《親が元気なうちに知っておきたい》相続の基本から相続税対策までFPが解説「相続の優先順位」「代襲相続」「遺留割合」とは?
いざというときに慌てるケースの多い「相続」。具体的な相続の優先順位や相続税の計算方法などを知っておかないと、余計なお金を払うことになる可能性もある。そこで、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんから、相続の基本について詳しく教えてもらった。
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教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている
相続の流れ
被相続人が亡くなってから相続の開始があったことを知った日の翌日が相続の開始日として、相続の手続きが始まります。相続は場合によっては相続人が多く、さまざまな手続きが必要かつ、期限も定められているため、しっかりと流れをおさえて計画的に対応するようにしましょう。
【1~3か月以内】相続方法を決める
相続の開始から1~2か月を目途に、遺言書の有無の確認や故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得して相続人の確認を行い、故人の遺品を整理しつつ相続財産を確認して相続方法を決定します。
また、相続には「相続をする」「相続放棄をする」「限定的に相続する」といった3つの選択肢があります。
遺産は、預貯金や不動産といったプラスの遺産だけではなく、借金などのマイナスの遺産も含まれます。マイナスの遺産を受け取りたくない場合は、遺産の受け取りを放棄(相続放棄)したり、限定的に相続する方法(限定承認)もあります。
相続放棄・限定承認をする場合には、故人が亡くなったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所で手続きを行う必要がありますので、注意が必要です。
【4か月以内】被相続人の確定申告をする
そして、相続の開始から4か月以内に、所得税の準確定申告を必要に応じて行います。準確定申告とは、被相続人が個人事業を営んでいた場合や400万円超の年金を受け取っていた場合などに必要で、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの被相続人の所得について、被相続人の代わりに相続人が確定申告をすることです。
その際、所得控除として医療費控除や社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除などの各種控除も死亡の日までに被相続人が支払ったものであれば適用することができます。
【10か月以内】相続税の申告・納税と相続財産の名義変更
遺言書がない場合や法定相続割合と異なる相続をする場合は、遺産分割協議によって誰がどれだけ相続するかを決めます。そして、相続税の申告等に必要な添付書類を集めたうえで、相続開始から10か月以内に相続税の申告・納税と相続財産の名義変更を行います。
相続の優先順位は配偶者が最も高い
優先順位と割合ともに、まずは配偶者が最も高く、常に相続人となります。
配偶者以外は被相続人との血縁関係によって相続の優先順位が決まっており、優先順位の高いグループに位置する人が相続人になり、それ以下の順位のグループは対象となりません。
優先順位は子(孫)、親、兄弟姉妹の順に決まっている
第1順位は子で、子が亡くなっている場合は、代襲相続で第1順位として孫が相続人となります。
子供も孫もいない場合は、第2順位である被相続人の両親が相続人となります。両親が既に亡くなっている場合などは、第3順位として被相続人の兄弟や姉妹が相続人となり、兄弟や姉妹が亡くなっていた場合はその子供、つまり甥や姪が代襲相続で相続人となります。
法定相続人の子供が相続する代襲相続
代襲相続とは、法定相続人である子供や兄弟姉妹が死亡などで相続できない場合にその法定相続人の子供が相続する制度で、該当するのは第1順位(子)の子供にあたる孫・ひ孫と、第3順位(兄弟・姉妹)の子供にあたる甥・姪のみです。
実際に、私の伯父が亡くなった際の相続では、妻に先立たれていたうえ、子供もいなかったため、きょうだいである母親とその兄弟が相続人になりましたが、既に亡くなっている兄弟もいたため、その子供であり、私から見ていとこが代襲相続人として相続をしました。
法定相続割合は相続人の続柄によって異なる
法定相続割合とは相続人が遺産を分割する際の基準となる割合のことで、割合は相続人の続柄によって異なりますが、一般的には次のような割合になります。
【1】配偶者と子供が相続人の場合:配偶者は遺産の1/2、残りの1/2を子供の人数で均等に分割
【2】配偶者と両親が相続人の場合:配偶者は遺産の2/3、残りの1/3を両親で均等に分割
