認知症の母の熱中症対策に活用している3つのアイテム「部屋の温度を上げないために100円ショップも活用」
作家で介護ブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡で暮らす認知症の母(要介護4)の遠距離介護している。「ずっと自宅で暮らしたい」という母の願いを叶えるために、さまざまな知恵と工夫を凝らしてきたが、毎年悩ましいのが「夏の熱中症対策」だ。家から外へ出てしまうとやっかいな問題もあり、新たなアイテムを取り入れたという。介護中の熱中症対策を教えてもらった。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(80才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。
著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
真夏なのに雪の話をする母
「今日は雪、降ってないわね」
これは真夏に言う、母の口癖です。認知症が進行して季節感が薄れてしまったため、母は7月によく雪の話をします。他にもエアコンのリモコンのボタンを適当に押し、真夏に暖房、真冬に冷房がついていたこともありました。
こうしたことから、熱中症が心配になり、あるときからわたしがスマートリモコンを使って、東京から岩手の実家のエアコンを遠隔操作するようになりました。
設定温度や電源のON・OFFの時間を細かく設定したりすることで、母がエアコン操作をする必要はなくなりました。
これで熱中症対策は万全と思っていたのですが、思いもよらなかった母の行動から別の熱中症リスクが出てきました。今回は、その対策のお話です。
冷房がついているのに室温が下がらない!
以前、スマートリモコンで実家のエアコンを遠隔操作して冷房をつけたのに、居間の室温が29度までしか下がらなかったことがありました。その理由は、母が居間の戸を開けっぱなしにして、エアコンの冷気を逃がしていたからでした。
→認知症の母が暮らす部屋の温度が30度超!熱中症対策とエアコンを巡る母と息子の未解決事件
おそらく母は、窓や戸を開けたら涼しい風が入ってきて、部屋の温度が下がると思ったのでしょう。一昔前の岩手なら涼しい風が入ってきたと思うのですが、今は残念ながら生暖かい風しか入ってきません。
エアコンだけでなく、戸の開け閉めも遠隔で操作できたらいいのにと、何度も思ったものです。しかし母の想定外の行動は、これだけにとどまらなかったのです。
庭に面したサッシを開けてしまう
母は居間の戸だけでなく、庭に面したアルミサッシも開け、エアコンの冷気を逃がすようになりました。アルミサッシを開けると、外から熱風が入るので、熱中症のリスクがさらに高まってしまいます。
実はこのサッシ、開けて欲しくない別の理由がありました。それはサッシを出てすぐのところにある、庭のウッドデッキが経年劣化して木が傷んでいるからです。
母がウッドデッキの上を歩いて転倒やケガをしてしまったら…。真夏なら、そのまま動けずに熱中症になる可能性もありますし、命の危険もあります。
実はこれまで母は何度かウッドデッキの上を歩いていて、布団干しに掛けてあった重い布団を引きずって取り込んだことがありました。母は庭に洗濯物や布団が干してあると、乾いていなくても気になって取り込んでしまいます。
いつかウッドデッキを撤去しようと思っているのですが、真夏の私が見守りできないときに備えてサッシにある対策をすることにしました。
サッシに取り付けた2つのアイテム
居間のサッシは6年前に替えたばかりで、クレセント錠と呼ばれる半円形の鍵がついています。クレセント錠には補助ロックがあり、このロックをかければ鍵は開けられなくなります。しかし、母はまれに補助ロックを解除して、サッシを開けることがありました。
また寝室のアルミサッシは50年以上前のもので、居間のような補助ロック機能がありません。寝室からも庭のウッドデッキに出られるため、そちらの対策も必要になりました。
居間と寝室の両方のサッシで使える補助錠をネットで探したところ、ノムラテックの『ウィンドロックZERO』(364円)を見つけ、購入しました。
使い方はウィンドロックをサッシのレール上に置き、サッシとレールを挟み込んでロックすると、サッシが横に動かなくなって開けられなくなる仕組みです。
補助錠には、付属の鍵で開けるタイプや、番号を合わせて開けるタイプなどさまざまな種類がありますが、購入したタイプは、ダイヤルでロックするだけの非常にシンプルな構造でした。ロック後にダイヤルを外すと、そのダイヤルがなければロックを解除できません。
このウィンドロックを設置してからは、母がウッドデッキの上を歩くことはなくなりましたし、エアコンの冷気を逃がすこともなくなりました。
他にも100円ショップで偶然見つけた、補助錠も使っています。ダイヤルを外せないタイプなので、仕組みを理解すれば簡単に外せてしまいます。でも母は鍵の外し方が分からないようなので、こちらも活用しています。
補助錠は認知症の人のひとり歩き対策にも使われている
補助錠は、認知症の人のひとり歩きの対策として使っているご家庭もあります。認知症の人が玄関以外の場所から外出してしまい、行方不明にならないようにするための命綱にもなるアイテムともいえます。
我が家では認知症の母のために補助錠を“熱中症対策”に応用しました。本当は母の行動をあまり制限したくはないのですが、熱中症やケガのリスクを軽減するため、そして命を守るためにはやむを得ないこともあると思っています。
今日もしれっと、しれっと。
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