新型コロナウイルスの感染者が熱中症とともに増加傾向に 2024年夏に猛威をふるう変異株の恐怖とは?
梅雨入り後も日本各地を猛暑が襲うなか、6月以降、「新型コロナウイルス」の感染者が急増している。2020年の感染爆発から5回目の夏を迎えるが、「もう怖くない」などと高をくくっていると、大変なことになる。主な症状や暑い夏に感染したときのリスクを専門家に聞いた。
教えてくれた人
上昌広さん/医師・医療ガバナンス研究所理事長
高橋謙造さん/小児科医・帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授
5類移行から1年。新型コロナウイルスの感染者がまた増え続けている
番組のメインキャスターが2人とも不在という異例の事態──。
日本テレビ系で夕方に放送中の情報報組『news every.』。司会を務める同局の鈴江奈々アナウンサー(43)が「新型コロナウイルス感染」で、森圭介アナウンサー(45)も「喉の違和感」を理由に、6月25日からしばらく番組を欠席した。
気温が高くなり始めた5月以降、新型コロナウイルスの感染者数が増え始め、6月に入ってからもその傾向が続いている。
厚生労働省は、全国の定点医療機関(約5000)で報告された感染者数が6月17日からの1週間で2万2754人となり、7週連続で増加したと発表。1医療機関あたりの感染者数は4.61人だが、都道府県別で最多の沖縄では同25.68人を記録している。
ワクチン接種で安心するのは早い?変異株の特徴とは
今夏の流行が懸念されるウイルス株は、「何度もワクチンを打っているから大丈夫」と安心できない。現在、日本で見られるウイルス株は、昨年の冬場から主流だった「オミクロンJN.1」や、その子孫株の「オミクロンKP.2」などだとされる。上昌広医師(医療ガバナンス研究所理事長)が解説する。
「世界各地で新型の『オミクロンKP.2』が流行しています。この変異株の特徴は感染力が非常に高く、過去の自然感染やワクチンで作られた体内の中和抗体に対する高い“逃避能力”を持つこと。接種済みだったり、以前に感染歴があるからといって『免疫ができているから大丈夫』と思うのは危険です」
6月に初めてコロナに感染した『週刊現代』元編集長の加藤晴之氏(68)は、喉の強烈な痛みに悩まされたという。
「強いだるさを感じて熱を測ると38.5℃あったので病院に行ったら、すぐに『コロナの可能性が高い』と別室に案内されて検査をしたら陽性だった。病院側は慣れた対応で、相当患者が増えているようでした。熱は数日で引いたのですが、何より今まで感じたことがない喉にトゲが刺さったような痛みがある。
ツバを飲みこむだけで痛いし、風邪を引いた時と違って痰の切れが悪いのでうがいをしても気持ち悪い。回復してから2週間くらい経ちましたが、今も喉にはイガイガと違和感があります」
加藤氏を苦しめた喉の痛みは多くの患者に共通するようだ。帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授で小児科医の高橋謙造氏が言う。
「オミクロン株以降、重症化リスクは低減しているようです。動物実験では、肺での繁殖が苦手で上気道での繁殖が得意だという研究結果も出ました。肺炎のリスクが低下した代わりに、『喉』に強い痛みが出る特徴があるようです。一方で感染に気づく代表的症状だった『味覚・嗅覚障害』はあまり見られません」
コロナと熱中症が併発すると死亡リスクが高まる恐れも
ウイルス感染症は冬場に流行するイメージが強いが、新型コロナは世界的に夏にも感染者が増える傾向がある。高橋医師が言う。
「検証が重ねられている段階ですが、6〜7月に増え始め、9月をピークに減少する傾向があります。臨床の現場でも、去年の夏と同じような流行の波が起きています」
高橋医師が警鐘を鳴らすのが、この10年で「死者数が倍増」した熱中症との合併だ。過去には、熱中症と新型コロナを併発して死亡した高齢女性のケースも報じられた。
「熱中症に合併してコロナを発症したら“致命的”だと思ってください。熱中症で血液循環の状態が悪化して免疫力が低下しているところにコロナ感染が重なれば、身体にかなりのダメージを受けることになります」(同前)
重要なのが水分補給だ。上医師はこう言う。
「熱中症で脱水を起こすと酸素を運ぶ血流が増やせず臓器不全を起こし、心筋梗塞など突然死にも繋がりかねません。たしかに新型コロナは重症化しにくくなりましたが、感染による発熱が熱中症を悪化させ、死に至るリスクは十分にあります」
コロナ、熱中症ともに高熱が出るため症状も似ているが、どう対策すべきか。高橋医師は感染対策として“常識”となった「マスク」を着けるシチュエーションに注意を払うべきだと指摘する。
「気温が高い日にマスクを着用し、水分補給がおろそかになると熱中症の危険度が増します。屋外は自然に換気されるので外してもいい。屋内では換気をしながら冷房を使うなど、コロナと熱中症両にらみの対策を心がけてほしい」
今年4月から公費負担がなくなったワクチン接種だが、「コロナ感染による重症化や後遺症のリスクがある高齢者、基礎疾患がある人は自費での接種を引き続き検討すべき」(上医師)という。
今年はすでに各地で「熱中症警戒アラート」が出されている。水分補給をこまめに行ない、発熱の兆候があったら、直ちに病院を受診すべきだ。
※週刊ポスト2024年7月19・26日号
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