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健康

“ミスター血糖値”といわれる専門医が教える糖尿病の対策 「脂肪肝の改善」と「糖新生を整えること」なくして成立しない

 メジャーな病気の割に正しい情報を知らない人も多いという「糖尿病」。『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)を上梓した、“ミスター血糖値”糖尿病専門医の矢野宏之さんによると、糖尿病になるきっかけには、肝臓と膵(すい)臓が大きく関わっているという。その仕組みと対策について教えてもらった。

教えてくれた人

糖尿病専門医・矢野宏之さん

 やの・ひろゆき。やのメディカルクリニック勝どき院長、医学博士。日本医科大学卒業後、同大学附属病院に勤務。その後、国立国際医療研究センター研究所の糖尿病研究センターで糖尿病について研究。24時間の血糖値の動きを調べつくし、血糖値について熟知していることで、「ミスター血糖値」の異名を持つ。著書に『ミスター血糖値が教える 7日間でひとりでに血糖値が下がるすごい方法』(アスコム)など。

糖尿病と診断されるに至る高血糖

 糖質を含む食品を摂取し、血液中のブドウ糖の量が増えて血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌され、血中のブドウ糖を減らす働きによって血糖値が下がる。しかし、インスリンが処理しきれなかったブドウ糖は、中性脂肪となって体に蓄えられていく。これを繰り返すとインスリンの効きが悪くなったり、インスリンが十分に分泌されなくなったりして上がった血糖値が下がりにくくなる。これが「高血糖」と呼ばれる状態だ。

「高血糖(具体的な基準は空腹時血糖値126以上、食後血糖値200以上、ヘモグロビンA1cの数値6.5%以上)が続くと、2型糖尿病と診断されます」(矢野さん・以下同)

 さらに、肝臓で起こる「糖新生」という現象と、膵臓で分泌される「グルカゴン」というホルモンも糖尿病の原因となるそうだ。

糖尿病のきっかけとなる「糖新生」

 体が低血糖状態になると脳が生命の危機を感じ、血糖値を正常にするべく、筋肉や脂肪から糖質を作り出す「糖新生」が起こる。

「糖新生が頻繁に起こると血糖値の上昇に歯止めがかからなくなります。私はこの現象に『血糖ブースター』と名づけました。ブースターには、エンジンや電圧などのパワーを上げる機械、あるいは何かを後押しする人、といった意味があります。糖新生という現象は、まさに血糖値の上昇に強烈に拍車を掛けるブースターそのものなのです」

 食事などの生活習慣の影響を受けて、急上昇した食後血糖値が急降下し血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」が生じると、普段は血糖値が高い人であっても低血糖になり、糖新生が起こることがあるので注意が必要だ。

糖新生を促進する「グルカゴン」

 一方「グルカゴン」は血糖ブースターのスイッチを押し、自らが燃料となる存在で、糖新生を促進する役割を果たす。糖新生とグルカゴンの働きによって、血液中に余計な糖質が送り込まれ、血糖値がさらに上昇することになる。

「そんな背景もあり、さながらブースターのごとく血糖値を上昇させる糖新生と、そのサポート役のグルカゴンは、新時代の糖尿病対策の鍵を握る存在として、がぜん注目を集めるようになってきているのです」

糖尿病対策には「脂肪肝の改善」と「糖新生を整えること」が必要

 矢野さんは、糖尿病対策には「脂肪肝の改善」と「糖新生を整えること」が必要であると話す。中性脂肪が肝臓に蓄積されて脂肪肝になるとインスリンが効きにくい体質になり、糖新生が頻繁に起こると糖尿病が悪化していくためだ。

「脂肪肝にならないことと糖新生を整えること──これなくして糖尿病対策は成立しないといっても過言ではないのです」

脂肪肝の改善方法

 脂肪肝のおもな原因は、糖質の過剰摂取につながる「食べすぎ」、運動不足がもたらす「肥満」、そして「アルコールの摂り過ぎ」だ。また、食事の量を減らす過度なダイエットなどによるたんぱく質不足も影響する。

「対策はいたってシンプルで、その逆のことをすればOKです。食べ過ぎない(糖質を摂りすぎない)こと。適度に運動をすること。アルコールを控えること。ダイエットをするにしても、たんぱく質はしっかり摂ること。これらを少しずつでも実行すれば、脂肪肝は改善されます」

糖新生を制御する方法

 糖新生を起こさないために重要なのは、食事、運動、睡眠といった「今まで糖尿病対策としてさんざん言われてきたこと」だそうだ。ただ矢野さんは、それだけではなく、糖新生を促進する「グルカゴン」というホルモンにも目を向けるべきという。

 グルカゴンはまだ研究途上であり、解明されていないことも多いが、糖新生が起こる際にグルカゴンが使われ、それによって血糖値が大きく跳ね上がることは確認されている。

 グルカゴンの分泌を抑える方法はまだ明確にはなっていないが、独自にグルカゴンの研究を続けている矢野さんによれば、いくつかグルカゴンの分泌の抑制に関する仮説はあるそうだ。

「ひとつは、青魚などの油に含まれるEPAやDHAといった成分が、グルカゴンの分泌の抑制に寄与するのではないかということ。同じように、食物繊維をしっかり摂れば、グルカゴンの過剰分泌を抑えられるかもしれないということ。このあたりを可能性のひとつとして挙げることができます」

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