【3】配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者は遺産の3/4、残りの1/4を兄弟姉妹で均等に分割
なお、遺産分割の協議をして合意に至った場合は、上記の割合に限りません。
一方で、遺言書があったとしても、法定相続人には最低限保証されている遺産の取り分である「遺留分」が認められ、一定割合の財産を取得することができます。遺留分が認められるのは、法定相続人である配偶者と子供などの直系卑属のほか、親や祖父母などの直系尊属です。ただし、法定相続人のうち、兄弟姉妹に遺留分はありません。
こちらも遺留分割合は相続人の続柄によって異なりますが、例えば配偶者と子供2人が相続人だった場合は、配偶者の法定相続分は1/2で遺留分割合が法定相続分の1/2なので、つまり1/4が遺留分となります。子供2人の法定相続分はそれぞれ1/4で、遺留分割合が法定相続分の1/2なので、遺留分は1人あたり1/8になります。
嫁・婿が介護をしている場合は事前に相続の相談をするのがおすすめ
嫁や婿が親を介護をしてくれている場合は、事前に相続について相談したり、遺言などで財産を残したりしておくのがおすすめです。
嫁や婿にあたる人には相続権がなく、専任状態で介護をしていた場合や介護のために仕事をやめてもらった場合などは、義理の両親が亡くなった後にトラブルとなる可能性があります。
基本的には遺言書で嫁や婿にも相続させる旨を記載しておくといいですが、その際には、法定相続人が相続する遺留分を加味して金額や割合を決めておきましょう。
相続税の計算方法
相続には基礎控除があるため、相続財産が基礎控除額を下回っている場合は相続税の申告が不要です。
基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」
相続に係る基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出されます。
例えば相続人が配偶者と子供2人だった場合は、「3000万円+(600万円×3人)」で4800万円が基礎控除額となり、相続財産が4800万円以下であれば相続税の申告は不要です。もし、相続財産が1億円だった場合は、4800万円を引いた残りの5200万円に対して相続税がかかります。
相続税は「法定相続分に応ずる取得金額×税率-控除額」
相続税は「法定相続分に応ずる取得金額×税率-控除額」で計算します。
相続財産が1億円で配偶者と子供2人の場合、5200万円を法定相続分で分けます。配偶者は、5200万円×1/2=2600万円、子供5200万円×1/4で、1300万円ずつとなります。
相続税の速算表に基づいて計算すると、配偶者は2600万円×15%-50万円となり相続税は340万円。子供2人は1300万円×15%-50万円となり、145万円ずつとなり、相続税の総計は630万円になります。
ここからさらに実際に引き継いだ割合に応じて、各人に振り分けます。配偶者は1/2を相続をしたなら、315万円、子供は1/4ずつ相続したなら、各157.5万円となります。
また配偶者の場合は1億6000万円または法定相続分相当額が非課税となる相続税特例が適用されるため、相続税がかかりません。
相続財産が多いほど税率が高く、6億円超の場合は税率が55%にもなるため、相続財産が多くなりそうな場合はあらかじめ税理士にも相談して対策をしておくといいでしょう。
相続税を抑えるポイント
財産が多い場合は多額の相続税が発生することになりますが、いくつかポイントをおさえておくと、相続税を抑えることができます。
生命保険に加入する
まず1つは生命保険に加入すること。被相続人の死亡で発生した生命保険金は相続税の課税対象となりますが、「500万円×法定相続人の数」の計算式で算出される額の控除があるため、多額の現金を残すよりは、死亡保険金という形にしたほうがメリットがあります。
また、不動産など迅速な現金化が難しい相続財産が多い場合などには、死亡保険金を相続させることで現金が増えるため、相続税の支払いがしやすくなります。
嫁・婿を養子にする
嫁・婿を養子縁組することで相続人の数を増やし、基礎控除額を増やして、相続税の負担を軽減できる可能性があります。
このほか、亡くなる前に資産を介護費用などに使うという手もあります。相続財産の総額は少なくなってしまいますが、相続税率が上がる基準を少し超える財産であった場合は、亡くなる前に被相続人のために使い、基準額を下回るようにしたほうが結果的に残せる財産が多くなるでしょう。
いずれにしても、相続財産が多い場合はあらかじめ税理士と相談しておくことをおすすめします。
取材・文/新藤まつり
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