってしまうことも。帰省していたある日「トイレ」にまつわる困った問題が発生!
帰省時のモーニングルーティーン
岩手の実家に帰省した直後、わたしは洗濯を何回も行います。シーツや毛布、座椅子カバーなど、排せつ物で汚れた可能性があるものを、次から次へと洗濯します。
洗濯で忙しいある日の朝、わたしは母の朝食を作って食べてもらい、食後は歯みがきや洗顔のサポート、紙パンツの交換をしました。それらが終わるとようやく自分の準備を始めます。2階の部屋で着替えを済ませて1階に降りると、居間にいるはずの母が見当たりません。
あれ、どこへ行ったのだろう? と思っていたら浴室のほうから「ガシャーン」と大きな音がしたのです。
脱衣所にいた母の驚きの姿が
慌てて見に行くと、驚いたことに母は、洗濯カゴにお尻を出した状態で座っていました。脱衣所には洗濯機があって、すぐ横に洗濯カゴを置いています。カゴは2段になっていて洗濯物の分別に便利です。それぞれ取り外せるようになっているのですが、その日は上段のカゴを取り外していました。
認知症の母はトイレの場所が分からなくなって、浴室に向かうことがあります。以前は浴室で用を足したこともあったので、浴室に鍵を掛け、扉に「ここはおふろ」とひらがなで書いた貼り紙もしています。
今回もトイレの場所が分からなくなった母が浴室に向かったものの、鍵がかかっていて入れず、近くに「洋式トイレのような形をした」洗濯カゴを見つけ、それをトイレと勘違いして座って用を足してしまったようです。
洗濯カゴが下段だけある状態を俯瞰で見てみると、なんとなく洋式トイレのように見えてきました。母もきっと同じように考えて、トイレと間違ったのだと思います。
洗濯カゴの上に座っていた母を抱えるようにして立たせ、すぐトイレに連れていきました。母のお尻には小さな傷ができていましたが、痛みはないようです。
洗濯カゴの周りが汚れていたので床の掃除をしました。洗濯カゴを掛けておくラックが、母の体重でグニャリと曲がっていて驚きましたが、ケガがなくてよかった…。
今後は、洗濯カゴを上だけ取り外して持ち歩くときは用心しなければならないと思いました。母の行動はわたしの想像を超えてくる。とにかくビックリする出来事でした。
トイレの「便座」を上げないで!
洗濯カゴの騒ぎの数日後、わたしは東京の家に戻っていました。見守りカメラで岩手の実家の様子を見ていると、ちょうど母がトイレに入るところでした。その姿を見てわたしは、洗濯カゴの時以上に慌ててしまったのです。
実家のトイレの前には、見守りカメラを設置しています。母が紙パンツや尿取りパッドをトイレに詰まらせてしまい、何度かカーペットが水浸しになったことがあったので、母がトイレから出てくる様子を確認するために利用しています。
トイレの中の様子までは分かりませんが、トイレのドアを開け閉めするときだけ中が一瞬カメラに映ります。その日は、母が洋式トイレのフタと一緒に「便座」も持ち上げている様子が見えました。
「そのまま座っちゃだめ!!」
洗濯カゴの時と同じように、母のお尻がトイレにすっぽりとはまる画が頭に浮かびました。手足が不自由な母はひとりではトイレから抜け出せないし、水で濡れたお尻を拭いたり、汚れた衣服を着替えたりする必要もあるでしょう。
悪い妄想ばかりが膨らみ、「どうしよう、どうしよう」と言いながら、スマホに映る実家のトイレの前の映像を見ながらウロウロするわたし。こんな時、誰を頼るべきかを考えていたら、突然「カチャ」という音がして、母がトイレから出てきました。何事もなくトイレを済ませたようで、ホッとしました。
実家に帰省してトイレの対策をした
ふたたび実家に帰省し、すぐに取り掛かったのが便座の対策です。母がトイレの便座を上げて便器にハマってしまわないように、便座と便器をベビーガードでつなぎました。
ベビーガードとは、赤ちゃんが引き出しを開けて危険なものを触ったり食べたりしないよう、引き出しをロックするためのものです。わが家では認知症介護に応用して使っていて、冷蔵庫の野菜室や冷蔵室、洗濯機、台所の流しの下の扉などに設置しています。
便座と便器をベビーガードでつないだので、ロックを解除しない限り、便座は持ち上がりません。これで母はフタだけを持ち上げるようになり、便器にお尻がはまってしまう不安は減りました。
洗濯カゴとトイレの便座。困った問題が立て続けに起こりビックリしましたが、母の認知症介護は、トライアンドエラーの繰り返し。便座に関しては、しっかり対策ができてよかったと思っています。
今日もしれっと、しれっと。