《「意味づけ」があなたの気分を決めている》スポーツドクターが解説する「不機嫌」な状態を作り出す脳の仕組み “雨の日は憂鬱”も後天的なもの?
雨の日に憂鬱になったり、些細なことでイライラしたり。日常の出来事に振りまわされてしまったり──。人がネガティブになってしまう背景には、人間の脳の働きが関係している。スポーツドクターとして、オリンピック選手から経営者、主婦まで幅広くメンタル・トレーニングを提供してきた辻秀一さんの著書『いつもごきげんでいられる人、いつも不機嫌なままの人』(サンマーク出版)から、そのメカニズムを一部抜粋、再構成して紹介する。
* * *
人は放っておくとネガティブになる
人間の認知する脳の働きは、とてつもなく進化してきました。私たちはつねに認知する脳を働かせて、生きていると言っても過言ではありません。
最初は生命維持のために認知の脳をフル回転させて生き延びようとしましたが、文明が発達し、生命の危険にさらされるようなことが少なくなると、今度は生命維持以外のことに認知の脳を使うようになりました。
より便利に暮らすために、言葉を生み出し、道具をつくり、機械をつくり、そして、インターネットをつくったのです。
このように私たちは、どうすればもっと便利に効率的になるかと、考え、判断し、行動することを繰り返してきました。その結果、つねに認知の脳を“全開”にして生きるようになってしまったのです。
こうしている間も、私たちは認知の脳をフル回転させています。
これを読んでいるあなたも、認知の脳をフル回転させて、活字を追い、私の言葉にさまざまな意味をつけながら、理解しようとしているわけです。
人間は外側の状況を認知して行動する。
つまり外側の出来事に認知の脳が“接着”して生きるようにできているのです。
悲しいかな、ふだん私たちは認知の脳のこの働きを止めることはできません。
ずっと外側の世界に接着したまま。この働きが止まるのは、死ぬときだけです。
認知の脳が発達してくれたおかげで、人間は高度な文明を築くことができましたが、この認知の脳が過剰に発達したことで、私たちの心に不機嫌、すなわちストレスが起きるようになりました。
みなさんは、まだ起こっていない未来のことについて思い悩んだり、不安で眠れなくなったりしたことがありませんか? まだ起こっていないことについてそんなに考えられるなんて、思えばすごい脳の働きですよね。
認知の脳は、危険とか恐怖を察知しやすいようにできているので、認知の脳を使えば使うほど、マイナス面やウィークポイントが見えてくる。そして心はその影響を受けて、つねに「不機嫌」に傾きやすい状態になっているというわけです。
現代人はみんな、基本的にマイナスに認知しやすいということなのです。
しかも、人間はほかの動物よりいっそう認知の影響を受けやすい生き物です。
ヒツジがオオカミのしっぽを見つけたら、反射的に逃げる。
ヒツジはそのとき「やばい」とか「怖い」と感じているのでしょうが、人間はもっと感情が豊かですから「死ぬのは怖い」「かまれたらどんなに痛いだろうか」「仲間が心配だ」「自分はどうなるんだろう」とか、不安や恐怖やゆらぎという感情をヒツジよりもっと複雑につくりだしてしまうわけです。
「意味づけ」があなたの気分を決めている
このように認知の脳は、絶えず外界を見て判断します。
そして、外側の出来事に“意味”をつけるという反応をします。
私はこの認知の脳による反応を「意味づけペタンコ」と表現しています。
では、この意味づけペタンコの反応が心に及ぼす影響についてもう少し具体的に考えてみましょう。
