血糖値の上昇を抑える体質作り <曜日別の1週間メソッド>薬に頼らず数値を下げる“生活習慣”と“体操”を専門医が指南
まずは週の初めとなる月曜日。
「週末の休みを終えて1週間が始まる月曜の朝はストレスを感じやすい。“気合を入れよう”と栄養ドリンクを飲むといった行動は避け、むしろ心をなるべく穏やかに保つように心がける。起床したら腹式呼吸を10回。5秒かけて鼻から息を吸って5秒かけて吐くを繰り返します」
火曜日は食事を見直す日にする。炭水化物が多くないか、早食いになっていないかなどを確認。そのうえで「食べる順番」に注意する。
「ご飯を食べる順番を変えるだけで血糖値が199から126に下がったという研究結果があります。『カーボラスト』と言い、肉や魚、野菜を先に食べ、白米を最後に食べるのです。そうすることで白米の糖質が急激に吸収されることを防ぎ、血糖値の上昇が緩やかになります」
加えて、矢野さんが血糖値を下げるために勧める食材は「ブロッコリー」だという。
「ブロッコリーに含まれる栄養素スルフォラファンは、糖質から得たエネルギーを体内で効率的に消費する褐色脂肪細胞を活性化するといわれます。ブロッコリー以外にカリフラワーやキャベツにも多く含まれます。
私は茹でてマヨネーズをかけて食べていますが、苦手な人は野菜炒めなどに投入して食べることでも効果があります」
食事と食事の間を十分に空け、23時や0時に就寝する人なら、20時前には夕食を済ませることが肝要だという。
週の真ん中にあたる水曜日は簡単な運動で体を動かすことを意識する。
「激しい運動は血糖値を上昇させますが、ウォーキングなどの有酸素運動には良い効果が期待できます。血糖値は食後30分~1時間で上昇するので、その前の食後15分以内に体を動かすことです。
具体的には大きな筋肉を動かすのが良い。広背筋や大腿筋はエネルギーを効率良く消費するので、ここを意識します」
下図は矢野さん考案の広背筋や大腿筋を手軽に動かす体操だ。
足を肩幅に開いて背筋を伸ばし、顔の横で軽く握った手を斜め上に伸ばす「バンザイ体操」は、腕を引き寄せる際にポイントがある。
「肩甲骨を互いに引き寄せるイメージで両腕を最初の位置に戻します。肩甲骨周りを意識して筋肉を動かすことで糖質が消費される。毎食後に10回1セットをやりましょう」
肩幅より少し広めになるようにタオルを握り、胸を張るだけの「タオル引っ張り体操」や、椅子に座り、膝を伸ばす「もも上げ体操」も効果が期待できる。
3つの体操をやって、1回の運動は5分程度。朝昼晩の食後3回、1日15分でいいという。
腕・足を上げる、胸を張るだけで血糖値は下がる!
【1】腕を上げるだけ「バンザイ体操」
<1>脚を肩幅の広さに開き、背筋をしっかり伸ばす
<2>手を握り1秒かけてバンザイをする
<3>ゆっくり腕を下げ、肩甲骨を引き寄せる
<4>1〜3の動作を10回繰り返す
【2】背筋を鍛える「タオル引っ張り体操」
<1>足を肩幅の広さに開いて立つ
<2>タオルを肩幅より少し広めに握る
<3>2の体勢で10秒間胸を張る
<4>1〜3の動作を10回繰り返す
【3】座ったまま「もも上げ体操」
<1>椅子に腰掛ける
<2>5秒かけて膝を伸ばす
<3>座面から太ももが離れるまで足を上げる
<4>5秒でゆっくり足を下げる
<5>1〜5を片足10回ずつ繰り返す
お酒を飲むなら赤ワインやウイスキーが◎甘い物もNGじゃない!
木曜は間食(おやつ)をチェックする。
「3度の食事以外の間食は絶対NGではなく、3時のおやつを食べてもOK。食べる場合、量には注意しましょう。甘い物が好きな人なら、まんじゅう1個、チョコを2~3個程度にする。それなら血糖値にはそこまで影響しません。
ただ、せっかく良い習慣を身につけようとするなら、この日はミックスナッツやカカオ70%以上のビターチョコレートなどをおやつにしてみましょう。お供に『桑の葉茶』を飲むと、桑に含まれるデオキシノジリマイシンの効果で血糖値が上がりにくくなります。甘い物でなくても満足できるようになっていく可能性があります」
飲み会や会食などの予定が入りやすい金曜日は、アルコールの摂り方を見直す日にしたい。
「アルコールの摂り過ぎは暴食につながり、糖質を多く含むビールや日本酒は血糖値を上げます。飲むなら比較的、糖質が少ない赤ワインやウイスキー、焼酎などの血糖値への影響が小さいものを少量に留めましょう」
さらに、食事の前に「リンゴ酢」を飲むと血糖値の上昇を抑えられる。
「リンゴ酢に含まれる酢酸には糖質を分解する酵素を阻害する働きがあり、糖の吸収を阻害します。大さじ一杯のリンゴ酢を水で10倍に薄めて食事の直前に飲むのがお勧めです。
一週間の仕事を終えて、リフレッシュの日にしたい土曜日。この日は一日、好きなことを楽しむ。
「趣味を楽しむことも気持ちを落ち着かせて血糖値を安定させるのです」
夜はゆっくりと湯船に浸かってリラックスする。
「入浴中に汗をかくとその分血糖の濃度が上がるので、浴室にペットボトルの水を持ち込み、こまめに水分補給。10分以上の長風呂を避けましょう」
そして日曜日は月曜日に備えて早く寝ることを心がける。
「金曜、土曜に夜更かしした人はなおのこと、日曜日は早めの就寝を心がけ、夕食は20時までに済ませることです。そして食後15分以内にバンザイ体操やもも上げ体操などの軽い運動を行なう」
もちろん、身につけた習慣を継続することが重要だ。矢野さんが言う。
「一気にやろうとすると制約が多くなるので、1週間で順を追って食事や運動、睡眠などを1つずつ見直す。そこでできたことを続ければ、自然と血糖値が下がる習慣が身につきます」
ひとつひとつは決して難しいことではない。まずは始めてみることだ。
※週刊ポスト2025年3月21日号
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