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暮らし

専門医が教える「自宅で最期を迎えるための準備」訪問診療と家族への伝え方

 老後人生の締めくくりとして考えておきたいのが「理想の死に方」だ。年間150万人が亡くなる多死社会を迎えた日本だが、希望通りの死に場所で最期を迎えられる者は少ない。住み慣れた家で家族に見守られて旅立つーーそんな在宅死の幸福をレポートする。

教えてくれた人

岩間洋亮さん/東京都品川区医師会理事・心越クリニック院長

「在宅死」を実現するための仕組みが周知されていない

「あなたは、死期が迫っているとわかったときに、人生の最期をどこで迎えたいですか」

 日本財団が2021年に行なった「人生の最期の迎え方」に関する全国意識調査の結果、67~81才の58.8%が「自宅」と回答。その理由の多くは「自分らしくいられる」「住み慣れた場所で落ち着くことができる」「家族に囲まれていたい」というものだった。

 だが、現実にはこれが多くの人にとって“叶わぬ願い”になっている。

 厚労省の人口動態統計(2023年)によれば、実際に自宅で亡くなった人の割合はわずか17%。医療機関が65%で最も多く、介護施設で亡くなった人も16%いる。

 東京の品川区医師会理事で地域の在宅医療全般を担う心越クリニック院長の岩間洋亮医師によれば、自宅で最期を迎えるための仕組みが周知されていないことが一因だという。

「あらかじめ訪問診療や往診のクリニックと契約を結んでいれば、自宅での看取りは可能です。訪問診療医が死亡診断書を作成して、手続きを進めることができる。しかしこうした契約を知らない人が多く、在宅死の準備がなされていないのです。医療機関とつながっていない状態で亡くなると『異状死』として警察案件となり、行政解剖や司法解剖に回されかねない。これでは本人が望む穏やかな死とはほど遠い」

 訪問診療は通院が困難な患者のもとに医師が定期的に通い、治療や薬の処方、健康管理などを行なう制度。

「患者さんの要請を受けて医師がその都度診療に赴く『往診』と違い、毎週この日のこの時間と決まって訪問するものです。地域内で訪問診療に対応している病院と契約を結ぶことで訪問診療のサービスを受けることができる。もちろん医療保険や高額療養費制度が使えます」(岩間医師)

「最後は家で死にたい」意思表示が大切

 穏やかな在宅死を実現するには自分に合った訪問医選びが欠かせない。医師によっては希望する処置をしてくれないケースも少なくないからだ。

 岩間医師が勧めるのが、「地域の医師会」に聞くことだ。

「“自宅での看取りを考えているのですが、いい訪問診療の先生はいますか?”と聞けば、医師会はちゃんと教えてくれます。もしその訪問医が合わないと思ったら、ケアマネさんに相談して、別のクリニックを紹介してもらえばいい。相性のよくない医師に我慢しながら従っていると、自分が望まないような医療を提供されることにもなりかねません」

 訪問診療を請け負う病院は24時間365日対応施設が多く、容体が急変すれば夜中でも駆け付けてくれる。

 大切なのはこうした制度を把握したうえで、日頃から在宅死の希望を家族が共有しておくことだと岩間医師は言う。

「“最後は病院じゃなくて家で死にたい”という患者さんの意思表示が大切。認知症になってからでは意思決定ができないので事前に家族や主治医とよく話し合っておくことが前提になります」

 意思疎通を図り、準備を整える。そのうえで実現できる在宅死。自宅で最期を迎えるメリットはどこにあるのか。

「最大の幸せは、家族がそばにいることです。最後に“いままでありがとう”と感謝の気持ちを伝えることができますし、辛い時には痛みなどをすぐに伝えることもできる。愛する家族と一緒に最期を迎える時間を持てることには、大きな意味があると思います」(岩間医師)

 家族に介護の負担はかかるが、それでも岩間医師は、ほぼ100%の遺族から「本人の願いを叶えてあげられてよかった」との言葉を聞くという。

※週刊ポスト2025年10月10日号

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