自宅で最期を迎える4つの準備と心構え 終末期にかかる費用は在宅なら病院の5分の1
コロナ禍は、病床ひっ迫や家族の面会禁止など、病院の脆さを浮き彫りにした。それにより、自宅で最期を迎えたいと考える人も増加傾向にある。では、実際に在宅医療を選んだ時にかかる費用はどのくらいかかるのだろうか。
1.自宅で死を迎えるのにかかるお金を確認
終末期にかかる費用を比較した場合、自宅なら病院の5分の1程度におさまる。『自宅で最期を迎える準備のすべて』(自由国民社)の著者で、正看護師の大軒愛美さんが解説する。
「がんで入院している場合、1か月にかかる入院費と治療費は26万円程度です。余命1か月で在宅医療に切り替えた場合は、死亡診断書も含めて約5万円、余命3か月なら月2万8000円ほどです。
これほど在宅が安くなる理由は、高額療養費制度の仕組みにあります。訪問診療は外来扱いになるので、入院と比べて約4万円も安くなります。
また、在宅なら介護保険サービスを使えますが、入院していると使えないことも重要です」(大軒さん・以下同)
2.民間の医療保険を見直しておく
民間の医療保険に入っている人は、さらに安くなる可能性がある。
「たとえば退院後にかかる費用の一部を負担してくれる『退院後通院治療保障特約』などは、在宅医療を受ける人も対象です。ここ数年、在宅医療の費用まで保障する特約が増えています」
自分がどこで死ぬかを考慮した上で、医療保険を見直しておきたい。
3.葬儀やお墓のことを考えておく
病院で亡くなった場合、事前に葬儀社を決めていなくても、遺体は霊安室に運ばれ、病院と提携している葬儀社が手配される。しかし、自宅で看取る場合は自分たちで前もって葬儀社を決めておかなければ、遺体を誰も運び出してくれない。
「コロナ禍の影響もあり、参列者を制限する『家族葬』が人気になっています。しかし、あまり小規模にしてしまうと周囲の親しいかたが、故人が亡くなったことを受け入れられないというデメリットもあります。『死去=すべてが終わった』と考えるのは早計です。お墓に入り、家族がひと安心できる状態までイメージしなければならない」
4.家族の「心のケア」も大事 看取り士に頼る手も
完璧な最期を迎えるには、遺された家族の「心のケア」への配慮が欠かせない。
「亡くなる場所は病院が常識というこの時代に、自宅での看取りを選択した遺族を襲う悲しみは想像以上に深い。それを支えるため、終末期に入ったら看取り士を頼ってもいいでしょう。
看取り士はまだ全国に1000人ほどしかいませんが、亡くなるまでの数か月前からかかわり、納棺までのプロデュースや支援、臨終の立ち会いなどをします。家族の相談も受けるので、大切な人を亡くした悲しみを乗り越える手助けにもなります」
終末期は、容体が悪くなるほど患者の人格が別人のように変わってしまうことがある。ひとりでがんばっていると、つらくて潰れてしまうこともよくあることだ。
「日常と違うことをするので、覚悟を決められなかったり、戸惑ってしまう人は多い。自宅で看取ることは難しいと考えている人が多いですが、それは何をやればいいのか知らないから。ひとりで抱え込まなくていいとわかるだけで、ハードルは下がるはずです」
コロナ禍の影響で病床不足が社会問題となっている現在。自身の理想の最期について考えるいい機会かもしれない。
※女性セブン2021年10月14日
https://josei7.com/
●菊田あや子さん、母の遠距離介護と在宅での看取りを経て『終活ガイド』を取得