「野菜=健康的」でも野菜“ばかり”食べるのはNG!「野菜ジュース+α」「和菓子の活用」など不足しがちな栄養素を補うコツを管理栄養士が指南
健康的な体でいるために欠かせないビタミンやミネラルなどの「微量栄養素」。野菜や果物に多く含まれる微量栄養素は、毎日継続して取り入れる必要があるが、「毎日『野菜だけ』でお腹を満たすのは、決して理想的とはいえません」と、料理研究家・管理栄養士の関口絢子さんはいう。『食が細くなってきたら! 少食でもちゃんと栄養がとれる食べ方』(アスコム)の著者でもある関口さんが、少食でもしっかりと栄養をとるコツを教えてくれた。
教えてくれた人
関口絢子さん/管理栄養士
川村学園短期大学食物学科卒業。「食とアンチエイジング」の関係が注目されていなかった20年以上前から、インナービューティースペシャリストとして情報を発信し続け、健康・美容・ダイエットに関するレシピや栄養情報を提供。2020年に開設したYouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」は登録者数60万人超え。米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー、日本抗加齢医学会認定抗加齢指導士の資格ももつ。
野菜“ばかり”の食事のデメリット
野菜中心の食生活はヘルシーな印象がある一方で、体に必要な栄養素が不足する可能性があることに注意が必要だ。
過度に続けていると、たんぱく質やエネルギー、動物性食品に多く含まれる栄養素が足りずに体が弱くなったり、脂質が不足して脂溶性ビタミンの吸収ができないなど他の栄養素の吸収に影響を及ぼしたりすることもある。
「野菜ジュースだけ」もNG
「100%野菜ジュースは野菜を煮て粉砕し、絞っているので、β-カロテンの供給源としては非常に効率的です。緑黄色野菜が不足しているときには手軽に栄養を摂取できるので、とくにおすすめです」(関口さん・以下同)
とはいえ、野菜同様にたんぱく質や脂質が含まれておらず、さらには繊維も取り除かれているため、野菜ジュースだけでは体に必要な栄養をとることはできない。そこで、関口さんは「野菜ジュース+α」で足りない栄養素を補う組み合わせを提案する。
「栄養素は、お互いに助け合ってはじめて体の中でしっかり働きます。『○○だけ食べていれば安心』という極端な食べ方では、かえって体調を崩してしまうこともあるのです」
【野菜ジュース+αの組み合わせ例】
《野菜ジュース+ゆで卵》たんぱく質をプラス
朝食や軽食におすすめの組み合わせ。
《野菜ジュース+ハムたまごサンド》たんぱく質、炭水化物をプラス
朝食や昼食、軽食におすすめ。 血糖値の上昇をゆるやかにするためには、 全
粒粉パンやライ麦パンなどを選ぶとよい。
《野菜ジュース+チーズ》たんぱく質、カルシウムをプラス
朝食や軽食におすすめ。カルシウムで骨や歯の健康維持の効果も。
《野菜ジュース+ナッツ》食物繊維、不飽和脂肪酸をプラス
小腹がすいたときや間食におすすめ。
《野菜ジュース+納豆ご飯》たんぱく質、炭水化物、食物繊維をプラス
朝食や昼食など、 時間がなくてもしっかり栄養をとりたいときにおすすめ。
亜鉛不足のトラブルには和菓子
亜鉛は、貝類などに多く含まれる栄養素。味覚・免疫力・皮膚や粘膜の健康などに関係しているミネラルで、不足すると味覚障害・免疫力低下・皮膚炎などにつながる。
「さらには、皮膚だけでなく腸粘膜までもろくなり、未消化の食べ物や毒素が腸壁から血液中に漏れ出る「リーキーガット(腸漏れ)」を引き起こすこともあるので、亜鉛不足はかなり深刻なトラブルといえるでしょう」
体内に存在する量はわずかだが、普段の食事量が少なかったり、肉を避けたりすることが多かったりすると不足している可能性がある。あさりやしじみの汁物や缶詰や瓶詰めの貝類からもとることができるが、亜鉛を多く含むあんこやきなこを使った「和菓子」を取り入れると手軽で継続もしやすいだろう。
「和菓子は脂質が控えめというメリットがあるので、適量をおやつにいただくのもよいでしょう」
また、調整ココアのように砂糖や添加物などが入っていない「純ココア」には、亜鉛に加えてポリフェノールや食物繊維も含まれている。ココアとして飲むのはもちろん、ヨーグルトなどにトッピングすれば、より簡単に取り入れることができる。
食事からとりにくい栄養素を補う食材6選
意識しないと不足しがちになる栄養素は、スーパーで買える身近な食材でカバーしよう。
「サプリメントに頼りすぎて食事が疎かになってしまわないよう、普段の食事に手軽に取り入れられるものを選んでみました」
カルシウムとたんぱく質をプラス「スキムミルク」
《活用法》シチューやスープに加える、コーヒーや紅茶に混ぜる、お湯に溶かしてホットミルクにする
牛乳から脂肪分を取り除いたスキムミルクは、低脂肪で高たんぱく。
「毎日のカルシウム補給にも最適です」
鉄分と食物繊維の宝庫「プルーン」
《活用法》1日2~3個を目安にそのまま食べる、刻んでヨーグルトに混ぜる
生のプラムを乾燥させたプルーン。
「鉄分、食物繊維、カリウム、ポリフェノールなどを手軽に補給できる優れものです」
たんぱく質が木綿豆腐の約7倍「高野豆腐」
《活用法》煮物に加える、細かく刻んでひき肉に混ぜる
高野豆腐は、凍らせた豆腐を乾燥させた保存食。
「1枚あたり木綿豆腐の約7倍にあたるたんぱく質を含んでおり、肉や魚が減りがちな食生活でも、手軽に良質なたんぱく質を補給できます。また、カルシウム100m(牛乳1/2本分)と、閉経後の女性に不足しがちな栄養素も豊富です」
たんぱく質やカルシウム、食物繊維が豊富「きな粉」
《活用法》ヨーグルトや牛乳・スムージーに混ぜる、もちや団子にかける、お菓子作りや和え物(さつまいも、ほうれん草など) に使う
女性ホルモンに似た働きをする成分の大豆イソフラボンが、骨の健康維持に役立つ。
「大豆を煎って粉にしたきな粉は、良質なたんぱく質やカルシウム、食物繊維を豊富に含んでいます」
鉄分・カルシウムが豊富「ひじき」
《活用法》ひじきの煮物、炊き込みご飯や混ぜご飯にする
ひじきは海藻の一種で、鉄分が豊富。
「ただし、吸収されにくい非へム鉄なので、吸収を促すたんぱく質やビタミンCと組み合わせるのがポイント。ほかにミネラルや食物繊維、牛乳の約12倍にものぼるカルシウムも含まれ、健康維持に役立ちます」
主食の一部に「オートミール」
《活用法》朝食(ヨーグルト・牛乳に混ぜてフルーツやナッツをトッピング)、おかゆ(スープに加える、お好みの具材と一緒に加熱してリゾット風にする)
オーツ麦を加工したオートミールは、精白米やほかの穀物に比べて栄養価がとても高い。
「白米の約20倍、玄米の約3・5倍にも及ぶ食物繊維をはじめ、精白米の約2倍含まれる植物性たんぱく質、さらに鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛といったミネラルも豊富です。また、ビタミンB群や抗酸化作用のあるビタミンEも含まれており、体の代謝をサポートします」
