認知症の母が「ゴミ袋から使用済みの紙パンツを出している!」焦った息子が取った対策と新たなアイテム
作家で介護ブロガーの工藤広伸さんは認知症の母の様子を見守りカメラなど便利な道具を駆使して遠距離介護をしている。あるとき見守りカメラに「燃えるゴミをゴミ袋から出す姿」が映り、焦って帰宅すると母はゴミを並べていて…。困った母の行動に新たに購入したアイテムがあるという。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
見守りカメラに映った「母がゴミ袋を…」
2024年11月9日、岩手県八幡平市で社会福祉の発展に貢献した個人や企業を顕彰する社会福祉大会があって、わたしは講演会の講師として参加しました。
講演を終えたあと、主催者のかたに車で盛岡駅まで送って頂き、車内では介護に関する有意義な話ができました。そのためか、盛岡の実家に居る母の様子を見守りカメラで確認するのをすっかり忘れてしまったのです。
車を降りたあと、慌てて実家の様子を見守りカメラで確認すると、母は台所に立ち、流し台の上や近くにあるダイニングテーブル一面に何かを並べて、タオルのしわを伸ばすような動きをしていました。
よく見えなかったので、カメラをズームして確認したところ並べている物が分かり、わたしは頭を抱えて、その場に座り込んでしまったのです。
母は燃えるゴミを並べていた
カメラには、燃えるゴミの袋が映っていました。いつも台所の勝手口そばのコンクリートの外壁に2本のネジが打ってあって、そのネジにゴミの袋を引っかけています。
母はその燃えるゴミの袋を流し台の上に置き、袋の中のゴミを出して並べていたのです。単なる紙ゴミならまだしも、使用済みの紙パンツ、尿を吸収するシート、ポータブルトイレの中のバケツにかぶせる処理袋など、いずれも排泄に関連する絶対に触って欲しくないものだったのです。
母の認知症は重度まで進行しているので、そうしたゴミを触ってはいけないと理解できないのでしょう。それ以上に母の元々の几帳面な性格から、ゴミ袋に無造作に入った燃えるゴミが気になって、キレイに整理するために全部出したのだと思います。
見守りカメラを使って「やめてー、ゴミに触らないでー」と母に声を掛けたのですが、全く止める気配はありません。盛岡駅からタクシーで急いで帰っても、実家まで20分はかかります。
燃えるゴミは全部出してしまったし、離れているのでどうすることもできません。命に関わるわけではないし、実家に帰ったら自分が掃除すればいいと諦め、バスで帰ることにしました。
実家に到着するとゴミがなくなっていた!
実家に到着後、見守りカメラに映っていた燃えるゴミを片付けようとしたのですが見当たりません。家の中を探してみると、寝室のタンスの中や洗濯カゴに使用済みの紙パンツがあり、コタツに座っていた母は1枚の使用済み紙パンツを触っていました。
「それ、触っちゃダメ!」と言って母から紙パンツを取り上げ、手を除菌シートで拭きました。本当は優しく接するべきところですが、状況が状況だけについ反射的に行動してしまったのです。
また水洗トイレの中に尿取りパッドが捨ててあって、トイレが詰まる一歩手前でした。燃えるゴミをすべて回収したあと、除菌シートで流し台やダイニングテーブル、コタツの上をキレイに拭きました。
母が燃えるゴミを家の中に入れる理由
以前、燃えるゴミを家の中に入れる理由を母に聞いたことがあるのですが、その時は「猫がゴミ袋をいたずらするから」と言っていましたが、過去に猫にいたずらされたことはありません。それよりも隣に新しい家が建ったので、その家が気になって勝手口のドアを何度も開け、そこでゴミ袋の存在に気づいて家の中に入れてしまうようです。
これまでゴミ袋の中身を出すことはなかったので、わたしが外に戻して対応していました。しかしこの一件以降、同じ行動を何度かするようになり、最も焦ったのは訪問看護の看護師さんが廃棄したゴミ袋を見つけたときです。
袋の中には、看護師さんが母に浣腸をした際に使ったビニール手袋やおしりふきが入っていたからです。たまたまわたしが帰省中で、ゴミ袋を見つけたので大惨事にはならなかったのですが、もし触っていたらと思うとゾッとします。
母の目につかない場所で燃えるゴミの袋を保管する必要に迫られ、いろいろ考えた結果、ある場所を思いついたのです。
ゴミ問題の対策・新たに購入したアイテムとは?
その場所とは、鍵のかかった保管庫でした。鍵がついている理由は、かつて母が食器用洗剤や消臭剤を誤飲、誤食したためで、その防止のためにわたしがDIYで鍵を取り付けました。
保管庫は上下に分かれていて、上段には調味料や食材を保管しています。上段の食材は母の過食を防ぐために鍵をかけて保管していて、下段には洗剤や消臭剤を置いています。下段に空いたスペースがあったので、そこに新たに購入したゴミ袋ホルダーを設置しました。
わたしが購入したのは、山崎実業のスチール製のゴミ袋ホルダーです。フタがついていてニオイ漏れがありませんし、ゴミ箱よりも多くゴミを入れられるので重宝しています。
母が住み続けたいと言っている自宅で自由に生活してもらいたいと思っているのですが、認知症が進行して判断力が低下すると、命や健康に悪影響を及ぼす可能性もあるため、どうしても根本的な対策が必要です。
あまり制限をかけたくありませんが、最近はこうした根本的な対策が増えているように思います。
今日もしれっと、しれっと。