77歳現役医師が考案した“長生き習慣”を解説 いつもの買い物をトレーニングに「店内をくまなく見てウォーキング」「会計が早く終わりそうなレジ探しで状況判断力を養う」
長く「動ける体」を保つために大切なのは「生活習慣」だと話すのは、『医師のぼくが50年かけてたどりついた長生きかまた体操』(アスコム)の著者で77歳の医師・鎌田實さん。鎌田さんによると、年齢を重ねるごとに増える健康に関する悩みも、毎日の習慣によってコントロールすることが可能になるそうだ。普段の生活や通勤時などに実践できる、簡単な運動習慣の取り入れ方を教えてもらった。
教えてくれた人
鎌田實さん/医師
かまた・みのる。東京都医科歯科大学医学部卒業。1988年、諏訪中央病院院長に就任。脳卒中の死亡率が全国ワーストクラスだった長野県で減塩運動をスタートさせ、「住民とともにつくる医療」を推進。2005年より、同院名誉院長に就任。2018年からは佐賀県民を健康に導くため、「鎌田 實の『がんばらない健康長寿実践塾』(通称:鎌田塾)」を開催。著書に、『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生きかまた体操』(アスコム)、『医師のぼくが50年かけてたどりついた 鎌田式長生き食事術』(同)など。
生活習慣の改善は、プラスαのひと工夫をすること
健康のために必要なのは、今の生活をガラッと変えることではなく、仕事や家事、買い物、散歩など、毎日当たり前のようにしていることに、少しだけ脳トレや筋トレ、ストレッチなどの要素を加えること。
「たとえば、散歩のときに歩き方を変えてみる、読書のときに少しだけ音読してみる。そんなふうに、いつもの習慣をちょっと工夫するだけで健康寿命が延び、生活の楽しみも増えていきます」(鎌田さん・以下同)
脳を元気にする鎌田式「歩き方改革」
「ウォーキングは副作用ゼロの『歩く薬』」と鎌田さん。そして歩き方は少し変えるだけでも効果が高まるという。意識すべきは、歩数よりも歩く速度だ。米ピッツバーグ大学の研究でも、歩く速度によって平均寿命に差が出ることがわかっている。
歩幅を10cm広くする「幅広歩行」を取り入れると歩く速度が自然と速くなり、ウォーキングに30秒程度取り入れるだけでも効果アップが期待できるという。また、ウォーキングは単に歩くだけでも、脳血流が上がり脳を活性化させるなどの効果があるが、鎌田さんはさらに脳を使うひと工夫を追加することを推奨している。
「たとえば、ポストや花や車など『赤いもの』をいくつ探せるかチャレンジすると、集中力や注意力、視覚情報の処理能力が鍛えられますし、車のナンバーを覚えて歩きながら何度か思い出してつぶやけば、海馬が刺激されて、短期記憶力が高まります」
いつもの買い物を「買い物トレーニング」に
普段のスーパーでの買い物も、意識次第でトレーニングに早変わり。実際、スーパーでの買い物は、要介護状態予防のリハビリとして活用されることもあるほど、認知機能や身体機能を高める効果があるそうだ。「買い物トレーニング」では、お店の中を広いトレーニング場と見立てて、楽しみながらやるのがおすすめ。まずは店内をくまなく見て回ることで、ちょっとしたウォーキングの効果も得ながら、お買い得品を探してみよう。
「ただし、カートに寄り掛かったまま、だらだら歩きはNG。背筋を伸ばして姿勢よく歩きながら、お目当てのものをカゴへ。カートは使わず、カゴを手で持てば、腕や肩の筋肉も鍛えられます。さらに、下の棚の商品を取るときは、かがまずにスクワットの動きで。工夫次第でさまざまな体の部位の貯筋もできます」
また、買い物は脳トレのチャンスでもある。最初に決めた予算と時間をはみ出さないように計算しながら買い物をすれば、計算力や計画性を鍛えることができる。
「さらに、会計が早く終わりそうなレジを探すことは、視覚的情報から状況判断力を養うことにもつながります」
電車通勤でもエクササイズが可能
電車通勤をしている場合は、お金と時間を使ってジムに行かずとも、通勤時間をエクササイズをにあてることができる。まずは駅のホームまでエスカレーターやエレベーターは使わず、階段を使って向かうことで、脚力を鍛えることができる。電車を待っている間はホームの端から端まで歩くことで、ただの時間つぶしではなく、ウォーキングの時間に変えることができる。
「あるいは、軽いスクワットもおすすめです。代謝が上がって、仕事に取り組む活力がみなぎってくるのを感じるはずです」
電車内の吊り革もトレーニング道具にぴったりだ。立って吊革につかまり、ひと駅分、かかとを上げてつま先立ちをすれば、ふくらはぎや腹筋、骨盤底筋、内ももなどさまざまな筋肉を鍛えることができる。
「吊り革につかまりながら上半身をひねるのも効果的です。電車の揺れをグッとこらえるだけでも、自然と体幹が鍛えられます」
デスクワークでは「貧乏揺すり(ジグリング)」
会社でデスクワークをする際は、「貧乏ゆすり」をするのがおすすめだ。行儀が悪いと言われがちだが、貧乏ゆすりには「ジグリング」という体操名があり、股関節の骨に適度な刺激を与え、軟骨の再生を促す効果があるとされる。軟骨がすり減って股関節が変形する、変形性股関節症の運動療法にも取り入れられているそうだ。
「また、1時間のうち、2分間は立ち上がって軽い運動を心掛けてください。ぼくは原稿を書くときは、30分ごとに、スクワットや1分間ジャンプなどで固まった体をほぐして、血液循環をよくしています」
休憩タイムに1日2杯の緑茶
仕事の休憩時間には、緑茶を飲むのがおすすめだ。国立長寿医療研究センターの研究では、緑茶を1日に2杯以上飲むと、認知機能の低下リスクが約30%下がったと報告されている。これは、緑茶に含まれるカテキンやテアニンなどのポリフェノールが持つ、抗酸化作用や抗炎症作用によるものだ。さらに緑茶は、アルツハイマー型認知症の要因であるアミロイドβの増加を抑える働きも期待できる。
「緑茶のカテキンは80度以上で溶出されます。熱いお湯でじっくり淹れた、渋みの効いたお茶で、心身をリラックスさせながら、脳活もしてしまいましょう」
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