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「介護、頑張りすぎていませんか?」春やすこが8年間の壮絶介護で得た教訓 「介護保険の点数は使い切れ」と語る理由や“一人で抱え込み心身が壊れる前に知っておきたいこと”

 女性漫才コンビ「春やすこ・けいこ」として、1980年代の漫才ブームを牽引した春やすこさん(64歳)。約8年間両親を在宅介護し、当初は3時間ごとのおむつ交換などを一人で抱え込み、心身共に限界寸前だったという。そこから「ずぼら介護」に目覚めて乗り越えた春さんに、今の思いを聞いた。

介護と家事で1日が終わり、精神的に追い詰められた

――介護を振り返ってみて、今思うことお聞かせください。

春さん:初めの真面目な介護の時に、「なんであんなにむきになって真面目にやってたんやろ」っていう後悔はありますね。本当にしんどかったので。当時は、父のおむつ替えが3時間ごとにあるので、夜中の12時、3時、朝6時に起きて交換していましたし、6時のおむつ交換が終わったら家族のご飯を作り、階段を上れない母に食事を運び、家事をして、9時になったらおむつ替え……という、おむつ替えと家事で1日が終わる感じでした。

 私1人で寝たきりの父をお風呂に入れることはできないので、デイサービスで週2回入れてもらっていたんですけどね。それも迎えが来てくれた時に車椅子に乗せるので重労働でした。ケアマネジャーさんの「介護点数(単位)を遠慮せず使ってください」という一言で、もっと人に頼る「ずぼら介護」に目覚めましたが、あの助言がもう少し遅かったら、私は精神的に潰れていたかもしれません。とにかく、介護はずぼらが一番です。

 両親の介護が終わったあと、介護由来と見られる腰椎ヘルニアになって手術をしたんです。介護が直接の原因かは断定できませんが、父を車椅子に移乗させる際の腰への負担が積み重なり、ヘルニアにつながったのかもしれません。体力的にも大変でした。

介護をしたから、人とのつながりを実感できた

――施設の入居は考えなかったのでしょうか?

春さん:親の介護でかかるお金は、両親の年金でやりくりしていたんです。年金だけでは施設に入れることは不可能だったし、両親も自宅がいいと言っていたので、頑張るしかなかった状況でもありました。

 でも、介護をしてよかったですよ。子供たちも手伝ってくれて、いい子に育ったことが再確認できたし、ご近所さんや友達が私を気にかけてくれて、私がしんどそうな時に助けてくれたりしたので、いい人たちが周りにいっぱいいることが実感できたのもうれしかったです。今でもご近所さんと仲良くさせてもらっていて、お友達も大事にしていきたいなと思っています。

――いつか自身が介護を受ける際の準備などはしていますか?

春さん:全然そんなこと考えたこともなくて。ただ、私はホームに入りたいので、入居する資金は残しておきたいと思ってます。あんなしんどい思いを子供たちにしてほしくないので。だけど、子供たちは私が介護してるのを見てきたから、家で介護したいと言うかもしれませんね。

介護の心配をするよりも、元気なおばあちゃんになれるように努力せよ

――親の介護が始まった人から相談を受けたら、どんなアドバイスをされますか?

春さん:「介護保険の点数は全部使い切った方がいいよ、逆算して上手に使い」って言いますね(笑い)。できるだけ自分を追いつめないで、人に頼って、時には息抜きもする。自分の好きなこともしないと続かないので。介護は終わりが見えませんからね。だから「ずぼら介護」を目指していただきたいと思います。

 私も「ずぼら介護」をする前は追いつめられていて、ストレスから両親に声を荒らげてしまうこともあったし、父に「とっとと死んでや!」と暴言を吐いてしまいました。だからこそ、介護者が追い詰められて事件が起きてしまう現実も、その気持ちは理解できます。もちろん、決して許されることではありませんが、それほど一人で生真面目に抱え込む介護は苦しいものです。

 家族や友達に頼るのはもちろんですが、ケアマネさんは介護の知識も経験もある一番の味方です。格好つけたり、見栄を張ったりしないで、ケアマネさんに相談するのが一番いいと思います。

 もちろん、ピンピンコロリと逝き、一度も介護を受けずにすむ人生もあるかもしれません。介護はするほうはもちろん大変ですが、それ以上に受けるほうも大変だと思うんです。ずっと申し訳ない気持ちでいると思うんですよね。母もよく「無理しないで」と声をかけてくれました。

 だから介護の心配をするよりも前に、私たち自身がずっと元気でいられるように、運動習慣をつけて体力を整えて、骨も丈夫にして、元気なおばあちゃんになれるように頑張るのことも大事だと思います。

◆タレント、俳優・春やすこ

はる・やすこ/1961年6月15日、大阪府生まれ。1976年に漫才コンビ「春やすこ・けいこ」でデビューし、アイドル的な人気で漫才ブームを牽引。1981年に「上方漫才大賞」新人賞受賞を受賞。コンビ解散後は俳優としてドラマや映画、舞台で活躍。2009年より約8年間、両親の介護を行った。

取材・文/小山内麗香

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