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健康

《温泉療法専門医が解説》健康に役立つ温泉の入り方「就寝2時間前には入浴を終える」、「10分程度を目安にする」

 温泉地での入浴は、自宅での入浴よりもさらに健康効果が増すという。また、銭湯通いも健康にとってうれしい効果があるそうだ。『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)を上梓した、温泉療法専門医の早坂信哉さんに、温泉や銭湯通いのメリットについて詳しく教えてもらった。

教えてくれた人

早坂信哉さん/温泉療法専門医

 はやさか・しんや。温泉療法専門医、博士(医学)、東京都市大学教授。自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て現職。7万人を超える入浴習慣を医学的に調査してきた”入浴のスペシャリスト”で、日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、日本銭湯文化協会理事、中央温泉研究所理事、日本温泉気候物理医学会理事、日本入浴協会理事も務める。著書に、『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)など。

家では得られないリラックス効果が得られる「温泉」

 通常の入浴でも、温熱作用などによるリラックス効果は得られるが、温泉地での入浴は「転地効果」と呼ばれる作用が加わる。自然の景観や澄んだ空気、静かな環境、おいしい食事など、日常を離れた温泉地ならではの外的要因が五感に働きかけることで、心身の回復を促すとされるものだ。

 ポイントは「日常から離れる」ことと、入浴時に”積極的に”ぼんやりすることだ。景色をぼんやり眺めたり、鳥の声に耳をすませたりして、考え事はせず、とにかく湯船に浸かってぼんやり過ごすことを早坂さんはすすめている。

「もちろん、脳を刺激するスマートフォンなど、情報機器を持ち込んではいけません。こうした時間が、脳の過活動を鎮め、交感神経の過剰な働きを抑え、副交感神経が優位になりやすい状態を作ります」(早坂さん・以下同)

温泉は1日2~3回程度に

 せっかく温泉地に来たんだからと、1日に何度も温泉に入ろうとする人も多いだろうが、健康のことを考えるのであれば要注意。温泉効果を得たいのであれば、1日2~3回に留めるのが最もいいという。

 温泉には、塩化物泉や硫酸塩泉などの泉質があり、豊富に含まれたミネラル分が皮膚の表面に膜を作り、湯冷めを防いでくれるが、何度も入ってしまうと、体に熱がこもり、ほてりが収まらなくなったり、眠れなくなったりすることがあるためだ。

「よく眠れなければ当然、疲れも取れないでしょう。温泉に入ってかえって疲れた、だるくなった、という現象を『湯疲れ』などと呼ぶこともあります。湯疲れは体温の上がりすぎ、医学的に言うと熱中症になっている可能性があります」

入浴のタイミングや時間も重要

 さらに、入浴のタイミングも意識しておきたいポイント。家庭のお風呂であれば、就寝の90分くらい前までに済ませるのが理想だが、温泉の場合は深部体温がなかなか下がらないため、2時間くらい前に入浴を終えておくのがおすすめだ。

 また、温泉ではついつい長風呂をしたくなるものだが、長く入ると脱水などの危険も高まる。「10分間程度を目安にするのが安心です」と早坂さんは言う。

「私は仕事柄、1日に何か所も温泉に入らなければならないことがあります。そういうときは1回の入浴時間は2~3分にします。もっと入りたい、と思うくらいで止めておくのが温泉を上手に使うコツです」

シニアには「やさしい温泉」がおすすめ

 温泉の泉質の違いによっても、シニアにおすすめしやすいものとしにくいものがあるという。「わかりやすく説明するため、私は『強い温泉』と『やさしい温泉』と呼んでいます」と早坂さん。

 強い温泉は、酸性泉、硫黄泉、含鉄泉、放射能泉などで、においが強かったり、色がついていたり、ぬるぬる・ぴりぴりしたりするのが特徴だ。シニアにおすすめなのは、単純温泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉などの「やさしい温泉」で、強い温泉と対照的に、においが弱い、無色透明、サラサラしているといった特徴がある。

「これらの泉質は作用がおだやかで刺激が少ないため、体力が落ちている方や高齢の方でも安心して入浴を楽しめる、万人向けのお湯です。疲労回復やリラックスを目的とした湯治にも適しています。湯船から上がったら、シャワーで洗い流さず、タオルで軽く水分を拭き取るだけで問題ありません」

週2回の銭湯で介護リスクが低下

 温泉まで行かずとも、家の近くの銭湯を楽しむというのも健康維持には最適だ。銭湯の広い浴槽や高い天井がもたらす開放感や、地域住民との交流、歩いて通うという軽い運動が複合的に作用し、心身の健康維持に寄与するためだ。

 平均年齢約80歳の高齢者26人に週2回、4週間の銭湯通いを実施してもらい、身体機能の変化を測定した結果、目を開けたまま片足立ちをする時間は36.7秒から51.2秒に、上体起こしの回数は4.0回から4.9回に、椅子から立ち上がって3m先を折り返して戻る動作に係る時間は7.5秒から7.0秒と、それぞれスコアが向上したという。

「たった週2回、4週間で、これだけの改善が見られたというのは予想外でした。これは、銭湯通いがバランス感覚や筋力、歩行能力の向上に寄与し、転倒や要介護リスクの低下にもつながる結果と言えるでしょう」

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